日本作物学会紀事
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66 巻, 1 号
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  • 王 余龍, 山本 由徳, 蒋 軍民, 姚 友礼, 蔡 建中, 新田 洋司
    1997 年 66 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年, 中国で育成された穂重型多収性水稲もち系統9004(日本型稲)に対する, 窒素施用時期[分げつ始期(分げつ肥), 穎花分化期(穂肥I), 同退化期(穂肥II)および出穂期(実肥)]の単独時期または分げつ始期を含む2~4時期を組み合わせた時期に施用(施用量は7.5~30gN/m2)し, 籾数および物質生産に着目して収量成立に及ぼす窒素施用の影響について解析した. 1)各処理区の精籾収量は804~1081g/m2で, m2当たり籾数3.14~5.06万粒, 登熱歩合79.6~93.7%, 精籾千粒重25.2~29.0gの範囲にあった. 2)分げつ肥の施用は穂数の, 穂肥IIの施用は穂数と1穂籾数によるm2当たり籾数の増加により増収となった.実肥の施用は出穂前の窒素施用量の少ない場合にのみ登熟歩合および精籾千粒重の増加により増収となった. また, 窒素施用量の増加に伴い収量は増加する傾向がみられたが, 窒素施用量が同一水準での増収程度は, 穂肥I>穂肥II>分げつ肥>実肥の順で認められた. 3)収量はm2当たり籾数と登熟期間の乾物生産量に支配され, m2当たり籾数は穂首分化期~出穂期までの窒素吸収量により決定される1穂籾数と, 登熟期間の乾物生産量は登熟期間の平均葉面積指数と窒素吸収量, m2当たり籾数と密接な関係を示した. 4)以上より, 中国で育成された穂重型多収性品種である9004系統では, 籾数確保のために幼穂分化期~出穂期までの窒素の吸収量の増大が必要であり, さらに多収穫を実現するためには, 出穂期前の乾物蓄積量と出穂期後の乾物生産量を高めて, 籾1粒当たりの乾物分配量を増加することが必要と思われた.
  • 佐藤 徳雄, 渋谷 暁一, 三枝 正彦
    1997 年 66 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    寒冷地稲作の省力・安定多収を図るために, ポット苗移植の慣行施肥およびマット苗移植の慣行施肥を対照として, ポット苗移植の肥効調節型被覆尿素を用いた全量基肥施用栽培について, 重窒素を用いて1990年, 1991年の2カ年間検討した. ポット苗区は苗形質が良好で, 本田移植後の草丈, 株当たり茎数はマット苗区よりも優ったが, 栽植密度が低かったため, m2当たり茎数は劣った. ポット苗・被覆尿素区では, 施肥窒素が地温に比例して溶出するため, ポット苗・慣行施肥区よりも生育初期(低温時)の草丈, 茎数は劣ったが, 穂首分化期から肥効が高まって他区より生育が優り, 葉緑素計値と乾物重が高くなった. 玄米収量は, ポット苗・被覆尿素区>ポット苗・慣行施肥区>マット苗慣行施肥区の順であった. ポット苗・被覆尿素区の高収量の要因は, 初期の窒素の発現をおさえて無効分げつ発生を抑制し, 肥効の持続性によって穂首分化期以降の葉色の落ち込みを小さくしたことによるものと推定された. その結果, 稲体は穂首分化期以降登熟後期まで窒素濃度が高く推移し, 光合成能力を高めて穂数, 籾数が増加し, 登熟が促進したものと思われた. 施肥窒素の吸収量および利用率は, ポット苗・被覆尿素区>ポット苗・慣行施肥区>マット苗・慣行施肥区の順であった. 基肥窒素の利用率は硫安が30~40%であるのにたいして肥効調節型被覆尿素では63~68%と著しく高い値であった. また, 追肥硫安の利用率は41~59%と基肥より高い値を示した.
