本稿は, 主として原子力発電施設から発生する放射性廃棄物等の処理・貯蔵・処分に対するコンクリート材料の適用にっいて述べたものである。放射性廃棄物は, 通常, 原子力発電施設内で処理・貯蔵 (保管) ののち, 十分安全であることを確かあて処分される。この処理・貯蔵・処分の間に各種の目的でコンクリート材料の使用が実施または計画されている。たとえば, 処理では固形化材料や容器材料として, 貯蔵では放射線に対する遮へい体の材料として, 処分では処分施設や止水材料や処分施設内に入った水を外部に誘導する材料としてである。コンクリートが放射性廃棄物の処理・処分用材料として使用されるのは, セメントの入手が容易であること, 廃棄物の固形化にあたり既存の技術の適用が可能であること, 強度・耐久性・水密性が期待できることに加え, コンクリートは比重が大きくかつ水を含んでいることから放射線 (ガンマ線, 中性子など) に対する遮へい効果が優れていることがあげられる。また, 経済的に優れていることも重要な因子と考えられる。本稿は, これらコンクリート材料の適用の現状にっいて主に述べたものである。すなわち, 第1章, 第2章では, 第3章以下の理解を助けるため, 放射性廃棄物とはどんなものか, 放射性廃棄物の種類や量はどうかにっいて簡単に述べた。第3章から第5章までは, 放射性廃棄物等の処理・貯蔵・処分に用いるコンクリート材料に対する要件および適用例を述べ, 今後の課題にっいても追記した。なお, 本説明において, 放射性廃棄物と放射性廃棄物等という用語を用いた。等を用いる場合は, そのなかで原子力発電所から発生する使用済みの原子燃料, すなわち使用済み燃料を含めるときにこの表現とした。
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