AUDIOLOGY JAPAN
Online ISSN : 1883-7301
Print ISSN : 0303-8106
ISSN-L : 0303-8106
34 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 熊谷 雅彦, 松島 純一, 原田 千洋, 犬山 征夫, 伊福部 達
    1991 年 34 巻 4 号 p. 221-226
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アスピリン投与後に得られる音刺激時の正円窓誘導のAP及び蝸牛電気刺激時の聴神経複合電位 (CAP) を比較した。
    APの音刺激にはクリック音を用い刺激頻度は30Hz, 加算回数は200回とした。 蝸牛電気刺激は正円窓から行い, 片側50または100μsecのpositive-negativeの二相性パルスを100Hzの刺激頻度で与えた。 CAPは蝸牛神経束から記録し20回加算した。 またアスピリンは400mg/kgを静脈から持続注入した。 得られたAP及びCAP振幅は変化率を用いて検討し以下の結果を得た。
    (1) 音刺激時のAP振幅及び蝸牛電気刺激時の聴神経複合電位振幅において刺激の弱い方が変化率は大きかった。
    (2) 弱い刺激では蝸牛電気刺激時の聴神経複合電位振幅よりも音刺激時のAP振幅の方が変化率は大きかった。
    (3) 音刺激と蝸牛電気刺激の変化率の差はアスピリンの有毛細胞に対する障害が関与しているためと思われた。
  • 永瀬 茂代, 斎藤 啓光, 平出 文久, 向田 政博, Ko Ueda, 伊藤 真郎, 舩坂 宗太郎
    1991 年 34 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    モルモット1匹あたり10mg/kgのメタンフェタミンを腹腔内注射し, 同剤が聴覚系に及ぼす影響をプライエル反射域値測定器やABRを用いて測定した。 この結果, プライエル反射域値は薬剤投与後30分, 60分で有意に低下した。 一方, ABRについては, 薬剤投与後ABRのI, II, IV波潜時は240分まで, III波潜時は180分までに有意に短縮し, 波間潜時についてもほぼ同様の傾向を示した。 しかし, 振幅や域値については, 薬剤投与前後で変化がみられなかった。 以上より, メタンフェタミンは聴覚伝導路全搬において, 潜時を短縮させる作用をもつことが判明した。
  • 深谷 卓, 細矢 則幸
    1991 年 34 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    実用聴力を有する小脳橋角部腫瘍36例の摘出術中に聴性脳幹反応 (ABR) と複合活動電位 (CAP) モニターを実施し, 術後聴力と比較検討した。 その結果, 手術場ではS/N比が悪いのでABRではモニター不能な症例が11.1%あった。 モニター可能な症例では最後までABR波形を認めた症例は聴力が残存したが, ABR波形が消失した症例は必ずしも聾ではなかった。 またV波潜時の延長から推定できるのは高周波域の閾値であった。 潜時の延長はI-III IPLの延長によっておこった。 CAPは技術的に安定せずに途中でモニター不能になった症例が39.9%あった。 しかしモニター可能であった症例ではN1の存在は聴力が残存し, N1の消失は聾を意味した。 また加算回数も少なく, real-time monitoringとしても好ましいと考えた。
  • 山田 勝士, 加我 君孝
    1991 年 34 巻 4 号 p. 238-243
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    方向感自動記録装置をもちい, ABRに異常を認めた聴神経, 脳幹障害患者の時間差音像定位について, ABRと比較し検討した。 時間差音像定位が可能な5名のABRはいずれも一側性の障害で, 患側は少なくともII波までは明瞭に認められた。 この5名の時間差音像定位弁別閾値は272-1268μsecであり, この値は対照者にくらべ有意に大きかった。 両耳間に与えた時間差が2msec以内で音像定位が不可能な9名のABRは, 両側性の障害, もしくは一側性の障害でも患側は少なくともII波以降は同定できなかった。 ヒトにおいて時間差による方向感の成立には, ABRのI-III波が大きく関与すると考えられた。
  • 村本 多恵子, 山根 仁一, 田中 美郷, 阿波野 安幸
    1991 年 34 巻 4 号 p. 244-249
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    泣いている新生児に胎内音をきかせると体動を停止して泣き止むことが知られている。 この反応を新生児の聴覚スクリーニングとして用いるため, 自動的に記録できる装置を開発し, 正常成熟新生児47例と, 周産期に異常の認められた新生児11例について反応を記録した。 反応の有無の判定は極めて容易であつた。 正常成熟新生児47例の胎内音をきかせた場合 (on記録) の反応出現率は46.3%, 胎内音をきかせない状態 (off記録) で偶然に体動を停止する率は24.2%で, 胎内音をきかせたほうが新生児が泣き止む確率が明らかに高かった。 個々の新生児についてみると, on記録の反応出現率がoff記録の見かけ上の反応出現率を下回ったのは, 47例中1例のみであった。 一方, 周産期に異常の認められた新生児では, 泣き続ける力が乏しいなため, off記録での体動停止の確率が高く, そのため, これらの新生児の聴覚のスクリーニングとしては十分に有効とはいえなかった。
  • 中山 博之, 浅野 進
    1991 年 34 巻 4 号 p. 250-257
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    3歳以上を対象に, 聴覚スクリーニング検査としての, 絵指示による囁語法聴力検査の精度を向上させるために, 音響的特徴を考慮した検査用語の選択及びその周波数選択性について検討し, 以下の結果を得た。