  • 松葉 捷也
    1997 年 66 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    伸長節間長の節位別変化の制御機構を解明する前段として, 日本型品種を用い, 1株1本植えにした個体の各有効茎で伸長節間の出現位置や個数の変異などを調べ, 以下の規則性を認めた. (1)同一試験区の主稈の生育型(体形)は, 主稈総葉数の1葉の変異に対応してN型または[N-1]型の二型に分かれ, 伸長節間数は通常それぞれ6または5となる. (2)N型と[N-1]型の主稈間で, 求頂的に双方の同位伸長節間の長さを比較すると, 常に前者が短い. (3)各分げつの最下位伸長節間の位置は, 主稈の生育型や分げつ次位に関係なく, 主稈の最下位伸長節間の位置に対して, 相対的に同じ位置かそれより1節位下に限定される. このとき, 分げつの伸長節間数は6または5となり, まれに4となった. (4)個休内の各有効茎の第1苞原基分化日のずれを個体別に計測し, 最大の日差の平均では, 主稈・4次分げつ間で10日間, 主稈・3次分げつ間で8日間という結果をえた. (5)第1苞原基分化期の前後には, 抽出開始葉の直下の節間が「伸長刺激」に感受性となっている. 以上のうち, (1), (2)と(5)は再確認の事実である. 総合考察の結果, 節間伸長の開始機構は, 止葉原基分化後から第1苞原基分化直前までの間に発動される「伸長刺激」と, この刺激に感受性となった節間原基との相互関係で説明できた. この場合, 抽出開始葉の内側にある幼葉と葉原基が合計4枚である事実に上述の(5)を併せ考えると, 伸長節間数が基本的に5または6に限定されてくる意味が理解される.
  • 福嶌 陽, 秋田 重誠
    1997 年 66 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本型品種むさしこがねとインド型品種IR36における穂軸の大維管束の走向と分化時期を比較した. 穂軸中の大維管束は, 主に1次枝梗由来の大維管束(Vp)と2次枝梗由来の大維管束(Vs)によって構成されていた. むさしこがねにおいては, いずれの1次枝梗からも1本のVpが穂軸に入り, 相互に合着することなく穂首節間まで下降していた. 通常, Vsは穂軸に入ることはなかった. その結果, 穂首節間大維管束数を1次枝梗数で割った値(維管束比)はほぼ1となった. これに対して, IR36においては, 上位の1次枝梗からは1本のVpが穂軸に入るが, 中~上位の1次枝梗からは1本のVpに加えて2本のVsが穂軸中に入る場合が多かった. また, Vsのいくつかは穂軸中で複雑に合着していた. その結果, 維管束比はほぼ2となった. 大維管束の分化時期をみると, いずれの品種においても, Vpが分化するのは2次枝梗分化初期であり, Vsが分化するのは穎花分化初~中期であった. 以上の結果から, むさしこがねと比較してIR36では穂軸の発育に対する1次枝梗の発育が相対的に進行している可能性が示唆された.
  • 玉置 雅彦, 山本 由徳
    1997 年 66 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    遮光および施用窒素量が, 水稲の出葉転換点とその前後の出葉速度ならびに分げつ発生数に及ぼす影響について検討した. 1/5000a ワグネルポットを用いて, 3レベルの遮光処理(0, 50, 95%)と3レベルの施用窒素量処理(移植時から10日毎に25, 100, 200 mgN/ポット施用)を組み合わせた計9区の処理区を設定し, 移植時から収穫時まで処理を行った. 主茎の葉齢の増加は, 95%遮光区を除き, 出葉転換点を境にして2本の直線で近似することができた. 95%遮光区は, 出葉転換点が存在せず1本の直線で近似された. 出葉転換点までの出葉速度は, 施用窒素量よりも光条件によって強く左右され, 強光下ほど出葉速度は早かった. しかし出葉転換点後は, 出葉速度に及ぼす光条件の影響は小さくなった. 無遮光区では, 出葉転換点前後とも施用窒素量が多くなるにつれて出葉速度は早くなったが, 遮光区では施用窒素量が出葉速度に及ぼす影響はほとんど無かった. 分げつ発生には, 出葉転換点前後とも光条件が影響し, 無遮光区で分げつ発生数は最も多かった. 無遮光区では, 施用窒素量が多くなるにつれて分げつ発生数は増加したが, 50%遮光区では窒素量の影響が小さくなり, 95%遮光区では影響は認められなかった. 出葉転換点がみられた無遮光区と50%遮光区について出葉速度と分げつ発生数との関係をみると, 出葉転換点前では有意な正の相関が認められたが, 出葉転換点後では有意な相関は認められなかった.
