全日本鍼灸学会雑誌
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37 巻, 1 号
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  • 丹沢 章八, 根本 宏三, 北村 秀勝
    1987 年 37 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 臨床で行なう実際の脈診の技法をできるだけ踏襲し, 検者の手指に触れる脈象に最も近似した脈象を圧脈波として抽出し, 客観化することを目的とした。
    その結果, 脈診の技法は独自性要素が強く普遍性に乏しい“術的要素”を多く含んでいること。しかし, 一方では複数の検者の脈象所見には多くの共通性が認められたことから, 脈象には多くの客観性に富む情報を含んでいる可能性があること。したがって, 脈象は, それを抽出する方法によっては, 有力な生体情報の一つに成り得る要素を持っていることなどが確められた。
  • 根本 宏三, 大嶋 克彦, 丹沢 章八
    1987 年 37 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回著者らは, 長い病歴をもつ2症例について, 鍼灸治療による症状の改善が全く認められないことに疑問を抱き, 精密検査の結果疾病の本態である腫瘍を相次いで発見し危うく急速な疾病の悪化をまぬがれるという経験を得たので報告し, 鍼灸治療がもつ治療的診断の側面の重要性に触れる。
    日常臨床において, 鍼灸治療に全く反応を示さない症例に遭遇した時は, 一応重大な器質的疾患の存在を疑ってみる必要があり, 特に生体の反応を診ながら治療する鍼灸の臨床は, 治療過程における細心の病態観察から病像を把握していく治療的診断能力の側面をもっている。この報告を通じ, 鍼灸治療がもつ治療的診断の側面の重要性を著者らは, 特に強調する。
  • 沢津川 正一, 影山 照雄
    1987 年 37 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    『感伝現象』と《経絡》との関連について実験をおこなった。
    肝経の原穴・太衝に刺針, パルス通電刺激し, 発現した反応について, 反応が発生するまでの時間, その部位, 反応の種類を記録した。実験終了後, 既往症・現症の有無を調べ統計学的処理を行った。
    『感伝現象』と《経絡》との同一性, 類似性は見出しえなかった。
    既往症・現症を有する者に, 反応が有意に早く出現した。
    既往症の部位よりも現症の部位に一致して高率で反応が発現する傾向を示した。
  • 池田 啓二, 田部井 亮
    1987 年 37 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回は, 高血圧発症前期 (11週令) のSHRの雄を処置群 (Tgroup) と対照群 (Cgroup)-(各群7-8匹) との2群と高血圧発症中期 (24週令) も処置群と対照群に分けて, ヒトの〓門穴部をラッットに求めて体重1g当り, 0.5mgのもぐさ量で4日に1度の割合で刺激を行い, 何らの処置も加えなかった Cgroup との血圧の変動を比較した。結果として, 〓門穴の刺激はSHRの高血圧発症前期群を降圧させる効果があるが中期群は効果はなかった。また, 前期群は体重増加を抑制するが中期群は抑制しなかった。
  • 村居 真琴, 山内 真由美, 浅岡 初枝, 笠原 多嘉子, 坂本 浩二
    1987 年 37 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    下垂体摘出ラットを用いて自律神経機能障害に基づく内分泌失調に対する施灸刺激の影響を検討した。下垂体摘出による体重増加の停止, 腺組織の萎縮, 尿量の増加そして直腸温の僅かな低下等に対して施灸刺激の影響は認められなかった。更に下垂体摘出による生化学的変化に対しても同様な結果が得られた。電解質およびアミノ酸代謝に関して, 尿中Na, K, Cl, Caおよび尿素窒素, クレアチニンの有意な減少或は減少傾向に対して施灸刺激は影響を示さなかった。副腎皮質機能に対しても副腎皮質ホルモンの指標としての尿中17-OHCSは僅かに増加, 17-KSは僅かに減少を示したが施灸の影響を認めなかった。
  • 性・年齢・測定月別の比較検討
    吉備 登, 北村 智, 森川 和宥, 田中 衛
