2歳1ヵ月で人工内耳 (以下 Cochlear Implant: CI) を装用した症例Aと6歳でCIを装用した症例B (2例とも動作性知能は正常) の言語・認知神経心理学的能力を比較・調査した。その結果, 症例AはCI装用2年11ヵ月後の5歳0ヵ月時には, 単音や単語の語音聴取能力, 語彙理解力, 構音能力, 田中ビネー式知能, WPPSI言語性知能, 読解読書能力は, 全て年齢相応か年齢以上で問題がなかった。これに対して, 症例BはCI装用1年後の7歳時に, 単音と単語の語音聴取能力は100%, 田中ビネー式で評価した知能と読解読書能力にも問題がなかったが, 語彙理解力, 構音能力, WPPSI言語性知能は2年程度遅滞していた。言語・認知神経心理学的能力獲得の観点からは, 先天性聾児に対するCI装用は脳の可塑性が高い2歳頃までに行うことが望ましく, 6歳頃のCI装用では聾で生じていたそれまでの言語発達遅滞を改善困難と考えられた。
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