  • 中津 智史, 埜村 朋之, 今井 徹
    1997 年 66 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    雨害等によりアミロ値が低下した, いわゆる低アミロ小麦を判別するために, α-アミラーゼ活性測定による簡易迅速な検定法を開発した. α-アミラーゼ活性測定の基質にはオリゴ糖誘導体を用い, 自動分析にはブラン・ルーべ社製のオートアナライザー(AAII型)の一部を改良して用いた. オートアナライザーを用いることにより, 1時間に50点の迅速測定が可能となり, しかも試薬コストの低減が図られた. また, 手分析とオートアナライザーによる測定値の間に大きな差は認められなかった. α-アミラーゼ活性とアミロ値との関係を検討した結果, 小麦粉の場合の相関係数は r=-0.922 ともっとも高く, 全粒粉が r=-0.906 であった. 一方, 乾燥前の生麦を供試した場合, 成熟期以前の高水分の試料についてはアミロ値との相関が判然としなかったが, 成熟期以降の試料についてはr=-0.884 の比較的高い相関が得られた. 受け入れ施設等におけるアミロ値の仕分けを目的に, 次のような生麦の仕分け指標値の設定を試みた. グループ1:活性300mU/g未満の小麦の平均粘度は755B.U. と高く, ほとんどが健全麦であった. グループ2:活性300mU/g以上500mU/g未満の小麦の平均粘度は502B.U. で, 低アミロ小麦から健全麦まで広く分布していた.グループ3:活性500mU/g以上の小麦の平均粘度は109B.U. で, ほとんどすべてが低アミロ小麦であった. また, オートアナライザーによるα-アミラーゼ活性測定は育種における選抜法にも有効と考えられる.
  • 徐 銀発, 大川 泰一郎, 石原 邦
    1997 年 66 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    最近育成された多収性品種タカナリと日本晴を用いて, 1991年から1994年の4年間にわたって収量及び乾物生産量を比較し, タカナリの多収要因を収量構成要素, 生長解析及び受光態勢を通じて検討した. 10 a 当たり収量は, 日照時間が少なく天候不良であった 91 年と 93 年では, タカナリは528~642 kg で, 日本晴に比べて約 100 kg 高く, 日照時間が多く天候のよい 92 年と 94 年では, タカナリは 817~888 kg で, 日本晴に比べて約 230 kg 高かった. 収量構成要素についてみると, タカナリは日本晴に比べてm2当たり穂数は少ないが, 一穂穎花数が多いことによってm2当たり穎花数が多く, 特に2次枝梗着生穎花数が著しく多いにもかかわらず登熟歩合が高かった. この要因はタカナリの乾物生産量と収穫指数ともに日本晴より著しく大きいことにあった. 乾物生産についてみると, 天候のよくない 91 年では出穂期以降, タカナリの個体群生長速度 (CGR) は日本晴に比べてもっぱら純同化率 (NAR) が大きいことによって大きく, 天候のよい 94 年では最高分げつ期以降, タカナリの CGR は NAR と平均葉面積指数 (LAI) がともに大きいことによって大きかった. タカナリの NAR が高い要因は, 幼穂形成期以降, 吸光係数, 個体群内の葉の配列, 穂の位置からみた受光態勢が日本晴より良好であることにあった. またタカナリの収穫指数が高いことには出穂後の穂重増加量と茎葉に蓄積された同化産物の穂への転流量を表す茎葉重減少量の大きいことが関係していた.
