閉経などによりエストロゲンの減少を来してからの経過期間と人工歯根埋入後の骨反応との関連について組織学的な検討を行った.実験動物には12週齢のwistar系ラットを用い, 卵巣摘出後7および21日目にヒドロキシアパタイト (HA) コーティングチタン人工歯根を左右脛骨に埋入した..術後14日目に脛骨を摘出し, 人工歯根周囲の骨組織を組織学的に観察した.その結果, 新生骨の形成ならびにHAと骨との結合に関しては, 偽手術群と卵巣摘出群との間では差はほとんど見られなかった.一方, 人工歯根周辺の新生骨梁の吸収は, 卵巣摘出群の方でより速やかに進行していた.また, その傾向は卵巣摘出後21日目に人工歯根の埋入を行ったものでより顕著に見られた.以上のことより, 卵巣摘出後一定期間経過してから人工歯根を埋入した方が, 摘出後早期に埋入した場合に比べ人工歯根周囲の新生骨梁が速やかにすう疎化し, 卵巣摘出による影響を強く受けるものと考えられる.これらのことより閉経後一定期間が経過し, 骨の代謝回転が亢進した患者では, 人工歯根の適用にあたっては周囲に形成された骨梁のすう疎化に対する慎重な配慮が必要であると考えられた.
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