AUDIOLOGY JAPAN
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50 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 村井 和夫
    2007 年 50 巻 3 号 p. 165-173
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    Bekesy によって考案された自記オージオメータについて, 機構, 測定法等について述べ, その臨床的意義について解説した。自記オージオメータと純音オージオメータの主な相違点は, 応答ボタンによって減衰器が作動, 制御され, また検査周波数が低周波数から高周波数 (あるいは逆方向に) に自動的に定められた速度で変化する (連続周波数記録), または定められた周波数について記録する (固定周波数記録) ことができることである。この測定法による臨床的意義は, 閾値の測定, 振幅の測定, 持続音と断続音記録との聴力レベル差の測定, 聴力レベルの時間的推移の記録等の評価にある。難聴の細別診断に有用な検査法である。
  • 千葉 寛之, 渡辺 知緒, 伊藤 吏, 阿部 靖弘, 青柳 優
    2007 年 50 巻 3 号 p. 174-179
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    乳幼児における他覚的聴力検査において, 経時的観察による反応閾値の改善, 悪化, 変動とその原因について検討するため, 平成7年1月から平成16年9月までに複数回ABRとASSRを施行した78例 (男児39例, 女児39例) を検討した。12例 (15.4%) に改善, 2例 (2.5%) に悪化, 1例 (1.2%) に変動を認めた。特に生後6ヵ月以内に初回検査を施行した18例においては8例 (44.4%) に改善を認め, 全改善数の66.6%を占める結果となった。新生児聴覚スクリーニングの普及により被検児の低年齢化が進む中, 他覚的聴力検査の複数回の施行を踏まえた, 長期的な観察が必要であると考えられた。
  • 佐藤 斎, 藤崎 俊之, 和田 匡史, 窪田 和, 泉 修司, 高橋 姿
    2007 年 50 巻 3 号 p. 180-186
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    当科でオージオグラムが治癒するまで, あるいは1年以上経過を観察した, 機能性難聴症例185例 (男性39例, 女性146例) を11歳以下130例, 12-17歳40例, 18歳以上15例の3群に分けて, オージオグラムと難聴の自覚の経過を検討した。最終受診時のオージオグラムが正常となった症例は, 11歳以下に最も多く82%であったが, 12-17歳では60%, 18歳以上では47%と半数以下にとどまった。最終受診時の難聴の自覚は11歳以下では86%が消失したが, 12-17歳では, 73%, 18歳以上では53%と年齢群が増すと減少する同様の傾向であった。個々の症例では, 11歳以下, 12-17歳の両群ではオージオグラムに異常があっても難聴を自覚しない, あるいは逆の症例の割合が約20%ずつで, 経過観察にはオージオグラムの異常の有無に加えて難聴の自覚の有無を加味する必要があると思われた。一方18歳以上の症例でオージオグラムは, 難聴の自覚の有無に一致し, 経過観察の良い指標になると思われた。
  • 杉浦 公恵, 真鍋 未希, 新井 美帆, 小寺 一興
    2007 年 50 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    デジタル補聴器を購入した20歳から89歳までの148名について, 雑音抑制機能有の無により, 雑音抑制機能付補聴器と雑音抑制機能なしの補聴器の購入比率, 周波数特性および圧縮比にどのような差がみられるかを検討した。雑音抑制機能付補聴器の購入比率は, 年代別では50歳代が最も多かった。60dBSPL入力時の周波数特性については, 雑音抑制機能なしの補聴器よりも雑音抑制機能付補聴器の方が2000Hz以下の周波数帯域で出力音圧が高かった。圧縮比については, 雑音抑制機能なしの補聴器よりも雑音抑制機能付の補聴器の方が, 1000Hz以上の周波数帯域において高かった。雑音抑制機能付の補聴器では, 周波数特性の低周波数帯域における増幅を大きくし, 高周波数帯域における圧縮比を大きくするフィッティングが有用な可能性がある
  • 中川 辰雄, 須藤 正彦, 舞薗 恭子
    2007 年 50 巻 3 号 p. 193-202
