昭和歯学会雑誌
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12 巻 , 2 号
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  • 丸岡 宗康
    1992 年 12 巻 2 号 p. 95-108
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    骨欠損部の回復に骨形成因子 (Bonemorphogeneticproteins : BMPs) の適用が注目されているが, そのために用いる担体については, いまだ十分に検討されていない.本研究ではBMPsを適用する場合に, 効率的に骨形成を誘導できる担体の作製法について検討した.牛脱灰骨のグアニジン塩酸抽出物をHeparin-Sepharoseaffinitychromatographyで分離し, 異所性の骨形成誘導活性を有するBMPsを得た.このBMPsと1型コラーゲンおよびハイドロキシアパタイト (HAP) の複合体を2種類の方法で作製した.複合体Aでは, BMPs, コラーゲン, HAPを単純に混合し, 複合体とした.複合体Bでは, まずBMPs溶液中にHAPを浸漬し, HAP表面にBMPsを付着させ, 次に, 浸漬後のBMPs溶液の残りとコラーゲンを混合した後, その中にBMPs付着HAPを入れ, 複合体とした.両者の方法で作製した複合体をラット大腿部筋嚢に埋入し, 10日および20日後に形態学的に検索した.その結果, 両複合体で骨・軟骨組織の形成が認められたが, 複合体Aでは直接HAPに接している所には骨・軟骨組織はわずかしか見られず, またHAP気孔中にも骨・軟骨組織は認められなかった.骨形態計測の結果, HAP表面の3%に骨組穢が接しているだけで, 多くのHAPは線維性結合組織で被覆されていた.これに対して, 複合体BではHAPに近接して骨・軟骨組織が形成されている部位が複合体Aに比べて高頻度で認められた.骨・軟骨組織がHAP表面に直接接する部位も頻繁に見られ, HAP気孔中にも骨・軟骨組織が形成されていた.骨形態計測の結果, HAP表面の14%に骨組織が接しており, 複合体Aの約2倍量の新生骨量が形成されていた.また複合体BではHAP周囲にアルカリフォスファターゼ活性陽性の細胞が増殖している部位が多かったが, 複合体AではHAP周囲で同陽性細胞の増殖は少なかった.以上の結果より, BMPsを移植する場合, HAP表面にBMPsを付着させたものを用いることにより, より効果的に骨形成を誘導できることが明らかとなった.
  • 関 健次
    1992 年 12 巻 2 号 p. 109-121
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    X線CTの多断面再構築法は直接撮影にて得られた横断像を用いて任意の新たな断面を作製する方法で, 特定の診断目的には有効な情報を提供する.本研究では骨内インプラントの術前検査における顎骨形態, 顎骨疾患における病態と周囲構造への影響, および顎関節疾患における骨構造の異常の把握を目的として, 再構築画像の最適取得条件を決め, その臨床的有用性を評価した.CT横断像の最適撮影条件を決定するために, 水中に浸した乾燥頭蓋骨を対象に, スライス厚さ/間隔を2mm/2mmないし1mm/1mm, 管電流×時間 (mAs) を180,240ないし300mAsにて撮影し, 再構築画像を各組合せでの画像データから作製し, 上記の診断目的を満たすか否かを評価した.その結果, 顎骨形態の把握には, 2mm/2mm/180mAsという最少の線量にても十分な画像が得られ, 顎関節部では1mm/1mmにて下顎頭と下顎窩を区別しえた, 次に摘出下顎骨の横断像からの再構築画像とその部の薄片の軟X線画像とを対比した結果, 細かい骨梁構造は描出しえなかったが, 骨梁の緻密さの程度を不透過度の程度として表現しえた, 臨床評価ではインプラントの術前検査を目的とした2mm/2mmでは60画像中47画像で目的を満たす画像を得たが, 一部の症例で下顎管を描出しえなかった, しかし1mm/1mmを採用した全例で下顎管を観察しえた.以上から2mm/2mmを基本とし, 下顎管部のみ1mm/1mmを採用すべきといえた.下顎骨骨髄炎, 腫瘤性病変, 悪性腫瘍による顎骨浸潤などの顎骨疾患21例では病態や病変の頭尾方向への進展を観察しえた.下顎頭骨折5例では冠状断再構築画像にて骨折線と小骨折片の転位が明確に描出され, 直接冠状断は不要であった.顎関節症19例では矢状断・冠状断再構築画像にて皮質骨の輪郭と内部構造が描出され, 骨硬化, 骨棘の形成, erosionなどの骨変化が9例で認めた.以上の結果からX線CTの再構築画像は顎顔面領域の顎骨形態と病態の把握に有用であり, しかも通常のCT撮影より少ない線量にてそれが可能であると判断された.
