【目的】腰部への鍼治療が、腰下肢痛に有効であることは臨床上よく知られている。その効果には、血流の改善も関与していると考えられる。腰下肢の皮膚血流や下腿、足部等の全体血流への影響は報告されているが、家兎の坐骨神経の循環動態に関しては植木の坐骨神経幹内の血流の研究報告があるのみである。そこで、本研究では電解式組織血流計を用いて、L7/S1棘突起問外方刺激を行い、さらに刺激部位の特性を検討するために、上位腰椎棘突起の外方に刺激した際の坐骨神経幹内の循環動態を観察した。
【方法】実験には白色家兎29羽 (体重 : 2.1-3.5kg) を用いた。ペントバルビタールで麻酔し、大腿部の皮膚を切開して坐骨神経を露出し、上膜中の神経束間に電解式組織血流計の測定電極を挿入した。同時に、総頸動脈にカニューレを挿入し血圧を記録した。実験中の体温は直腸温をモニターし体温維持装置により一定に保った。血流量は対照群 (n=10) 、鍼刺激群 (n=19) ともに15分毎に6回測定した。鍼刺激群は第3回目の測定直前に、測定肢と同側の腰部のL7/S1の棘突起間の外方約1cm、あるいはL3/L4の棘突起問の外方約1cmにステンレス製40mm、18号鍼を用いて振幅約5mmで10回の雀啄刺激後に15分間置鍼し、第4回目の測定直前に抜鍼した (L7/S1刺激群n=8、L3/L4刺激群n=11) 。
【結果】対照群の血量は測定毎に減少傾向を示した。鍼刺激群はいずれの刺激群も刺激前 (第2回目) に減少を示したが、刺激中に有意に上昇を示し、置鍼終了後も高値を保持した。第2回目に対する第3回目の測定値の変化量は、対照群-1.5±0.4 (mean±S. E.) 、L7/S1刺激群+4.0±2.0、L3/L4刺激群+24±1.2ml/min/100gであった。
【考察および結論】今回観察した血流は、神経上膜内の神経束間のものと推察される。今回の血流増加には軸索反射は関与しておらず、腰神経後枝の鍼刺激によってコリン作動性血管拡張神経による坐骨神経の血管拡張が起こったことを示唆している。また、L3/L4高位の鍼刺激によっても血流量の増加が認められたが、これは坐骨神経を構成する腰神経よりも上位の腰神経後枝への鍼刺激によっても坐骨神経の血管拡張が起こることを示唆している。これらの結果から、鍼刺激による神経血流の改善も鍼の腰下症状の改善に関与している可能性が示唆された
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