全日本鍼灸学会雑誌
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46 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 河村 廣定, 二ノ宮 裕三, 船越 正也
    1996 年 46 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    針鎮痛効果をもたらす末梢求心神経機序を明らかにする目的で, 神経毒であるカプサイシン (cap) を2日齢ラットの皮下, 又は, 成獣期ラットの右前肢上腕部神経幹に処理 (cap 1回処理) し, cap によって障害される神経線維が, 針鎮痛をもたらす末梢求心神経線維に関与するか否かを調べた。痛覚の測定には Randal-Sellit 式痛覚測定器, 及び, ホットプレート法を用いた。2日齢処理では痛覚閾値が上昇し, 針鎮痛効果は認められなかった。成獣期の cap 1回処埋では, 非処理側の針通電による明らかな鎮痛効果を認めるのに対して, 処理側の針鎮痛効果は認められなかった。以上の結果から, 針鎮痛をもたらす未梢求心路に cap 感受性神経線維が関与することが示唆された。
  • 七堂 利幸
    1996 年 46 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    計量 (metric) データである hard data より, 質的 (qualitative) データの soft data の重要性は, 臨床試験で認識され始めている。その傾向は, quality of life の評価の必要性が最近解かれている事でも分かる。鍼灸は病気でなく病人を治すと言われており, 鍼灸研究の評価には, 簡便な Visual Analogue Scale (VAS) が, 今後多く使われる事が予想できる。そこで, このVASの作り方, その解析方法, それら実施上の注意点及び, VAS類似の方法との関連について述べる。
  • 七堂 利幸
    1996 年 46 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過去約10年分の全日本鍼灸学会誌において使われた統計手法を調査した。その結果, 統計手法の使用率は, t検定が最も多く72.5%, 次にχ2検定は25.7%, 三番目は分散分析が5.7%であった。残り17の統計手法の使用率は各々5%以下であった。t検定使用と明記されたものは36.5%,χ2検定使用と明記されたものは13.7%で, それら二つの統計法を明記してなかった論文も, 明記してあった論文とほぼ同率数あった。
    本来t検定と書くべきをT検定としていたものが14%と意外に多く, ソフトウェア・パッケージ名を記載したものが1.1%と極めて少なかった。これらの統計手法が97%もの誤用を抱えている問題と併せて考えると, 医学統計手法の教育と, 投稿規定の改善や査読 (peer review) での改善が強く望まれる。
  • 新患703名の健康チェック表の分析
    安藤 由紀, 石神 龍代, 皆川 宗徳, 黒野 保三
    1996 年 46 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    今回 (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班が作成した健康チェック表を使用し, 平成3年8月30日より平成6年8月26日までの約3年間に東洋医学研究所®に来院した新患703名の初診時の健康チェック表を基に調査分類し, 種々検討を行った。
    年令別分類では, 50代が175名と最も多く, 40代144名, 60代121名と50代を頂点とした山形パターンを示していた。性別分類では, 男性が285名, 女性が418名で, 男女比は約1:1.5で女性優位であった。新患703名のうち, 重症度判定基準により5点以下あるいは51点以上の除外が45名であった。残りの658名の重症度別分類では, 軽症293名 (41.7%), 中等症265名 (37.8%), 重症100名 (14.2%) であった。層別分類では, 自律神経失調性項目が26.1%, 神経症性項目が20.7%, うつ状態性項目が25.6%, その他の項目が27.6%と約4等分されていた。層別の各項目別分類では, それぞれ特異的な項目に訴えの頻度が高いことが認められた。
    以上の結果から, (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班で作成した健康チェック表を使用することによって, 来院患者の鍼灸診療の診断及び治療計画をより正確に立てることの可能性が示唆された。
  • 健康チェック表による不定愁訴指数の推移分析
    狩野 義広, 安藤 由紀, 皆川 宗徳, 石神 龍代, 黒野 保三
    1996 年 46 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    近年, 社会生活の多様化, 人間関係の複雑化などに伴い不定愁訴を訴え鍼灸院に来院する患者が増えてきた。しかし, その有効性に関しては術者や患者の主観的評価にとどまり, 実証医学的証明が得られないまま現在に至っているのが現状である。
    今回, 不定愁訴に対する鍼治療の有効性を実証医学的に見出す目的で (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班が作成した健康チェック表を使用し, 平成3年8月30日から平成6年8月26日までの約3年間に東洋医学研究所®に来院した患者658名を対象に, 鍼治療による不定愁訴指数の推移を比較検討した。その結果, 不定愁訴班では不定愁訴に対する鍼治療の最終効果判定期間を3クール・3ヵ月以内と定めているが, 次回鍼治療終了群 (227例), 1クール鍼治療終了群 (77例), 2クール鍼治療終了群 (42例) においていずれも有意に減少していることが認められた。
    重症度別の不定愁訴指数減少率においても, 次回鍼治療終了群では軽症18%, 中等症18%, 重症14%, 1クール鍼治療終了群では軽症24%, 中等症28%, 重症23%, 2クール鍼治療終了群では軽症20%, 中等症26%, 重症24%の減少が認められた。
    各重症度間の関連性を調べる目的で行ったカイ2乗独立性の検定においては, 次回鍼治療終了群, 1クール鍼治療終了群, 2クール鍼治療終了群においていずれも独立性は証明されなかった。
    以上の結果から, 不定愁訴班では不定愁訴に対する鍼治療の最終効果判定期間を3クール・3ヵ月以内と定めているが, 次回終了, 1クール終了, 2クール終了においても鍼治療が有効であることを定量的に見出すことができた。
  • 石神 龍代, 皆川 宗徳, 狩野 義広, 黒野 保三
    1996 年 46 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    不定愁訴に対する鍼治療の有効性を客観的に証明する目的で, (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴カルテを使用し, 平成3年9月から平成6年6月までに東洋医学研究所®に来院した不定愁訴を有する78名の患者に対し, 3ヵ月間にわたり, 毎日あるいは隔日に21回の鍼治療を施し, 不定愁訴指数の平均点数の推移を Student の paired-t-test で検定した結果, 全体の78例では危険率0.1%以下となり, 重症度別の軽症25例では危険率1%以下, 中等症34例では危険率0.1%以下, 重症19例では危険率1%以下となり, また, 自律神経失調性項目, 神経症性項目, うつ状態性項目, その他の項目の各層別においてもそれぞれ危険率0.1%以下となり, いずれにおいても有意に減少していることが認められ, 鍼治療の有効性が統計学的に確かめられた。
    重症度別の効果を種々比較検討したところ, 中等症においてより効果が著明であった。
  • その文献とソフトの紹介
    七堂 利幸
    1996 年 46 巻 1 号 p. 37-55
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    時間経過とともにデータを取っていく経時測定データは, 時点間に系列相関があり, 各時点を独立した値と見て解析すると, 間違った結果になる。この経時測定モデルは鍼灸研究では, かなりの頻度で使われている。鍼灸研究における統計誤用が頻発しているため, この経時測定データの解析法について調べても, ほとんど誤用といってよい。そのため, 正確な解析法の情報を学会会員に伝えるため, 経時測定データの解析法の文献とコンピューター・ソフトウェア・パッケージ (統計ソフト) のレビューをした。
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