人工臓器
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25 巻, 3 号
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  • ―学問の自由と権威の狭間―
    内藤 秀宗
    1996 年 25 巻 3 号 p. 513
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 城山 友廣, 赤松 映明
    1996 年 25 巻 3 号 p. 515-521
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心式血液ポンプの軸シール同題を解消した歳差式遠心血液ポンプ(TSポンプ)の開発を行ってきた. 従来のTSポンプは, 羽根が1個(TS-I型)のものであったが, 新たに羽根が2個の2軸駆動型TSポンプ(TS-II型)を試作し, ポンプ性能並びに溶血の要因となるポンプ圧力変動について検討を行った. その結果, (1) 1軸(TS-I型)に比べ2軸(TS-II型)の方が, 揚程・効率ともに高く, 高流量ほどその差が開いてくる. また, 流出口近傍での圧力変動が小さく, 流れの乱れが抑制されて溶血の低減が期待できる. (2)羽根が流出口に接近した際, 流路を閉塞しないように羽根断面に切り欠きを設ける(Lacked-lmpeller)と圧力変動が抑えられる. (3)流出口が2個(TS-II C2型)ないし3箇所(TS-IIC3型)ある場合, 1箇所(TS-II C1型)の場合に比べて効率が高く, また, 高流量域での揚程も高い. さらに, 流出口近傍の圧力変動が著しく軽減し, しかも高回転ほどその効果が大きいことがわかった.
  • ―金属製可動子を用いたアクチュエータの駆動試験―
    壁井 信之, 土屋喜一
    1996 年 25 巻 3 号 p. 522-526
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は筋収縮機構の静電モータ説を基に, 人工心筋としての静電アクチュエータの開発を行ってきた. 従来の静電アクチュエータは平行平板型コンデンサーと誘電体の可動子から成り立っていたが, 本研究では微細加工の面から新たに金属製の可動子を提案し, その可能性を検討することを目的とした.
    まず金属可動子を用いた静電アクチュエータの最大静推力を測定した. その結果300[V]で約8[mN]の推力が得られた. 次に, アクチュエータの連続駆動制御システムを開発し, 動作確認試験を行った. 試験に用いた固定子の電極長さ1[mm],電極間隔0.1[mm]で, 可動子の厚さは0.30[mm], その有効幅は40[mm]である. ギャップ充填剤には液晶のGR-63を用いた. 駆動周波数100[Hz], 駆動電圧200[V]でアクチュエータの可動子はほぼ定速運動し, 無負荷時で2.5[mm/s]の値が得られ, 従来の誘電体可動子を用いた場合と遜色のない性能が得られることが分かった.
  • 石川 晃, 吉澤 誠, 田中 明, 阿部 健一, 山家 智之, 仁田 新一
    1996 年 25 巻 3 号 p. 527-533
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    著者らは先に, 空気圧駆動式のサック型人工心臓において, 目標一回拍出量を最小の駆動エネルギーで実現するためには, 人工心臓を最適動作点において駆動すればよいことを示した. 最適動作点とは, 収縮時間と一回拍出量の関係が作る三角形の底辺に対向する頂点に対応する動作点をいう. 最適動作点を自動的に維持する従来のアルゴリズムでは, 拍出流量f(t)が正から零となる時刻zを利用していた. このため, 1) 雑音に弱い, 2) 補正値の設定が困難である, という欠点があった. そこで本研究では, zの代わりにf(t)が同一拍内で最大となる時刻に着目し, このような欠点を改善することのできる新しい最適動作点決定アルゴリズムを提案した. また, この動作の妥当性をモック循環系において確認した.
  • 豊田 吉哉, 岡田 昌義, Kashem MOHAMMEDABUR, 築部 卓郎, 向井 友一郎
    1996 年 25 巻 3 号 p. 534-537
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Dynamic cardiomyoplasty (DCMP)の臨床例の検討では、耐術症例における臨床症状の改善効果には意見の一致をみている。しかし、血行動態に対する効果については未だに一致した見解はない。この点を解明するため、実地臨床と同様の病態である慢性心不全モデルを作成し、これに対するDCMPの効果を検討した。慢性心不全は成犬を用いて動・静脈シャント及びAdriamycinの冠状動脈内への注入により作成した。このモデルに対するDCMPの効果として、急性期にはDCMP駆動時に左右心室圧、大動脈圧、肺動脈圧の上昇を認めた。preconditioning後の持続的刺激下では、圧補助効果は認められなかったが、左室収縮時の壁運動の増強及び心拍出量の増加が認められた。以上の結果より慢性心不全に対するDCMPの有用性が示された。
  • 荒木 賢二, 中谷 武嗣, 戸田 宏一, 妙中 義之, 高野 久輝, 押川 満雄, 鬼塚 敏男, 古賀 保範
    1996 年 25 巻 3 号 p. 538-541
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    耐疲労性in situ広背筋の力学的特性を基に, リニア型骨格筋ポンプ設計の基礎的な考察を行った. 成山羊3頭(57~72kg)の左側広背筋に12週間のプレコンディショニング施行後, 急性実験にて広背筋停止側を変位計測器, 張力計に接続し耐疲労試験を行った. 定期的に負荷を変え収縮期と弛緩期の張力-長さ関係から最大外的仕事率(maxP)を算出した. 刺激120分後のmaxPは最大3.16Watts/筋肉kgであり, 耐疲労性も良好であった. 発生張力は12.14kgf/筋肉kg, stroke lengthは32mmであった. リニア型ポンプとしてヒト両側広背筋(重量0.5kgと仮定)を駆動源とし, ケーブルとベローズを介して拍動型ポンプを駆動し左心補助を行うものとする. 計算上は204mmHgの圧を発生し得るが, ポンプ後負荷を100mmHgとすれば, 広背筋の癒着やポンプシステムなどの損失を50%以下に抑える必要があり, 実現には工夫が必要である.