  • 植杉 健一
    1992 年 12 巻 2 号 p. 122-133
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    根尖部病変のX線検査では透過性病変の有無とその大きさ, および経時的な観察においては病変の大きさ, ないし透過性の変化を診断する.本研究の目的はその正確度を写真濃度の影響を含めて判定し, さらに本目的におけるdigital subtraction法の価値を判定することである.対象は乾燥下顎骨前歯部としエポキシ樹脂に包埋後, 近遠心方向に切断した.撮影での幾何学的再現性を得るようにしたうえで, 根尖部に球状の骨欠損を1mmから5mmまで1mm間隔に作製し, そのつど撮影した.X線写真の濃度を低, 適正, 高濃度になるよう撮影時間を調整した.得られたX線像はドラムスキャナーにてデジタル化した.サブトラクション像は得られた画像の組合せから作製し, 濃度の補正も行った.それらの画像を用いて透過性変化の検出, およびその大きさの比較の正確度を歯科医による診断動作の正確度として推定した.その結果, 人工的に根尖部に作成した骨欠損は1ないし2mmといった微小なものは検出しえず, 一定以上の大きさを必要とする, X線写真の濃度が低いときは検出のtrue positiveがやや低下し, 高いときはfalse positiveが増加する, 2枚のX線像から透過像の大きさを比較するとき, X線像の濃度が同-である方が, 濃度の異なるときより正確度は高く, また濃度が異なる場合, 濃度の高い像の透過像を大きくとる傾向がある, デジタル画像はオリジナル写真画像に比較して正確度の低下は認められない, サブトラクション像は透過像の検出を高め, また透過像の変化の検出をも高める, ということが判明した.
  • 鈴木 利彦, 藤森 伸也
    1992 年 12 巻 2 号 p. 134-146
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    チタンは表面に不動態被膜 (酸化物被膜) を生成するので, 耐食性及び生体親和性に優れていることが認められてきたが, 生体材料の用途としては, コントロールされた方法で酸化物被膜を付与し, なおかつ, 硬さ, 耐摩耗性, 耐食性などをさらに向上させることが望ましい.そこで本研究では, 電解液中でチタン板を陽極にして陰極と試作のパルス電源で接続し, 火花放電開始電圧以上の電圧を印加して陽極近傍で液中放電を発生させ, この現象を利用してチタン板へ酸化物被膜の生成を行う新しい方法 (放電陽極酸化処理) を開発した.放電陽極酸化処理では, 供給エネルギーをコントロールして, 通常の陽極酸化処理よりもはるかに厚い (μmオーダ) 酸化物被膜の生成が可能であった.被膜の母材への密着性は良好で, 硬さや耐摩耗性が向上し, 耐食性についても改善されていた.放電陽極酸化処理面には微小な小孔が生成していたが, この小孔の大きさも, 供給エネルギーでコントロールすることが可能であった.培養細胞を用いた細胞培養実験の結果, 放電陽極酸化処理面は, 母材のチタンと同等以上の良好な生体適合性を有していることが認められた.これらの所見から放電陽極酸化処理はチタンを生体材料として用いる場合の有効な処理になると考えられる.
  • 古川 周, 山縣 健佑, 金 修澤, 北川 昇
    1992 年 12 巻 2 号 p. 147-163
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    調音動作のスムースさを判定するためには, 音発生中のみならず, それ以前の口腔の動態を観察することが重要である.そこで, 正常者10名について [sa, ma] の発音前後を含めて, (1) 切歯点, (2) オトガイ点, (3) オトガイ中間点, (4) 下口唇, (5) 上口唇の運動経路を解析した.MKGによる切歯点または顔面側貌上の標点とリアルタイム音声周波数分析表示装置 (SSD) による声紋の両画面をハイスピード・ビデオ装置によって同一テープに記録する.テープを低速再生し, モニター上で声紋像を参照して子音発音時点を求め, 調音運動開始から子音発音終了後までを4時限に区分して標点の座標を入力する.運動経路の複雑さを表現するため, 直線距離 (SL), 移動距離累計 (TL), 迂回度 (T/S), 移動範囲面積 (AR), 方向変更角度 (TH), 速度 (V) を演算処理するソフトを開発し, 比較したところ以下の結果を得た.1.調音運動開始時から子音発音開始時までは複雑な動きをするが, 特に子音発音開始時点の400msec前から200msec前までの間は移動が少ない.2.上口唇以外では, 子音発音開始前より子音産生中の方が直線距離と移動範囲面積, 速度は大きく, 迂回度と変更角度の値が小さく, 子音発音中には直線的に早い速度で移動している.3. [sa] では, 切歯点では音産生前にいったん開口し, 子音開始位で再び咬頭嵌合位に接近する.子音発音開始位では, ほとんど静止状態になるが, 子音発音中央位では開口し, 速度も大きい.したがって, 子音発音開始位で [s] 音の固有の構えになる.4. [ma] では, 下口唇とオトガイ点が子音開始位で [m] 音特有の構えになる.切歯点は子音発音開始時点の200msec前から子音発音開始位までの動きが小さく, むしろ子音産生に先だって一定の構えになる.5.このように単音節の発音時には, 発音中央位よりも子音開始位あるいはその直前の位置が重要と思われる.
