AUDIOLOGY JAPAN
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48 巻, 6 号
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  • 装用年齢の異なる2症例での比較検討
    川崎 美香, 森 寿子, 黒田 生子, 藤本 政明
    2005 年 48 巻 6 号 p. 607-616
    発行日: 2005/12/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    2歳1ヵ月で人工内耳 (以下 Cochlear Implant: CI) を装用した症例Aと6歳でCIを装用した症例B (2例とも動作性知能は正常) の言語・認知神経心理学的能力を比較・調査した。その結果, 症例AはCI装用2年11ヵ月後の5歳0ヵ月時には, 単音や単語の語音聴取能力, 語彙理解力, 構音能力, 田中ビネー式知能, WPPSI言語性知能, 読解読書能力は, 全て年齢相応か年齢以上で問題がなかった。これに対して, 症例BはCI装用1年後の7歳時に, 単音と単語の語音聴取能力は100%, 田中ビネー式で評価した知能と読解読書能力にも問題がなかったが, 語彙理解力, 構音能力, WPPSI言語性知能は2年程度遅滞していた。言語・認知神経心理学的能力獲得の観点からは, 先天性聾児に対するCI装用は脳の可塑性が高い2歳頃までに行うことが望ましく, 6歳頃のCI装用では聾で生じていたそれまでの言語発達遅滞を改善困難と考えられた。
  • 新田 清一, 小川 郁, 田副 真美
    2005 年 48 巻 6 号 p. 617-622
    発行日: 2005/12/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    耳鳴診療においては, 患者の心理的苦痛度・生活障害度を把握することが重要である。我々は Tinnitus Handicap Inventory (THI) を用いて, その参考としている。今回は耳鳴患者の初診時の心理状態・生活状況をより詳細に理解するために, THIの質問項目について分析を試みた。耳鳴を主訴の受診した239例 (男性130例, 女性109例) を対象とした。THI質問25項目の有症状例の割合 (%) を全症例と軽症・中等症・重症例に分けて検討した。ほとんどの患者が不安, 体の心配を持って受診することがわかった。患者の心理状態は不安に始まり, 重症化するとうつ傾向が強くなる。それに伴い生活状況は, 不眠・集中力低下といった生活の質の低下に始まり, さらに悪化すると社会生活にも影響が出てくることがわかった。THIの合計点は患者の心理状態・生活状況を把握する指標となりうると考えられた。
  • 移動音源を用いた音響学的検討
    岩崎 紀子, 白石 君男
    2005 年 48 巻 6 号 p. 623-632
    発行日: 2005/12/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    市販のデジタル補聴器を用いて, 適応型指向性マイクロホンによる雑音抑制効果を無指向性の場合と比較した。無響室で雑音呈示用のスピーカを移動させ, 片耳に補聴器を装着させた人体模型内の擬似耳からの出力を分析した。そして雑音源の位置や雑音の周波数成分, 補聴器の機種に関して適応型指向性による雑音抑制効果の相違を比較した。その結果, 本測定条件下では, 雑音源が補聴器装用耳側から後方を移動した場合に適応型指向性による雑音抑制効果が顕著に認められた。しかし, その最大値は機種によって異なり, 約9~18dBであった。また, 雑音抑制効果の周波数特性は機種によって様々であった。そのため周波数成分の異なる雑音に対しては, その周波数特性に対応した効果が得られた。したがって適応型指向性マイクロホンを用いた同様の雑音抑制機能であるとしても, 機種によって雑音抑制の効果は必ずしも一様ではないことを認識すべきである。
  • 村瀬 敦信, 中島 史絵, 坂本 修一, 鈴木 陽一, 川瀬 哲明, 小林 俊光
    2005 年 48 巻 6 号 p. 633-643
    発行日: 2005/12/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    感音難聴者では周波数選択性, 時間分解能が低下する。特に周波数選択性の低下が生じると, 低周波数帯域成分による高周波数帯域成分のマスキング (上向性マスキング) の影響が増大することが予想される。この周波数帯域間のマスキングを低減し, 明瞭度の向上を図る補聴処理として, 入力音声を周波数軸上で左右耳に分割し提示する両耳分離補聴がある。ホルマント周波数を考慮した2帯域分割両耳分離補聴について, 分割周波数の違いが方向知覚に与える影響に関する検討を行った。その結果, 両耳分離処理条件により音像定位の傾向が異なることがわかった。健聴者において, 両耳分離処理条件では低域成分提示耳側に音像が片寄る傾向があり, 正面方向からの音源に対して, 低域と高域の2つの音像に分離して知覚されることが示唆された。難聴者では, 個々の聴力特性や両耳分離補聴条件の違いによって, 音像定位知覚に影響を与える可能性が示唆された。
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