近年, 社会生活の多様化, 人間関係の複雑化などに伴い不定愁訴を訴え鍼灸院に来院する患者が増えてきた。しかし, その有効性に関しては術者や患者の主観的評価にとどまり, 実証医学的証明が得られないまま現在に至っているのが現状である。
今回, 不定愁訴に対する鍼治療の有効性を実証医学的に見出す目的で (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班が作成した健康チェック表を使用し, 平成3年8月30日から平成6年8月26日までの約3年間に東洋医学研究所
®に来院した患者658名を対象に, 鍼治療による不定愁訴指数の推移を比較検討した。その結果, 不定愁訴班では不定愁訴に対する鍼治療の最終効果判定期間を3クール・3ヵ月以内と定めているが, 次回鍼治療終了群 (227例), 1クール鍼治療終了群 (77例), 2クール鍼治療終了群 (42例) においていずれも有意に減少していることが認められた。
重症度別の不定愁訴指数減少率においても, 次回鍼治療終了群では軽症18%, 中等症18%, 重症14%, 1クール鍼治療終了群では軽症24%, 中等症28%, 重症23%, 2クール鍼治療終了群では軽症20%, 中等症26%, 重症24%の減少が認められた。
各重症度間の関連性を調べる目的で行ったカイ2乗独立性の検定においては, 次回鍼治療終了群, 1クール鍼治療終了群, 2クール鍼治療終了群においていずれも独立性は証明されなかった。
以上の結果から, 不定愁訴班では不定愁訴に対する鍼治療の最終効果判定期間を3クール・3ヵ月以内と定めているが, 次回終了, 1クール終了, 2クール終了においても鍼治療が有効であることを定量的に見出すことができた。
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