グロームス腫瘍は皮膚や爪床にある血管叢内の動静脈吻合部にみられる糸球細胞 (glomus cells) 由来の腫瘍である.今回, 我々は若年者の口蓋に発生したグロームス腫瘍の一例を経験したので, 文献的考察と合わせて報告する.患者は21歳, 男性.左側硬口蓋から軟口蓋にかけて直径約3cm大の粘膜下腫瘤を認めた.病理組織学的には粘膜上皮下に線維性被膜構造を有する結節性病変がみられた.腫瘍細胞は比較的均一な大きさの円形もしくは類円形を呈し, 充実性に増殖していた.また, 内皮細胞を有する血管腔を認めた.銀染色では個々の腫瘍細胞が好銀線維に取り囲まれる非上皮性腫瘍の染色patternを示した.免疫染色では, 腫瘍細胞はVimentin, α-Smooth muscleactin, HHF-35に陽性であり, Keratin, Desmin, S-100蛋白, FactorVIIIに陰性であった.文献的には, 口腔領域に生じたグロームス腫瘍の報告例は渉猟し得た限りにおいて23例であった.口腔ではグロームス腫瘍は口蓋に生じることが多く (34.7%), 男女比は1.6 : 1であり, 発育は緩慢である.グロームス腫瘍は皮膚や爪床にある血管叢内の動静脈吻合部にみられる糸球細胞 (glomus cells) 由来の腫瘍である.口腔領域における本腫瘍の発生は稀である.
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