  • 中島 博, 小倉 可光, 安倍 次郎, 江郷 洋一, 赤坂 忠義, 金子 三蔵, 安藤 博文
    1996 年 25 巻 3 号 p. 542-547
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Dynamic cardiomyoplastyでは、広背筋変性が長期予後を規定する要因となっている。従来の筋電極に対して、縫着時に神経・筋の器械的損傷が少ない神経表面刺激電極、筋表面不感電極を作製し、電気的特性を検討した。雑種成犬を用いた急性実験で、刺激閾値、インピーダンスおよび収縮力を測定し、同時に閾値の2倍の電圧刺激下での筋収縮力、刺激伝播様式と収縮の一様性を観察した。表面電極のインピーダンスは筋電極の約3倍で、刺激閾値は約2分の1であった。また、閾値の2倍の電圧刺激では、筋電極、表面電極間に刺激伝播様式と収縮の一様性に差は見られず、計算上では表面電極は筋電極の20分の1のエネルギーで広背筋の駆動が可能なことが示された。表面電極は縫着時の器械的損傷が軽微で、かつ低エネルギー電気刺激で駆動でき、電気的な筋変性の軽減にも有用である可能性が示唆された。
  • 佐久間 佳規, 塩野 元美, 進藤 正二, 秋山 謙次, 折目由 紀彦, 畑 博明, 八木 進也, 塚本 三重生, 奥村 晴彦, 中田 金一 ...
    1996 年 25 巻 3 号 p. 548-552
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当教室で過去13年間に行われた空気駆動型VAD症例(I群)とPCPS症例(II群)において出血量、溶血、挿管時間および離脱率と予後につき比較検討した。
    補助循環中の出血量はI群で多かった。II群での血小板数の減少は補助循環開始直後に著明であったが離脱後の回復は良好であった。溶血は2群間に差はなかった。II群は早期抜管例が多く胸骨早期閉鎖可能例がみられた。I群では離脱率は高かったが、離脱後の生存率はII群で良好であった。
    PCPSにより充分な流量が得られた症例では、出血量が少なくすみ、多臓器不全を引き起こすことも少なかった。しかし、重症例において充分な流量補助を得るにはPCPSでは限界があるため、VADの適応が必要となる。PCPSは簡便で短期の補助には優れた補助循環手段であるが、流量補助が困難な場合は臓器不全を発症する前に可及的速やかにVADへ移行すべきである。
  • 堀 由美子, 山田 由紀子, 金崎 由美子, 岸添 有喜子, 中谷 武嗣, 笹子 佳門, 公文 啓二, 鬼頭 義次
    1996 年 25 巻 3 号 p. 553-559
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓(VAS)による長期補助を行う上で適応患者のQuality of Life (QOL)の向上を図ることが重要である。そこで長期VAS施行患者のリハビリテーションの有用性を考察した。対象は1994年より国循型左房脱血方式VASを適用した6例で、鎮静期間、運動療法(屈伸及び内転・外転、内旋・外旋運動)開始日と日常生活動作(ADL)及び関節拘縮の関係を検討した。統計処理はスピアマンの順位相関係数により行い、p<0.05を有意とした。鎮静期間の長さは上肢の動作に影響があり、関節拘縮の程度に有意に相関を示した。屈伸運動はベッド上の運動回復に有意に相関した。内転・外転、内旋・外旋運動は4例において覚醒後に開始したが、関節拘縮の程度に有意に相関した。以上よりVAS適応患者の鎮静期間の短縮を図り運動療法を出来る限り早期に行うことは、ADLの向上、関節拘縮の予防、全身状態の改善に有効であり、覚醒を促せない場合でも積極的な運動療法を行うことが重要と考えられた。
  • 青木 正康, 佐藤 和幸, 佐藤 浩一, 塩澤 広毅, 高山 ちづ子, 許 俊鋭, 尾本 良三
    1996 年 25 巻 3 号 p. 560-565
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症に対し補助人工心臓による循環補助を施行した患者のうち、40日以上生存の患者3名に対し、自転車エルゴメータを用いたリハビリテーションを施行し、その効果を検討した。症例の平均年齢は45歳、循環補助までの完全臥床期間は平均1カ月であった。プログラムは、ベット上、ベットサイド、自転車エルゴメータ、介助歩行、自力歩行の5段階に分け、それぞれ装着後平均1日、4.3日、7.7日、8.7日、17日、18日に開始された。早期離床を目指した筋力回復のリハビリテーションは、合併症の予防、栄養状態の改善促進、および精神的安定に効果があると考えられた。プログラム作成には、浮腫、尖足、褥創および栄養状態を考慮することが重要であった。自転車エルゴメータは、運動量算出まで至らなかったがし歩行訓練が困難な時期でもある程度実施可能である点から、歩行訓練よりも早期に利用できる可能性が示唆された。今後、補助人工心臓装着患者を対象とした運動量算出プログラムについて再検討する必要がある。
  • 村田 聖一郎, 井野 隆史, 安達 秀雄, 水原 章浩, 山口 敦司, 紙尾 均, 横山 研司, 萩原 和彦
    1996 年 25 巻 3 号 p. 566-570
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    テルモ社が開発した新しい共有結合によるヘパリンコーティングを回路の全ての血液接触面に施したPCPSシステムを10例に臨床応用した. 10例の内訳は男性8例, 女性2例, 平均59.3歳. 原疾患は急性心筋梗塞によるショック3例, 開心術後低心拍出量症候群5例, 重症劇症型心筋炎2例であった. 10例中4例が循環補助から離脱し3例に長期生存が得られた. Acr150秒を目標にヘパリンを全身投与した結果155±84U/hrと微量であり, 出血性及び血栓性の合併症は認めなかった. 補助時間の平均は98.3時間で従来の抗血栓性PCPSシステムに比較し有意に長かった. 本システムの人工肺はほとんど血漿漏出を認めず従来の人工肺とは一線を画す耐久性を示した. 急性激症型心筋炎の2症例は200時間を越える長期補助ののち離脱に成功し, 1週間以上の連続補助を安定して行い得る可能性を示唆した.
