AUDIOLOGY JAPAN
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38 巻, 3 号
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  • 和田 仁, 小林 俊光, 谷口 和彦, 高坂 知節
    1995 年 38 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Marchbanksにより開発された, 音響性アブミ骨筋反射 (acoustic stapedial reflex: AR) 時の鼓膜の動きを精密に測定できる, tympanic displacement analyser (TDA) を用い, 正常者および疾患例の, ARにより誘発される鼓膜の体積変位を測定した。また, TDAとインピーダンスオージオメータ (impedance meter: IM) の測定結果を比較検討した。
    一般に, 刺激強度が大きくなるほど鼓膜の体積変位は大きくなった。座位よりも仰臥位で得られた体積変位は小さかった。この原因として, 姿勢変化による蝸牛内外リンパ圧の変化が考えられた。TDAとIMのacoustic reflex threshold (ART) はほぼ等しかったが, TDAはその測定原理のため, IMより鼓膜の動きを忠実に測定することができた。
  • 和田 哲郎, 高橋 和彦, 木村 伸一, 阿瀬 雄治, 原 晃, 草刈 潤
    1995 年 38 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    種々の内耳障害を来す因子についての電気生理学的報告は多いが, その多くは急性実験によるものである。一方, 蝸牛機能の障害には一過性で回復するもの (TTS) と永久に残存するもの (PTS) があり, 急性期にそのいずれであるかを予測することは困難である。従ってそれら障害の長期的な経過を慢性電極を用いて観察する意義は大きい。しかしながら, 実験対象動物として多く用いられているモルモットに関しての従来までの慢性電極法の報告は安定性・簡便さについて必ずしも満足のいくものではなかった。我々は1979年Hildesheimerらにより報告された顔面神経管経由の蝸牛電位測定法に着目し, 使用電極・固定材料を工夫することで比較的大きな電位を長期間安定してとることに成功した。この方法は, 外耳・中耳に触れずに操作が可能である点と固定が容易である点で優れており, また簡便であるため種々の電気生理学的実験に応用可能であると考えられた。
  • 芳川 洋, 三島 丈和, 高橋 明美, 西嶋 隆, 市川 銀一郎, 江原 義郎
    1995 年 38 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    誘発耳音響放射 (EOAE) の周波数分析に関する報告はこれまでにもあり, 構成周波数が, 必ずしも常に刺激音周波数にのみ依存するものではないことが報告されている。
    しかし, これまでの報告のほとんどが, 高速フーリエ変換 (FFT) によるいわゆる時不変型スペクトルによるものであり, 構成周波数の変化と時間 (潜時) との関係についてはいまだ明らかではない。
    そこで今回, 従来のいわゆる時不変型スペクトルの最大の弱点である時間 (潜時) に関する情報も同時に得られる時変型スペクトルの一種である瞬時スペクトルを, EOAEの周波数分析に応用しその有用性を検討した。
    その結果, 瞬時スペクトルはEOAEの潜時-振幅関係を損なうことなく, 構成周波数の推移を表現できた。加算平均されたEOAEの瞬時スペクトルにおいても, また刺激ごとの反応の瞬時スペクトルの集合平均においても, EOAE成分は明瞭に表現でき, 潜時上での周波数分布とそのパワーの推移を明らかにすることが可能であった。また, 自発耳音響放射 (SOAE) を有する場合には, 加算平均波形の瞬時スペクトルではEOAEの潜時上の周波数動態が観測できたが, 刺激ごとの瞬時スペクトルの集合平均を検討することによりEOAEとSOAEの両者を同時に表現可能であり, それらの潜時上での動態も観測することが可能であった。
  • 田中 英和, 鈴木 政彦, 小松崎 篤
    1995 年 38 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ネンブタール麻酔下でモルモットのテント下にバルーンを挿入, 下部脳幹を圧迫し, 後迷路性聴覚障害を示す動物を実験的に作成し, その下丘ニューロンのクリック音に対する応答を記録した。正常モルモットからも同様の記録を行った。脳幹圧迫群の下丘では興奮の同期障害, 高刺激頻度における興奮障害, などが観察された。この結果から脳幹圧迫群では, 複合音の検出等の高次な情報処理も障害されていると推測された。