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    乳幼児期から補聴器を装用して指導を受け, 難聴発見時の平均聴力レベルが90dB以上である重度聴覚障害者102名を対象に, 社会生活をする上で比較的聴取する機会の多い35種類の環境音の聞こえに関する実態調査を実施した。それぞれの環境音に対して「聞こえる」と「聞こえないが必要がある」という回答の分布状況を調べた。その結果, 調査を実施した聴覚障害者の「聞こえる」という回答には音の物理的側面の一つである強さが, それに対して「聞こえないが必要がある」という回答では音を聴取することの社会的意味がそれぞれ判断の主な要因になっていることがうかがえた。環境音に, 音楽の聴取や歌唱, 親しい人との音声コミュニケーション, それに音声による情報の収集に関する項目を加えて, ほとんど1日中補聴器を装用している77名の補聴器装用の実態を調べた。その結果, 補聴器は自分と親しい友人や家族との会話をすることに用いており, 音声によってもたらされる情報については補聴器を装用していてもほとんど理解することが困難な状況にあることがわかった。また, 社会生活をする上では環境音を聴取する利便性よりも危険回避が目的となっており, 個人的な生活をする上では音による情緒や風情を感じるというよりも, 約半数のものが音楽や歌を好んでいる実態が明らかになった。
  • 北川 可恵, 黒瀬 誠, 新谷 子朋, 氷見 徹夫
    2007 年 50 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    CHARGE association は目の欠損症, 心奇形, 後鼻孔閉鎖, 生育不全や中枢神経奇形, 生殖器低形成, 耳介奇形や難聴, 顔面神経麻痺のうち, 4つ以上の症状を呈する症候群である。今回, われわれは CHARGE association 5例に聴覚診断を行い, 耳介奇形を有するが内耳奇形を認めない両側感音難聴の3例に補聴器装用とコミュニケーション発達の援助を行った。3例中1例は高度難聴, 1例は中~高度難聴, 1例は軽~中度難聴を伴った。全例とも重度の精神運動発達遅滞を伴い, 乳幼児期には呼吸や摂食の問題があり, 補聴器は装用困難であった。しかし, 3例中2例は体調が安定すると, 補聴器の場面装用が可能になり, 補聴効果を認めた。もう1例は呼吸状態の改善とともにABRとCORの結果が改善した。コミュニケーションの発達援助では, 安定した体調と, 人とのやりとりが楽しめる対人関係, 聴覚補償について長期的なフォローアップが重要であった。
  • 柴田 康子, 堀江 友子, 服部 琢, 中山 博之, 加藤 敏江, 浅見 勝巳, 加藤 智浩, 稲垣 祥子
    2007 年 50 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    平成17年度, 新生児聴覚スクリーニングより精査目的に紹介された50例について, 受診前後の診断過程, 結果を検討した。50例中, 両側難聴が22例, うち21例が補聴器装用となった。一側難聴は19例, 両側正常が9例であった。診断方法は月齢, 紹介元の検査結果などに応じてBOA・COR・DPOAE・ABR/ASSRを組み合わせて行い, 高度難聴ではおおよそ6ヵ月, 中等度難聴では8.2ヵ月で補聴器装用となった。
  • 千葉 寛之, 伊藤 吏, 渡辺 知緒, 阿部 靖弘, 稲村 博雄, 青柳 優
    2007 年 50 巻 3 号 p. 218-224
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    山形県の新生児聴覚スクリーニングの現状, 及び当科を受診した refer (要精密検査) 児の精密聴力検査について検討した。2004年に実施したアンケートの結果, 14施設 (自動ABR6施設, OAE8施設) がスクリーニングを実施していた。県内の出生児の約1/3がスクリーニングを受けていると推測され, refer 率は自動ABRで0.68%, OAEで5.78%であった。スクリーニングで refer となり, 当科で精密聴力検査を行った32例 (自動ABR19例, OAE13例) 中, 3例に両側中等度以上の難聴が発見されたが, OAEで refer となった13例中難聴が確認できた例はいなかった。refer 数は今後も増加することが予想され, 各医療機関, 療育機関が連携を図り適切な対応を行うことが大切であると考えられる。
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