  • 斎藤 憲, 中山 卓, 諸久 永, 大関 一, 林 純一, 江口 昭治
    1996 年 25 巻 3 号 p. 571-575
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血小板粘着・活性化を抑制すると考えられるミクロドメイン構造をもった抗血栓性材料(MDF-μ)を使った補助循環の実験を行い、血栓形成や血液凝固学的パラメーターの変動にわいて検討を行った。MDF-μコーティング回路(M群)3頭、コントロール回路(C群)3頭の計6頭のブタでV-Aバイパスを6時間施行した。バイパス前、1、3、6時間後に血小板数、Fibrinogen、FPA、TATを測定した。またバイパス後の回路を肉眼的及び走査電顕にて観察した。血液凝固のパラメーターはM群とC群の間に有意差はなかった。M群では回路内に血栓形成はなく、走査電顕でもわずかな血球成分の付着のみの所見であった。C群では脱血側のチューブに血栓を認めた。2群ともFPA、TATが3時間後から上昇傾向が見られた。MDF-μはコントロールに比し血栓形成抑制の効果はあるが、全身の血液凝固系の活性化の点では差がなかった。
  • ―基礎的検討―
    中谷 武嗣, 高野 久輝, 佐々木 栄作
    1996 年 25 巻 3 号 p. 576-581
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋込型左心補助人工心臓システム(LVAS)として, 開発中のモーター体型LVASの基本設計および基礎特性を報告する. プッシャープレート型血液ポンプを用い, DCブラシレスモーターを用いてスプラインアクチュエータを直接駆動するシステムとした. ハウジングはエポキシを, ダイアフラムはポリウレタン(東洋紡, TM-5, 大阪)を用いた. ポンプ直径は85mm, 厚みは36mmで, 重量は100gであった. スプラインアクチュエータは, 直径80mm, 厚み40mm, 重量は800gで, 無負荷試験にて機械的トラブル無く300日間駆動し得た. モック流量は, 前負荷20mmHg, 後負荷80mmHg, 電圧DC11V, 100BPMで2.6l/minであり, 駆動時の電流は1.0Aであった. さらに, ポンプ形状およびモータを変更して, 流量特性を検討すると電圧DC17V, 97BPMで7.6l/minとなり, 駆動時電流は1.5Aであった. 本システムは, 完全埋込型LVASの血液ポンプおよびアクチュエータとして有望と考えられる.
  • 穴井 博文, Robert JARVIK, Michael P. MACRIS, John L. ROBINSON, Steven M. P ...
    1996 年 25 巻 3 号 p. 582-585
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心室内軸流ポンプJarvik 2000の慢性動物実験における評価を行った。牛7頭に左開胸下で, 体外循環は用いずに左室心尖-下行大動脈間にポンプを装着した。6頭で63日から162日(平均110日)の長期生存が得られた。1頭は74日で現在進行中である。実験終了の理由は, 駆動ラインの断線1例, ポンプ内の血栓によるポンプの停止1例, インペラとケーシングの摩擦によるポンプの停止3例およびグラフの血栓による閉塞1例であった。血漿遊離ヘモグロビンを含め, 血球計算およびその他の生化学データは正常値で経過した。剖検時所見では心室内心筋の損傷の所見はなく, 腎臓や各臓器には5ヵ月以上経過した例でも血栓による梗塞の所見は認められなかった。心室内軸流ポンプJarvik-2000を用いた慢性動物実験において, 良好な結果が得られた。Javik 2000は, 体内収納型長期補助人工心臓として有望であり, 近い将来, 米国で臨床使用される見込みである。
  • 河内 寛治, 水口 一三, 川田 哲嗣, 小林 修一, 浜田 良宏, 庭屋 和夫, 長谷川 順一, 北村 惣一郎
    1996 年 25 巻 3 号 p. 586-589
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大動脈領域における人工弁の各サイズの弁機能に検討を加え、体表面積(BSA)と左室-大動脈圧較差(△P)との関係を求めた。SJM弁11例及びBicer弁17例を対象とした。使用弁サイズはSJM弁で21mm弁3例、23mm弁6例、25mm弁2例でBicer弁では各々5、7、5例であった。術後遠隔期に安静(R)及び運動負荷(Ex)時に心内圧及び心拍出量を測定し、△Pを求めた。Gorlinの式から有効弁口面積を計算し、Gorlinの式を展開して種々のBSAでの△Pを算出した。BSAと△Pの関係を求めると狭少弁の21mm SJMではBSA 2.0m22△PはR時9mmHg, Ex時19mmHgとなった。△P=20mmHgになるBSAは2.04m2となり、BSA 2.0m2以下であれば問題が無いものと考えられた。21mm Bicer弁ではBSA 2.0m2の時の△PはR時14mmHg, Ex時19mmHgとなり、△P=20mmHgになるBSAは2.03m2が得られた。BSA2.0m2以下であれば21mm弁以上の弁であれば問題のないことを示した.
  • 下岡 聡行, 村林 俊, 三田村 好矩, 勇田 敏夫
    1996 年 25 巻 3 号 p. 590-595
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年, 患者から摘出された機械弁において, 弁の表面壊食が報告され, 原因としてキャビテーションが考えられている. 従来, 人工弁の耐久性に関しては加速耐久試験で評価されてきたが, 表面壊食を対象としたものは殆ど無い。本研究では, 耐久試験機において、弁周辺の管壁のコンプライアンスがディスク表面の壊食に与える影響を調べた. コンプライアンスがないホルダー, 弁流出側にあるもの, 流入・流出両側にあるものを製作し, 600拍/分で15時間の耐久試験を行った. 試験後のディスク表面を観察すると, 何れも流入側の表面に多数のピットが観察された. 流入・流出両側にコンプライアンスを持つ場合のもので明らかにピットの数、直径、深さが増加した。弁周辺にコンプライアンスがあることによってより壊食が進行する場合があることが示唆された. 加速試験で人工弁の表面壊食を評価する場合には, コンプライアンスを含めた構造設計が重要であると考えられる.