  • 柏葉 晃一, 松田 智明, 長南 信雄
    1997 年 66 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    登熟中のラッカセイ子葉柔細胞における貯蔵物質蓄積の様相を, 走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡によって観察するとともに, 脂質体の構造保持のための試料前処理方法についての検討も行った. ラッカセイ子葉柔細胞における貯蔵物質の蓄積は, 脂質体の形成によって開始された. 脂質体の形成は登熟初期から認められ, 登熟中期になると急速に数を増した. 脂質体の形成に伴って, 細胞質中には網目状の発達した粗面小胞体 (RER) が認められた. RER は互いに融合・連結し, 立体的な網目状構造を形成した. また, 網目状に発達した RER の一部には所々で袋状構造が認められた. 袋状構造の大きさは2~4×1~2 μm であり, 表面には小さな顆粒の形成が観察された. 顆粒の形成は RER の末端部にも認められた. この顆粒は脂質体の形成とともに数量を増したことから, 形成初期の脂質体であると推定された. タンパク質は登熟中期から液胞中に蓄積し, この液胞が分割した後にタンパク顆粒を形成した. ラッカセイで観察されたアミロプラストはソラマメに比べて小型であった. 以上の観察結果から, ラッカセイ子葉柔細胞における貯蔵物質の蓄積は脂質体の形成による脂質の蓄積を中心に進行し, 脂質体の形成には発達した RER が密接に関与することが明らかになった. 脂質保存のための前処理には, 固定液中への塩化カルシウムの添加が有効であった.
  • 加藤 尚, 高八 忠弘, 笠井 忠
    1997 年 66 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ多糖類の構造的特徴に関する報告は, 現在迄のところ多くない. そこで, 本報では, ダイズ種子より可溶性多糖類を抽出精製単離し, その多糖類の構造的特徴に関する研究を行った. 可溶性多糖類 A1-β はダイズ種子子葉より水抽出の後, Bio-Gel A150 m, DEAE-Sephacel カラムクロマトグラフィーにより精製した. A1-βは, 濾紙電気泳動と超遠心分析で均一であり, 平均分子量は約 2×106 であった. また, A1-β は, アラビノースとガラクトースを主構成糖とし(モル比 2:3), ラムノース, フコース, キシロース, マンノース, グルコース, マンヌロン酸, ガラクツロン酸, グルクロン酸から構成されている多糖であり, ダイズ多糖類としては新規であると考えられる.
  • NARCISO Josefina O., 蓬原 雄三, 服部 一三, 和田 富吉
    1997 年 66 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    種子の前処理と培養中の光強度がリョクトウ (Vigna radiata (L.) Wilczek) 子葉培養のカルス誘導と再分化におよぼす影響について調査した. ここで評価した前処理に次のような6種類の処理区を設けた. すなわち, 種々の時間および組み合わせで, 滅菌水に浸漬する, 寒天上に置床する, あるいは6-ベンジルアデニン (6-BA) を添加した培地上に置床するなどの処理を行った. 培養は2種類の光強度条件, すなわち, 強光 (50μmol m-2 sec-1) および弱光 (8.5 μmol m-2 sec-1) 下で行った. このような方法で得られた結果は以下のように要約される. (1) 16時間滅菌水に浸漬処理したものは 6-BAを添加した前処理に比べ, 再分化に関してより良好であった. (2) 6-BAを添加した培地での子葉の前処理は滅菌水浸漬処理に比べてより高いカルス形成率およびカルスの成長を示した. これら以外の重要な観察は, 異なった培地条件下での植物体再分化は異なった反応を示したことである. 1.0μM ナフクレン酢酸 (NAA) と9.0 μM 6-BA を添加したB5基本培地での植物体再分化率は, 強光条件下では, 他の再分化培地に比べより高かった. 一方, 弱光条件下では, ムラシゲ-スクーグ (MS) 基本培地や1.0 μM NAAと9.0μM 6-BAを添加した MS 培地でより高い植物体再分化率を示した.