  • 邱 向丹, 服部 琢, 丹羽 英人, 柳田 則之
    1995 年 38 巻 3 号 p. 222-228
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内耳性と考えられてきた, 突発性難聴 (突難) の障害部位を追及するため, 純音聴力レベルと誘発耳音響放射のみかけの検出閾値の経時的相関性を検討した。測定は1週毎にのべ3回以上施行した。初回の検査において, 治癒群では両者がよく対応したが, 著明回復群以下では, 純音聴力レベルが後者に比して悪い傾向が見られた。治療中の経過においても, 治癒群では両者がよく相関したが, 著明回復群以下では次第に不良となり, 一部には回復の時間的経過が解離した症例もみられた。これらの結果や経過の多様性は, 内耳内での突難の病態が単独にあるいは重複して存在し, これらがEOAEの主たる発生部位である外有毛細胞に与える影響の程度が様々であるためで, 治癒群での障害部位は内耳の外有毛細胞が主であるが, 著明回復群以下では複数の部位にわたり, さらにより中枢側も考慮する必要があると考えられた。
  • 高橋 辰, 大山 健二, 池田 勝久, 和田 仁, 高坂 知節
    1995 年 38 巻 3 号 p. 229-236
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    シスプラチン (CDDP) は, しばしば非可逆的な蝸牛外有毛細胞の障害を主体とする聴覚障害を起こすことが知られている。我々は, CDDP投与症例4例8耳について, 蝸牛機能を反映するDPOAEを用いてこれを評価し, 蝸牛障害の早期検出の可能性について検討した。65dBSPL入力音圧でのDP-gramでは, 純音オージオグラムと同様に高音域でのDPレベルの低下を認め, 反復投与によって中低音域へと障害が拡大する傾向があった。入出力特性曲線では, CDDP投与初期で純音聴力レベルに変化のない場合でも, DPOAEの検出域値の上昇, 曲線の形そのものの変化を認めた。また, CDDP投与に伴うDPOAEの検出域値の経時的変化をみると, 純音聴力検査では検出できなかった蝸牛機能の低下や部分的回復が明らかとなった。今後, DPOAEの入出力特性曲線の適切な評価方法を検討する必要はあるが, 本法を用いることで, 耳毒性薬剤による蝸牛障害を鋭敏に検出できる可能性が示された。
  • 柏村 正明, 佐藤 信清, 川浪 貢, 千田 英二, 福田 諭, 犬山 征夫
    1995 年 38 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の治療のためシスプラチンを投与された患者21名の耳音響放射 (OAE) を記録し, シスプラチンの蝸牛障害がOAEにより評価可能であるかについて検討した。
    DPOAEを測定した症例では, 純音聴力低下耳ではすべてDPOAE音圧も低下しており, DPOAEがシスプラチンの蝸牛障害の客観的評価の指標に成りうると思われた。EOAEではILO88で4kHzのFEPにて検討することにより障害を検出できる症例が認められ, 症例によっては客観的評価の指標になりうると思われた。また, 純音聴力の低下が認められない周波数の刺激音で誘発したDPOAEやEOAEの音圧が, シスプラチンの投与とともに低下した症例が認められたため, 純音聴力の低下に反映されない程度の蝸牛外有毛細胞の障害がOAEによって検出できる可能性が示唆された。
  • 田中 豊, 舩坂 宗太郎, 博久 詠司, 米本 清
    1995 年 38 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    20-32歳の聴力正常者をコントロール群としてDPOAE, FDLを測定した。また対象をdip型聴力損失を呈した感音難聴者5症例6耳として, Békésy audiometry, DPOAE, FDLを測定した。DP-gramはBékésy audiogramによる結果と直接比較できるほど周波数特性が高いとされているが, 今回の結果でも同様のことが示唆された。FDLは個体間でぼらつきがみられ, 中枢による影響も考えられたが, 同一個体内で比較すると, DPレベルの低下とFDL値の増大との間に関連が認められた。これはDPOAEがFDLの客観的測定に応用できる可能性を示したものといえる。
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