  • 桑木 賢次, 安倍 十三夫, 小松 幹志, 光島 隆二, 小松 作蔵
    1996 年 25 巻 3 号 p. 596-598
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    中心開放型二葉弁であるBICARBON弁(BC弁)の早期臨床成績を検討した。1994年1月-1994年7月までに20例に対し, 23個のBC弁を使用した。病院死はなく, 平均18.4カ月(15.0-21.5カ月)の経過観察期間で遠隔死も認めていない。2例に再手術を要したが, 構造的な機能不全, 血栓塞栓症, 抗凝血療法に伴う出血, 心内膜炎などの合併症は認めなかった。弁機能の評価として, 大動脈弁位, 僧帽弁位の弁最大圧較差と僧帽弁有効弁口面積をドップラー心エコー法にて測定し, SJM弁と比較し両者で有意差を認めなかった。X線シネ撮影による弁開放角および閉鎖角に問題はなかった。心臓カテーテル検査では全例,術後の心機能は良好に改善した。溶血の評価として血清LDH値は, SJM弁と有意差は認めなかった。NYHA心機能分類は術前平均2.8から術後平均1.3へ有意に改善し, BC弁の早期臨床成績は良好であったが, 今後の長期の経過観察を要する。
  • 古賀 正哲, 豊平 均, 西元寺 秀明, 山岡 章浩, 増田 宏, 岩村 弘志, 渡辺 俊一, 森山 由紀則, 下川 新二, 平 明
    1996 年 25 巻 3 号 p. 599-602
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1989年11月よりOmnicarbon弁(OC弁)を使用し、術後3年以上経過した107例の中期遠隔成績を検討した。手術時年齢は56.5±9.4歳、男女比は59:48で、術式は大動脈弁置換術(AVR)33例、僧帽弁置換術(MVR)61例、内三尖弁弁輪形成術(TAP)併施24例、AVR+MVR13例(TAP併施5例)であった。累積追跡期間は508.3患者・年で、生存率の算定にはKaplan-Meier法を用いた。病院死を含めた術死は8例(7.5%)で、死亡原因は左室破裂、低心拍出症候群、脳出血が各2例、GVHD、心室性不整脈各1例であった。遠隔死は10例(9.3%)で、死亡原因は脳血管障害5例、心不全2例、感染性心内膜炎、不整脈、イレウス各1例で弁関連の死因は9例であった。術後5.8年の生存率は全体で78.5%、AVR85.2%、MVR76.4%、AVR+MVR 69.2%で、耐術例の弁関連合併症の非発生率は89.0%であった。遠隔期死亡の50%は脳血管病変で、抗凝固療法の重要性が示された。Omnicarbon弁の中期遠隔成績では弁関連の合併症発生率は低かった。
  • ―特に血流量との関連についての検討―
    梶原 博一, 平野 克典, 浜田 俊之, 橋山 直樹, 岡本 雅彦, 佐藤 順
    1996 年 25 巻 3 号 p. 603-606
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Omnicarbon弁を用いた大動脈弁置換術36例に対して術直後、術6か月後にX線シネ撮影を施行し、弁機能を評価した。最大弁開放角は術直後67.9±9.8度,術6か月後63.0±8.5度と有意に低下していた。弁閉鎖制限は1例も認めなかった。血流方向に対するoccluderの開放角を測定した。すなわち、術6か月後に施行した心臓カテーテル検査時の肺動脈造影より左室流出路軸を求め、これに直角にhousingが装着されているものと仮定し、弁最大開放角を測定した。26例で測定し、66.2±9.1(50~81)度であった。通常の最大弁開放角は一回拍出量と相関は認められなかったが、左室流出路軸に対する最大弁開放角との間には正の相関(r=0.51)があった。このことより開放角の低下は血流量の減少によることが示唆された。血流軸(左室流出路軸)に対してOmicarbon弁は十分に開放しており、これがOmnicarbon弁の良好な臨床成績と一致していると思われた。
  • 山田 眞, 関口 茂明, 成澤 隆, 松尾 義昭, 饗場 正宏, 村田 升, 村上 厚文, 井上 恒一, 高場 利博
    1996 年 25 巻 3 号 p. 607-609
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1990年1月から1993年12月までの期間に5症例のペースメーカー(以下、PM)感染症例に対し縮小手術を施行した。縮小手術手技は以下の二方法である。
    (1)旧リードを再使用し、ジェネレーターおよびジェネレーターポケット(以下、GP)を変更する方法。
    (2)鎖骨下静脈穿刺部近くでリードを切断してコネクターを用いて新リードと接続し、ジェネレーターおよびGPを変更する方法
    現在、縮小手術の禁忌は菌血症、リード内感染、静脈穿刺近位部までの感染徴候、と判断している。
    5症例の術後観察の合計202か月間(最短24か月、最長63か月)に感染の再燃を認めた症例はないことから、多くの利点を有する縮小手術は今後選択されるべき術式と考えられる。
  • ―SSIペースメーカーとの比較検討
    柵木 隆志, 大原 康壽, 渡邊 孝, 保浦 賢三, 村瀬 允也
    1996 年 25 巻 3 号 p. 610-612
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1980年より1995年の間に使用され交換されたSSIRペースメーカー(PM)8個・DDD-PM13個を対象として, その寿命をSSI-PM11個と比較した。また3群の寿命を保証期間と比較した。PMの寿命は植え込みより摘出までの期間と定義した。電池交換(EoL)指標に従って交換したPMは, その寿命を目標寿命と比較し, 摘出時の出力電圧を初期電圧と比較した。平均寿命はSSI, SSIR, DDDの順に9.9, 7.2, 7.5年であった。SSIはSSIR, DDDより有意に長寿命であった。SSIおよびDDDは保証期間より有意に長寿命であり, そのうちEOL指標に従った交換例の平均寿命は目標寿命と有意差を認めなかった。このことはEOL指標の妥当性を示す。また摘出時のDDDの出力は初期出力より有意に低下していた。以上より電池交換指標に従った交換が可能であり, また保証期間より長期にわたる使用が可能と思われた。