  • Daniel Francis Kpakpo ALLOTEY, 堀内 孝次, 宮川 修一
    1997 年 66 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ソバの生育に及ぼす若莢収穫後の緑肥ダイズ施用の影響と緑肥由来の窒素利用効率を化学肥料施用条件下でみるため, 標識15Nを吸収させた緑肥ダイズを用いてソバのポット栽培を岐阜大学研究圃場で行った. その結果, 硫安分施の2:1:1 (基肥:第1回目追肥:第2回目追肥) の緑肥を併用した施肥区で乾物収量と子実窒素含量が増大した. 緑肥由来窒素%は緑肥単独施肥区では5.3%であったが, 基肥として施用したP2O5とK2Oと硫安分施を伴った区では7.4%~13.4%であった. 窒素含量の最高値は2:1:1施肥区でみられた. 付加的窒素作用 (ANI) はプラスに働いており, この成育段階でのダイズの緑肥利用は単なる窒素供給のみならず土壌資源の効果的利用にもつながることが明らかになった.
  • 丸山 幸夫, 中村 保典
    1997 年 66 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲幼植物の伸長中の第4葉身を供試し, 光合成, 暗呼吸およびタンパク質合成に及ぼす低温の影響を調べた. 光合成速度および暗呼吸速度は酸素電極法で測定し, タンパク質合成は[35S]メチオニンのタンパク質画分への取り込みを定量するとともに標識されたタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離しフルオログラフィーにより解析を行った. 25℃で生長させた水稲幼植物を15℃で10日間低温処理すると, 葉身の光合成速度は著しく低下するが, 暗呼吸速度はむしろ対照植物よりも増加した. タンパク質の合成は低温により阻害されたが, 合成されたタンパク質の分布は生育温度と処理温度により著しく異なり, とくに光合成機能に関連するタンパク質の合成が低温により阻害される傾向が認められた. そこで, リブロース-1,5-ニリン酸カルボキシラーゼ (RuBPC) について免疫手法を用いて解析したところ, 低温下では他の可溶性タンパク質と比較してRuBPCタンパク質の合成が阻害されやすいこと, RuBPCの小サブユニットよりも大サブユニットの合成の方が温度処理の影響を受けやすいことが判明した. これらの結果は, 生長, 発達中の葉身においてRuBPCタンパク質の合成のうち葉緑体と関連する過程が特異的に低温感受性が高いことを示すものであり, このことが低温下における水稲幼植物の光合成および生長阻害の一因と考えられた.
  • 和田 道宏, CARVALHO Luiz J.C.B., RODRIGUES Gustavo C., 石井 龍一
    1997 年 66 巻 1 号 p. 92-99
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報で春コムギ (Triticum aestivum L.) のブラジル長稈品種はメキシコあるいは日本の半矮性品種にくらべて, 光合成の面での耐干性が高いことが示された. 本試験では, ブラジルの半乾燥地帯であるセラードにおいて, 異なる灌漑条件に対する収量および収量構成要素の反応を調べた. 非灌漑下において, ブラジル品種はメキシコおよび日本品種に比べて全乾物収量が有意に高く, 子実収量も34~46%高かった. しかし, 十分な灌漑条件下では, メキシコおよび日本品種はブラジル品種とほぼ同じ全乾物収量を示したが, 収穫指数が高く, 子実収量も18~21%高かった. 収量構成要素の解析によれば, 非灌漑条件下ではブラジル品種の千粒重が重く, 灌漑条件下ではメキシコおよび日本品種の粒数が多かった. 非灌漑と灌漑下におけるコムギ品種の収量順位の逆転はメキシコおよび日本品種の土壌水分感受性がブラジル品種よりも高いことに起因していると考えられた.
  • ALI Muhammad, 堀内 孝次, 宮川 修一
    1997 年 66 巻 1 号 p. 100-107
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    異なる濃度のキチンまたはキトサンを土壌に混和してダイズをポット栽培し, 根粒形成, 窒素固定ならびに生育への影響を調査した. 両物質とも混和土壌では非混和土壌に比べて生育初期(播種後28日)には根粒の生体重とアセチレン還元法で測定した窒素固定能の有意な低下が認められた. 一方, 根粒着生数は1%濃度の処理では減少したが, 0.10~0.50%濃度処理では影響が見られなかった. 播種後42日にはキチンおよびキトサン両者ともに0.10%混和土壌で根粒形成と窒素固定能の増加が見られた. 以上の結果から, 生育初期ではキチンとギトサンはどの濃度でも根粒形成と窒素固定に対して抑制的に作用することが示された. 全乾物重は播種後28日目では, 非混和土壌が最も高い値であったが, 42日目では0.10および0.25%濃度混和の土壌で最も高かった. 完全粒重は莢数の増加を伴ってそれらの濃度で高い値を示した. 以上の効果についてキチンとキトサンの間には差異が認められなかった.