    1) A群の単語 (椅子, 積み木, キリン, ネズミ, ジュース, スズメ) は, 主に4kHz付近を中心に2kHzから6kHz付近までの, B群の単語 (馬, オフロ, 雲, コマ, 箱, トンボ) は, 主に1kHz付近を中心に0.5kHzから2kHz付近までの周波数成分を手掛かりに聴取されていた。
    2) A及びB群の単語で, それぞれ囁語検査を行うことにより, 周波数によっては, 正常あるいは正常に近い聴力域値を有する, 低音障害型や高音急墜型などの特殊な聴力型をした難聴児の発見が容易となった。
    3) 検査者としては, ホルマント周波数の低い男性が適していた。
  • 長井 今日子, 小寺 一興, 芦野 聡子, 前田 知佳子
    1991 年 34 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    朗読音と純音にたいする快適なレベルと不快なレベルを正常聴力者8名を対象に検討した。 朗読音の結果は, 自覚閾値上の値として, 1000Hz以下の純音の結果と良く対応していた。 朗読音にたいする快適, 不快の評価は, 平均音声勢力よりも高いレベルを基準に行われた。 中等度感音難聴7例を対象に, スピーカに補聴器を併用した場合で, 快適なレベルと不快なレベルを検討した。 両者の評価に差を認めなかった。 以上の結果は, 会話音のレベルを考慮した補聴器の利得と最大出力の調整に有用であろう。
  • 久 和孝, 小宗 静男, 平 俊明, 佐渡島 省三
    1991 年 34 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    15歳, 女性。 1987年, 蝶形紅斑, 円板状皮疹, 抗核抗体陽性, 血清梅毒反応疑陽性から全身性エリテマトーデスと診断され, 脳血管障害 (延髄外側症候群, 核間性眼筋麻痺) を併発した。 この際, APTTの延長, 血清Ig-Gの上昇, 血清梅毒反応疑陽性などからlupus anticoagulant (LAC) の存在が示唆され, LACによる血栓症がこの脳血管障害の原因ではないかと考えられた。 ステロイド投与により, 臨床症状および検査成績が著明に改善した。 ステロイド5mgで経過観察中, 1989年突然一側性の高度感音難聴が出現した。 経過中にLACの存在が示唆されたこと, 再び血清Ig-Gの上昇, 血清梅毒反応疑陽性を伴っていたことから, この難聴の原因がLACの関与する血栓症によるものではないかと推察された。
  • 阿瀬 雄治, 辻 久茂, 原 晃, 草刈 潤
    1991 年 34 巻 4 号 p. 271-279
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    某事業所の騒音職場に従事する従業員の純音聴力検査の折り, 高周波領域 (8-18kHz) も同時に測定した。 特に4kHzにdipの認められる場合は障害の程度により高周波領域の聴力図のパターンに違いのある傾向が認められた。 即ち, 騒音によると思われる聴力障害でC5dipの障害が軽いときは, 高音域にもdipが2つ以上認められ, dip以外の周波数における域値の上昇は僅かであった。 C5dipが40-50dBの場合は高周波領域のdipは1つで, dip以外の周波数にも有意に域値の上昇を認めた。 C5dipがより高度に障害されていると, 高周波領域と同様に高度に障害されている傾向を示す結果を得た。 C5dipを認めない高音障害型の難聴の場合, 高周波領域もその延長線上にある如き障害のタイプを示した。 このような高周波聴力図は, 加齢による聴力障害のタイプと異なり, 騒音性難聴における聴力の経時的変化を示唆している様に思われる。
  • 佐藤 正幸, 吉野 公喜, 田中 容子
    1991 年 34 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 自然音声・帯域濾波音声の「行った/iQta/」及び純音を刺激音とし, その2音間の休止時間を変数とした異同弁別実験を5名の聴覚障害児に行い, 休止時間の時間弁別閾について検討した。 その結果, 2例の聴覚障害児は, 健聴児に比べ休止時間における時間弁別閾の大きい傾向がみられた。 しかし, 残りの聴覚障害児においては自然音声においては健聴児に比肩し得る値を示しており, このことは, ある特定の条件下で聴覚的時間情報処理能力は健聴児に劣るものではないことを示唆するものである。
  • 桜井 淳, 市川 銀一郎, 中川 雅文, 吉田 悌友
    1991 年 34 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    脳内の双極子を検索することにより, 電気的変化の起こる位置や電流のベクトルを三次元的に見いだすことができる。 そこで我々は聴性誘発反応に双極子追跡法を応用した。
    対象は8名の聴力正常人であった。 ABRでは双極子の位置を検討した。 I, III波に比較してV波は通常上方に位置していた。 I, III波の様に振幅の小さい反応はアーチファクトや基線のズレの影響を受けやすかった。 SVRでは双極子の方向と位置について検討した。 反応成分周辺において双極子は方向と位置が徐々に変化した。 これらの方向と位置は相対的には検討可能であった。 しかし方向, 位置に影響を及ぼす因子が多く, 今後検討を加えていかなければならない。
  • 10年以上経過観察例の結果をもとに
    奥野 秀次, 山本 修三, 渡辺 勇
    1991 年 34 巻 4 号 p. 292-296
    発行日: 1991/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    メニエール病における聴力障害の予後を知る目的で, 10年以上経過を観察したメニエール病症例48例を対象に主として純音聴力検査の結果をもとに聴力の変化について検討した。 その結果対象例中, 両側難聴化が52%にみられ, また, 対象耳中40dB以上の聴力低下が66%, 60dB以上の低下が43%でみられた。 また, 高度難聴にいたる例は若年発症例, 早期両側例に多くみられ, 又, 一見陳旧化した後に再変動・悪化のみられた症例があった。 一方, 長期観察例といえども聴力低下の殆どない例もみられた。
feedback
Top