  • 石川 利之, 住田 晋一, 木村 一雄, 久慈 直光, 猿渡 力, 菊地 美也子, 栃久 保修, 臼井 孝, 石井 當男
    1996 年 25 巻 3 号 p. 613-617
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    DDDペースメーカーを植え込まれた20例(71.0±11.0〈SD〉歳)においてAV delay短縮による心機能改善と拡張期僧帽弁逆流の関係について検討した。AV delay 115 msecと215 msecにおける、心拍出量(CO)、肺動脈楔入圧(PCWP)をSwan-Ganzカテーテルを用いて測定し, pulsed Doppler法を用いて拡張期僧帽弁逆流の有無を調べた。20例中12例においては、拡張期僧帽弁逆流は認められず、CO, PCWPに有意の変化を認めなかった。20例中8例において拡張期僧帽弁逆流はAV delayが115 msecに設定された時に認められず、215秒に設定された時、認めらるようになり, COは3.9±0.6より3.6±0.61/分に低下し(p<0.05)、PCWPは1例(88%)で増加した(p<0.01 vs. AV delay 215 msecにて拡張期僧帽弁逆流認められなかった症例: 17%)。拡張期僧帽弁逆流の有無が、short AV delayの有効性の指標となることが示された。
  • ―Sarns-46310との比較検討
    鈴木 重光, 福永 周司, 江頭 有朋, 米須 功, 榎本 直史, 押領司 篤茂, 熊手 宗隆, 小須賀 健一, 青柳 成明
    1996 年 25 巻 3 号 p. 618-621
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しく開発された膜型肺Optima(以下O群)を, 後天性弁膜症開心術11例に臨床応用し、従来よりの外部潅流型膜型肺Sarns-46310(以下S群)とガス交換性能、血液適合性について比較検討した。Optimaは、ポリプロピレン中空糸膜よりなるプライミングボリューム削減を目的とした人工肺で、充填量は260ml、全例に無輸血体外循環が可能で、無輸血開心術達成率は0.64であった。ガス交換能は、臨床使用において問題になることはなかった。溶血は軽度で、血小板数も体外循環終了時には良好に維持されていた。補体系では、O群のC3a値が経時的に増加してS群よりも高値となったが、C3, C4, CH50値はほぼ同様の変動を示し、体外循環終了時はO群がS群よりも高値を示し、補体系に与える影響も少ないものと思われた。以上より、Optimaは臨床応用が十分可能で、輸血量削減に有用な、優れた膜型人工肺であると考えられた。
  • ―内頸静脈穿刺による―
    小野 眞, 佐藤 伸一, 平井 二郎, 黒光 弘幸, 戸田 省吾, 相馬 彰, 北浦 一弘, 和田 行雄, 岡隆 宏
    1996 年 25 巻 3 号 p. 622-625
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弓部大動脈再建を要する手術の補助手段として, 現在我々は内頸静脈直接穿刺による新しい逆行性脳灌流法を行っている. この穿刺法を紹介するとともにその有用性に関して報告する. 麻酔導入後, 左右いずれかの内頸静脈穿刺により11.5Frブラッドアクセスカテールを同部に留置し脳灌流送血路とする. さらに肺動脈閉塞用7.5Frスワンガンツカテーテルを上大静脈に留置する. 逆行性脳灌流開始時に, スワンガンツカテーテルのバルーンを上大静脈内で拡張させ閉塞し逆行性脳灌流が有効に行なわれるように工夫した. 逆行送血は単独でポンプを増設し通常の人工心肺回路に接続した. 本法は従来の方法に較べ内頸静脈弁の存在の有無や体位にかかわらず少ない流量で安定した脳灌流が維持できた. また, 術野での回路が簡素化し繁雑な操作を要せず術者は手術に専念できる. 内頸静脈直接穿刺による本法は胸部大動脈手術の際, 簡便で有用な補助手段であると思われる.
  • ―片側頚動脈潅流中の脳酸素動態について―
    海野 英哉, 軸屋 智昭, 榊原 謙, 厚美 直孝, 寺田 康, 三井 利夫
    1996 年 25 巻 3 号 p. 626-628
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    選択的脳潅流中に記録される片側脳潅流(対側頚動脈遮断)時の脳酸素動態を、近赤外分光法(NIRS)を用いて計測した。対象は全弓部置換術を行った6例。NIRSプローブを左前額部に貼付固定し、3波長の近赤外光の反射光を測光し、脳組織内Total, Oxy, Deoxy Hbの変動を推測した。全例で片側脳潅流中は酸化ヘモグロビン減少、還元型ヘモグロビン増加の低潅流パターンを示した。増加/減少パターンが継続する群(S群)は3例、増加/減少が平衡に達する群(M群)は2例であった。片側脳潅流量はS群:6.7ml/kg/min、M群:7.2ml/kg/minと両群間で差がないが、直腸温はS群:28.4℃、M群:26.0℃、また送血温はS群:34.4℃、M群:25.7℃とS群で高い傾向にあった。以上より送血温27~31℃以上では、脳の低潅流状態が経時的に進行し虚血に陥る可能性が示唆された。またNIRSは脳酸素動態を反映する有用なモニターであると思われた。
  • 饗場 正宏, 関口 茂明, 松尾 義昭, 成澤 隆, 森保 幸治, 村田 升, 村上 厚文, 山田 眞, 井上 恒一, 高場 利博
    1996 年 25 巻 3 号 p. 629-631
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者の開心術における周術期管理として術中血液透析(HD)の有用性を検討した.