  • 島田 信二, 国分 牧衛, 松井 重雄
    1997 年 66 巻 1 号 p. 108-117
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    地下水位の高低 (15~100cm一定あるいは変動, 無潅水) がダイズ個葉 (主茎上位の活動中心葉) のみかけの光合成速度, 気孔コンダクタンス, 水ポテンシャルに及ぼす影響を明らかにするために, ライシメータを用いて茨城県つくば市 (1991年:多雨, 1992年:少雨), および広島県福山市 (1992年) において調査した. その結果, 降雨条件によって地下水位処理による影響が異なった. すなわち, 降水量が多かった1991年 (つくば市) では, 長期間にわたって降雨がなく土壌が乾いた状態では, 地下水位が高い区ほど水ポテンシャル, 気孔コンダクタンスが高かったが, みかけの光合成速度に処理間差はみられなかった. 一方, 降雨後で土壌が湿った状態では, みかけの光合成速度, 葉の水ポテンシャルは, 地下水位が低いほど高かった. 降水量が少なかった1992年は, つくば市と福山市ともに地下水位が40cmの時に光合成速度, 気孔コンダククンスとも最も高かった. また, 葉の水ポテンシャルは全般に地下水位が低いとやや低下する傾向がみられた. 以上の結果は,地下水位はダイズ個葉の光合成速度, 水分生理に大きな影響を与えること, およびその影響は降雨状況で異なることを示している.
  • RASHID Md. Abdur, 安藤 和雄, 田中 耕司, 海田 能宏
    1997 年 66 巻 1 号 p. 118-128
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バングラデシュの更新世台地 (バリンド台地) に位置するボグラ県アイラ村において, 農業的土地利用と作付体系の変容に関する村落レベルの調査を, 1992年のアマン季から1993年のボロ季にかけて行った. 村内の土地は, その利用, 位置, 土壌条件などによリ9つの類型に分類される. その土地分類を基礎に, 同村におけるトポシークェンスと作付体系成立の関係について考察した. 1970年代以前においては, 雨季の湛水不足と乾季の水源枯渇により, 移植アマン稲の一毛作体系を主流とする稲作が行われ, 深水アマン稲やアウス稲, ラビ作物の栽培は非常に限られていた. しかしながら, 1970年代末の浅井戸灌漑の導入以来, 水田の作付様式は従来の[移植アマン稲 - 休閑]から[移植アマン稲 - ボロ稲]の水稲二期作へと急速に変化した. この急激なボロ稲の導入・拡大は, 一つにはボロ稲の導入が従来の移植アマン稲の栽培と抵触しなかったこと, また一つには浅井戸灌漑の導入が乾季の土壌固結による耕起作業の困難さを取り除いたことにより可能となった. このような急速な作付様式の変化を経験しつつも, 村人は村内の微地形の変異に対応した品種選択の伝統をいまも維持しており, このなかに水田の立地条件に対する村人の対応力がうかがえた.
  • 尾形 武文, 松江 勇次
    1997 年 66 巻 1 号 p. 129-130
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 秋田 重誠, 尹 炳星, 安東 郁男, 長野間 宏
    1997 年 66 巻 1 号 p. 131-132
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 栗山 昭, 川田 訓平, 河合 文雄, 金森 正雄, 渡辺 克美, 前田 桝夫
    1997 年 66 巻 1 号 p. 133-134
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 二口 浩一, 石井 龍一
    1997 年 66 巻 1 号 p. 135-136
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 孫 太権, 吉田 智彦
    1997 年 66 巻 1 号 p. 137-138
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 須藤 健一
    1997 年 66 巻 1 号 p. 139-144
    発行日: 1997/03/05
    公開日: 2008/02/14
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