    1987 年 37 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはいわゆる健康小児を対象に, 性・年齢および測定月のなかでどの要因がどの程度各良導絡に影響を与えるかを検討した。そのために, 我々は同一人を測定月を変えて計測し, さらに性別, 学年別にわけて比較した。なお, 分析には各集団の良導絡代表測定点における皮膚通電抵抗測定値と良導絡興抑出現頻度を用いて, それぞれについて単変量および多変量解析をおこなった。その結果, 各集団には各々微妙に異なった良導絡特性があり, また, 各集団間の差異は測定月間が最も多く, 学年間もやや多いが, 男女間は少ない。これらの傾向は測定値および頻度を用いた両者共に認められる。
  • 手の陽明大腸経とインスリン分泌
    長谷川 汪, 田和 宗徳, 寺沢 宗典, 湯浅 とみの
    1987 年 37 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    糖尿病の鍼灸治療の研究の一環として鍼刺激とインスリン分泌との関係について糖尿病の治療に繁用されている種々の経穴を用い検討し, 曲池がインスリン分泌と密接な関係を有することが明らかとなった。今回, この曲池と同じ手の陽明大腸経上に存在する合谷, 手三里, 巨骨および迎香につきインスリン分泌との関係を検討した。その結果, これら四経穴とも30分間の置鍼刺激により糖負荷後30分および60分におけるインスリンの追加分泌ならびに60分間の分泌総量および分泌反応のいずれにおいても明らかな亢進が認められた。特に合谷刺激群の亢進は著明であった。
    これらの事実はインスリン分泌と手の陽明大腸経と密接な関係を有していることを示唆している。
  • 森野 一巳, 国崎 恵美子, 鳥山 稔
    1987 年 37 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    耳鳴は, しばしば見られる耳症状であり, 耳鼻科医を悩ませている。我々は, 耳鳴に苦しむ患者を, 東洋医学の一方である鍼によって治療してきた。
    この研究は, 1982年3月から1983年4月まで, 国立病院医療センター耳鼻咽喉科を訪れた男性22名, 女性33名の計55名を対照としている。
    我々は, 二つのツボを選んだ。一つは, 耳珠の上部である。ここに鍼を刺し, 低周波電気刺激を加えた。2つ目は, 東洋医学では腎と関連があると言われている耳甲介艇である。ここに, 鍼を一週間程刺しておいた。
    耳鳴は, 31名 (56%) で改善が見られたが, 24名については, 見られなかった。改善は, 特に, 精神的, 自律神経的な原因があると考えられる場合に, よく見られた。
    我々は, 鍼は, 耳鳴に対する治療の一つになり得ると考えている。
  • 河瀬 美之, 堀 茂, 石神 龍代, 山田 耕, 黒野 保三
    1987 年 37 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    我々は臨床の場で, 様々な主訴の患者に血圧測定を行っている。そして, それぞれの主訴の改善を目的とした黒野式全身調整に基づいた鍼治療を行った。その結果, 初診時血圧が高かった患者の血圧値が徐々に降圧傾向を示した事に着目して調査研究を行った。
    今回は, 初診時血圧測定値をWHOの血圧基準により, 高血圧領域にあった患者と境界域にあった患者とに分類した。そして, 初診時の値と, その後7回の治療前血圧測定値の平均とを比較検討を行った。比較方法は, ヒストグラムとT検定を使用した。
    これらの方法により検討を行った結果, 高血圧領域, 境界域共に血圧値の下降が認められた。
  • 清水 完治
    1987 年 37 巻 1 号 p. 58-67
    発行日: 1987/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    赤羽式治療法は知熱感度測定により14経絡の井穴の熱感度を記録し, 左右差のある経絡を治療する本治法と, 痛み, 凝り部, 圧痛点に治療する標治法とがある。
    治療には皮内針法とシーソー法がある。
    腰痛症における赤羽式治療は有効かつ即効性がある。経絡測定の左右差が2倍以上ある兪穴, 募穴に皮内針, 瀉法針を行い, 腰の一番痛い姿勢での部位に皮内針を行う。
    今回は赤羽式治療と知熱感度測定値の左右差, 上下差のある経絡をMP針により調整出来ることがわかり, 腰痛症に有効性がある。
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