    対象は成人開心術6例で, 術中HD施行群(HD群)と非施行群(N群)それぞれ3例において周術期の血中尿素窒素(BUN), 血清クレアチニン(Cr), 血清カリウム(K), ヘマトクリット(Ht)を比較した, 術直後のBUN, Cr, K, HtはHD群とN群は33.1 vs 41.5mg/dl, 4.8 vs 6.2mg/dl, 4.3 vs 3.9mEq/l, 24.6 vs 35.1%で, HD群でBUN, Crが低い傾向があったが有意差はなかった.
    本検討から1. 慢性透析患者の開心術において術中HDは術直後のBUN, Cr, Kを有意に低下させる効果はなかった. 2. 待機手術では術直前のHDでBUN, Cr, K, Htを充分に補正し, 術中は限外濾過を術後はnafamostat mesilateを用いたCVVH及びHDを行うことで周術期の管理は行えると考えられた.
  • 安田 利貴, 舟久保 昭夫, 福井 康裕
    1996 年 25 巻 3 号 p. 632-635
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液は、粒子を含んだサスペンション流体の一種である。そのため血液の流れ方次第では、赤血球の慣性力が周囲の流体の粘性力に比べ大きくなり、赤血球が壁面へ衝突することも考えられる。そこで本研究では、赤血球の人工臓器壁面への衝突による溶血の影響を調べるため可視化実験およびin-vitro実験を行った。可視化実験は、血漿および赤血球と同比重の関係になるサスペンション流体を使用し、障害物付近での粒子の挙動観察を行った。in-vitro実験では、可視化実験に基づき血液を表面粗さのある面に噴流させ、衝突時の血液の流速と溶血の関係について定量評価を行った。その結果、可視化実験では、血液のようなサスペンション流体において、ある流速を境に粒子が障害物へ衝突することが観察された。in-vitro実験においては、流速300cm/sから顕著な溶血が観察された。このことから流路形状によって生じる赤血球の人工臓器壁面への衝突は、赤血球破壊に大きな影響を与えるものと考えられた。
  • 西中 知博, 西田 博, 伊橋 健治, 遠藤 真弘, 小柳 仁, 鈴木 進, 田島 行雄, 遠山 範康
    1996 年 25 巻 3 号 p. 636-640
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプは今日著しい進歩を遂げつつある。我々は遠心ポンプとローラーポンプの開心術使用における血液損傷の程度を比較検討するために、日機装社製HPM15, N群14名BioMedicus社製Biopump, BP80 B群10名, Terumo社製Capiox SPポンプ, C群10名, SJM社製Lifestrem, L群10名, トノクラ医科工業社製ローラーポンプ, R群10名について待機的冠動脈バイパス手術を施行し、人工心肺中の溶血指数, β thromboglobulin: β-TG, 血小板数を測定した。repeated measures ANOVA法にて解析すると各群間に溶血指数, 修正血小板数, β-TGに有為差を認めなかった。one way factorial ANOVA法で解析すると、いずれの遠心ポンプ群も血小板損傷がローラーポンプ群より少ない傾向にあり、N群はR, B, C群に比べて溶血が少ない傾向にあった。結論として、開心術使用において遠心ポンプとローラーポンプ間に血液損傷に顕著な差は認められないが、遠心ポンプの開心術使用の有用性が示唆された。
  • ―遠心ポンプ3種とローラーポンプの比較―
    小山 富生, 山田 哲也, 栗田 佳代, 玉木 修治, 原 修二, 櫻井 一, 西澤 孝夫, 村山 弘臣, 加藤 紀之, 村瀬 允也
    1996 年 25 巻 3 号 p. 641-644
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環中無輸血で経過した成人開心術68例を対象として, 人工心肺の送血ポンプ(遠心ポンプ3機種およびローラーポンプ)が血液有形成分に与える影響を比較した. 使用した遠心ポンプはメドトロニックBP-80(BP群20例), 日機装HPM-15(HP群18例), テルモSP45(SP群24例)の3種で, これらとローラーポンプ(R群6例)を比較した. 麻酔導入後および体外循環中経時的に血清ヘモグロビン(S-Hb), 血小板数(PLT)を測定し, 各々希釈補正の後S-Hb増加量(ΔS-Hb), PLTの変化割合(%PLT)を求め各群間で比較した. ΔS-Hbは開始後120分まで増加するが, 4群とも類似の経時変化を示し, 有意な差はなかった. %PLTは減少傾向は見られたもののばらつきが大きく, 4群間で有意差はなかった. 短時間の成人開心術において, 送血ポンプの違いが溶血に及ぼす影響は小さいものであると考えられた.
  • 石山 雅邦, 青木 満, 今井 康晴, 高梨 吉則, 星野 修一, 瀬尾 和宏, 寺田 正次, 長津 正芳, 杉山 喜崇, 太田 淳, 久保 ...