  • 秋元 あずさ
    1992 年 12 巻 2 号 p. 164-182
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    急速に成長を遂げる幼若ラットの下顎骨歯槽縁の形態的変化と暫間的に歯槽縁に出現する軟骨様骨組織の経時的変化を光学顕微鏡で観察するとともに軟骨様骨細胞およびその周囲の細胞の超微形態を透過電子顕微鏡で観察した.また, ヒト胎児の顎骨に出現した軟骨様骨組織も併せて観察し, 両者の相違についても検討した.ラット下顎骨臼歯部歯胚上方は, 胎生19日齢から出生直後まで, 臼歯前方から後方にかけて樋状に開いているが, 生後3~7日齢にかけて前方より速やかに骨性閉鎖された.その後, 歯槽頂の骨は再び歯牙萌出に伴って吸収されて, 歯が萌出した.生後0日齢に頬舌側骨壁先端と連続して出現する軟骨様骨組織は, 光学顕微鏡的にはHE染色で骨と軟骨の中問的な染色性を示した.軟骨様骨組織は, ヒトでは胎生後期に歯槽縁先端に出現した.透過電子顕微鏡所見では, 軟骨様骨細胞は, 隣接する骨組織中の骨細胞より大型で相互に近接して存在しており, 基質合成に関与する良く発達した細胞内小器官を有していた.また, 細胞辺縁部には細胞周囲基質の小範囲のリモデリングを示唆する被覆小胞や細線維を含んだ桿状小体が認められた.軟骨様骨細胞の細胞突起は, 硝子軟骨細胞様を呈しており, 突起相互の接触も観察された.軟骨様骨基質は, 基本的には不規則な走行に配列されたI型コラーゲン細線維と多量のプロテオグリカンで形成されていた.軟骨様骨組織と骨組織との移行部付近では, コラーゲン細線維は規則的に配列されており, 細線維間には凝集プロテォグリカンとともに石灰化物の結晶も観察された.軟骨様骨組織は, 胎生19日齢では観察されず, 同部位には電子顕微鏡的に小型の間葉系細胞様を呈する細胞が存在した.これらの細胞が, 口腔内環境の変化によって軟骨様骨細胞に変化し, 歯槽縁の骨の成長を誘導すると考えられる.軟骨様骨組織における石灰化は, 歯槽縁の成長に伴いその基底部より徐々に波及していた.石灰化部位は, 破骨細胞性基質吸収と骨芽細胞の進出とにより骨基質と置換し, 軟骨様骨細胞は骨細胞として骨中に留まる一部を除き, 最終的に骨芽細胞あるいは線維芽細胞になる可能性があると考えられる.ヒトとラッワットにおける軟骨様骨組織の出現時期の相違は, ヒトでは胎生後期に指の吸暖による口腔内の陰圧が発生し, ラットでは生後に哺乳により口腔内の陰圧が発生する, すなわち, 軟骨様骨組織の誘導を示唆する口腔内環境変化に, ヒトとラットでは時期的な相違があるため生ずると考えられる.
  • 鈴木 康生, 藤原 理彦, 佐々 竜二, 岡野 友宏
    1992 年 12 巻 2 号 p. 183-197
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    従来, 頭部X線規格写真による顎顔面頭蓋の成長発育の評価は, 小野, 坂本らの計測値やプロフィログラムが標準値として日常臨床で広く用いられている.しかし, 成長発育期にある小児の顎顔面頭蓋の形態的な特徴の把握や変異を客観的に観察するためには, 頭蓋冠部も含めた頭蓋全体の評価も重要なことと考えられる.本研究では, まず乾燥頭蓋を用いて頭蓋の概形を表現するのに適した基準点を検討すると共に, 臨床で応用できるよう各年齢 (群) の「側貌」ならびに「正貌」頭部X線規格写真での標準的な頭蓋概形 (ダイアグラム) の作成を目的とした。乳歯列期から永久歯列期までの乾燥頭蓋9体からの基準点選択の検討の結果, 解剖学的特徴点を含め, 側貌では23点, 正貌でも23点の基準点を設定することで, 顎顔面頭蓋全体を一体のものとした標準的頭蓋概形 (ダイアグラム) を作成することができた.また, この結果をもととして今回は乳歯列完成期 (4歳児) の男女の標準的ダイアグラムを作成すると共に, 頭蓋径, 面積の計測を行った.その結果, 側貌においては男児は女児に比べ全体的にわずかに大きな概形を示しており, 頭蓋長径, 高径に関する項目でやや差が認められたが, 正貌においては, その幅径は, 頭蓋冠部で若干男児が大きかったものの, 顎顔面部では, 差は認められなかった.
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