    1996 年 25 巻 3 号 p. 645-648
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体重5~16kgの小児開心術症例を対象として共有結合型ヘパリン被覆を行った人工肺Carmeda MINIMAX PLUS®及び従来のMINIMAX®をそれぞれ8例に使用し経時的に血小板数、C3a, C5a, ブラジキニンを測定した。その結果共有結合型ヘパリン被覆を行った人工肺を使用ことにより血小板数、C5aの変動には有意差が認められなかったもののC3aの上昇は人工心肺の開始からプロタミン投与後30分に至るまで抑制される傾向を示し(p=0.06)、ブラジキンにおいてはその上昇は有意に抑制された(p=0.03)。今回の検討から膜型人工肺のヘパリン被覆は凝固系接触相を抑制することにより、体重に比して異物接触面積が大きい、全血充填症例が多い、吸引血が多い等の特殊性をもつ小児開心術後の合併症予防にも有用である可性が示唆された。
  • ―従来回路とヘパリンコーティング回路の比較―
    服部 浩治
    1996 年 25 巻 3 号 p. 649-654
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンコーティング(HC)人工心肺回路の使用により体外循環(CPB)に伴う凝固線溶反応が抑制されるか否かにっき検討した。対象は成人開心術30症例で、HC回路を用いたHC群と、非HC回路を用いたNHC群に分けた。CPBは両群とも活性化凝固時間を400秒以上に維持して行い、術前からCPB終了後24時間までの11時点でthrombin-antithrombin III (TAT)、fibrinopeptide A (FPA)、antithrombin III (AT-III)、α2 plasmin inhibitor-plasmin complex (PIC)、D-dimer (DD)を測定した。TATとFPAは両群とも著明に上昇したが、CPB中はHC群の方が低値をとる傾向にあり、特にHC群ではNHC群でみられたFPAの有意な上昇を認めなかった。PICとDDは両群でCPB中から上昇したが、CPB中・後を通じてHC群の方が有意に低値であった。以上よりCPBに伴い凝固線溶反応は充進するが、HC回路の使用によりこれらは抑制され、開心術におけるHC回路の使用は有用であると考えられた。
  • ―フランスにおけるWearable Novacorの経験―
    石井 浩二, 安田 慶秀, Ph. DELEUZE, D. LOISANCE
    1996 年 25 巻 3 号 p. 655-657
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1993年3月から1995年5月までにフランスHenri-Mondor病院においてBridgeuseとして行われた携帯可能なWearable Novacor植え込み症例6例の成績について報告する。平均年齢36歳、平均体重67kgで、術前心係数は平均1.41/min/m2、肺動脈楔入圧平均25mmHgであった。術後循環動態の改善は著しく8から20(平均13)日後には歩行可能となり、外泊も可能であった。6例すべてに心臓移植が行われ、健在である。移植までの装着期間は52から169(平均111)日であった。植え込み中の合併症はアスペルギルスによる心内膜炎1例、ポケット感染2例(うち敗血症1例)、MRSAによるケーブル入口部の感染1例、心タンポナーデ2例、ポケット内浸出液貯留4例を認めたが、いずれもコントロール可能であった。また、一過性の脳塞栓症(失語症)を1例に認めた。Wearable Novacorによりすぐれた循環補助が得られ、患者のQ. O. Lの改善とともに、比較的長期にわたる循環補助も可能と思われる。
  • -SEM観察、染色速度比較法、BET法、DSC法-
    中村 真之, 小久保 謙一, 酒井 清孝
    1996 年 25 巻 3 号 p. 658-663
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高透水性透析膜の多くは非対称構造を有している。しかし、現在、膜の非対称構造を評価する指標はなく、溶質ごとに透過実験をしなければ非対称膜の溶質透過性能は評価できない。そこで、非対称構造を有するポリスルホン透析膜(PS-400膜、PS-UW膜、APS膜)を対象として、SEM観察、染色速度比較法、BET法およびDSC法をそれぞれ適用した。そして、膜の非対称構造の評価への適用限界を明らかにするとともに、膜構造の評価を試みた。SEM観察、BET法、DSC法では、膜の透過性の違いの原因となる構造の違いは見られなかった。染色速度比較法では、他の方法と異なり膜により結果に違いが現れた。今回用いた膜のように緻密層と支持層の構造が大きく異なる非対称膜の場合、BET法では支持層の大きい細孔を評価できないが、DSC法では評価できる。また、今回用いた膜はそれぞれ、支持層の非対称構造にあまり違いはないが、緻密層の構造が大きく異なると考えられる。
  • 春原 隆司, 小久保 謙一, 酒井 清孝
    1996 年 25 巻 3 号 p. 664-669
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    臨床における透析膜の性能低下の一因に、血液接触後の膜構造変化による拡散透過性の低下がある。近年開発された高性能透析膜の多くは非対称構造を有しており、その性能低下の起こり方は膜の非対称構造によって異なると考えられる。そこで、非対称構造を有するポリスルホン膜を用いて、血漿タンパク質吸着前後で吸光法により分子量の異なる溶質の膜内拡散係数と溶質透過係数を測定した。血漿タンパク質の吸着により、膜内拡散係数比は小さな溶質ではほとんど減少しなかったのに対し、大きな溶質では顕著に減少した。また、非対称構造を有する高透水性透析膜の場合、従来の透析膜に比べて特に小さな溶質の膜抵抗が小さかった。そのため、これらの膜からなる透析器では、タンパク質の吸着によるクリアランスの低下が少ない溶質の分子量範囲が広い。
  • 西山 敏郎, 大石 竜, 大段 剛, 雨宮 均, 奥山 寛, 秋澤 忠男, 出浦 照國
    1996 年 25 巻 3 号 p. 670-673
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Albの漏出が軽微で,高いβ2MGの除去能を持つポリスルホン膜透析器BS-1.3 (BS)を血液透祈濾過(HDF)に応用し, 透祈濾過器としての特性をセルローストリアセテート膜透祈器FB-130U (FB)を対照に検討した。小分子物質の除去率に両透析器間で差はなく, β2MG除去率はBSでFBに比し有意の高値を示した。Myo, α1MG, Alb除去量はFBで高値であった。HDF時に懸念されたTMPの増加に伴う飾係数(SC)の経時的低下はほとんど認められず, UFRの経時的低下も臨床上影響のない範囲にとどまった。活性化補体C3aはBSで治療中変動を示さなかったのに対しFBでは治療開始直後に有意の増加が, 終了時に低下が認められた。以上よりBS-1.3は血液透祈濾過器としてもβ2MGの吸着を含む高い除去性能とすぐれた生体適合性, Albの保持作用をもち, 大量液置換HDFにも応用可能な透祈濾過器と考えられた。
  • 中村 正基, 小出 典男, 白羽 英則, 氏家 浩三, 真治 紀之, 羽田 元, 辻 孝夫
    1996 年 25 巻 3 号 p. 674-677
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    初代培養肝細胞を用いる生物学的人工肝臓補助装置の開発には、中大動物肝細胞の大量調整法の開発が不可欠である。この論文では、20-25kgのブタから短時間で大量の単離肝細胞を分離する方法を開発したことを報告する。全身麻酔下で、門脈から前潅流に続いてディスパーゼ10,000単位添加0.05%コラゲナーゼ液で潅流し、胆のう剥離後肝臓を摘出した。さらに摘出肝を37。Cに加温しながら、0.05%コラゲナーゼ液で10分間潅流した。これにより、肝小葉断片と多少の単離細胞が得られた。この組織断片浮遊液をメッシュ4.7-100のふるいで分別濾過した。どのようなメッシュサイズの組み合わせでも常にメシュ30ふるいに多量の肝小葉断片が詰まり貯留した。さらにコラゲナーゼ液を追加して、37℃で約10分間軽く振蕩することにより容易にふるいを通過した。この方法により、20-25kgのブタより約100gの単離肝細胞が肝潅流開始から約2時間で回収された。
  • ―最適装置条件の検討―
    和田 茂久, 井嶋 博之, 松下 琢, 船津 和守
    1996 年 25 巻 3 号 p. 678-682
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    In vitroの培養実験により、細胞の固定化保持率を低下させることなく、細胞の機能を向上させる多細管型PUF充填層内線速度は、65.1cm/min付近が最適であった。
    この人工肝臓装置内流量の最適化及び装置のスケールアップを行って、機能を向上させることで、肝不全ラットを用いたex vivoの実験においても、人工肝臓装置側循環ライン内のアンモニア濃度の低下や総ビリルビン値増加の抑制が認められた。
  • -抗体定量とその発光メカニズム-
    原本 浩隆, 吉見 靖男, 酒井 清孝
    1996 年 25 巻 3 号 p. 683-687
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    免疫抑制剤の至適投与量の指標となる抗原量や抗体量をリアルタイムで監視するシステムの開発が本研究の目的である。我々は、連続的かつ簡便に操作できる電気化学発光フローセルを試作し、免疫定量法への有効性を確認した。また、抗原抗体反応によって発光強度が変化するメカニズムの解明も試みた。分子量および荷電の異なる抗原にルミノールを標識し、水溶液および血漿混合水溶液中での抗体定量と、水溶液中での標識抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体によるHSA抗原定量を試みた。0~2.2mg/mlの抗HSA抗体、0~200μg/mlの抗免疫グロブリンG抗体の各抗体濃度範囲と、0~3.8μMのHSA抗原濃度範囲で、水溶液中の発光強度が増大した。血漿中でも抗体量に伴って、標識抗原の発光強度が増大した。本法は水溶液系および血漿系での抗原抗体定量に有効であること、さらに発光強度増大の原因は、抗原抗体反応によるルミノール発光の量子収率の増大にあることが示唆された。
  • 川村 明夫, 米川 元樹, 高橋 昌宏, 久木田 和丘, 目黒 順一, 玉置 透, 岡野 正裕, 柳田 尚之, 金子 紀, 鴨川 弘, 坂下 ...
    1996 年 25 巻 3 号 p. 688-691
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cryofiltration (CRYO)はヘパリンによる蛋白吸着である。二次フィルター内に吸着された蛋白はクライオジェルとして存在する。しかし、一定時間内の血漿の循環で形成されたクライオジェルがフィルターの膜孔を狭小化し、ついには閉塞させる。そこで、フィルター内の洗浄が必要になる。今回我々は2つの瀞法を検討した。A法はフィルター内圧が300mmHgに達した時点で200mlの生食で置換し、300mlの生食で洗浄を行い、B法は400mmHgに達した時点で50mlの生食による瀞を行った。置換液は用いなかった。洗浄は自動制御で行った。A法では4lの血漿循環でEDA (+) FNは73.2%除去され、B法では81.6%除去された。すなわち、B法では70%の循環血漿量でA法の100%にする効率を発揮し、この余裕分がCRYO操作時間の短縮につながった。一方、患者の体液量もA法は340mlの増加でB法は490m1の減少で、B法が有用であった。
  • 米川 元樹, 川村 明夫, 坂下 栄治
    1996 年 25 巻 3 号 p. 692-696
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cryofiltrationの目的はEDA (+) FNの除去にあるとの観点に立ち、Cryofiltrationを一歩進めてヘパリン化セルロースを吸着材(OHC-10)としたEDA (+) FN吸着カラムを開発した。ヒト血漿を用いたバッヂテストでは30℃における吸着率はEDA (+) FN69%、tFN14%とOH:C-10はEDA (+) FNを選択的かつ高率に吸着した。TP、Alb、IgG、IgA、IgM、Fbgなど他の主要蛋白の吸着は平均5%未満であった。EDA (+) FNの吸着特性は温度やEDA (+) FN濃度に左右されなかった。一方ATIIIの吸着率は65%と非常に高値となった。しかしながら、イヌを用いた体外循環実験では終了後凝固線溶異常もみられずATmは24時間後には元の値に戻っており、臨床応用に際し凝固線溶異常のある場合を除き問題はないと考えられた。以上から本吸着器はEDA (+) FNを選択的に吸着できる有用な治療器になり得るものと期待される。
  • 岡田 知也, 中尾 俊之
    1996 年 25 巻 3 号 p. 697-701
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    LDL吸着療法(LDL-A)を施行した高脂血症患者8名を対象に、LD-A治療後の血清脂質の動態(rebound)を観察した。またone-compartment modelを用いたコレステロール動態のモデル化を行い、Time average concentration (TAC)による治療効果の評価、及びLDL-Aの至適治療間隔を求める試みを行った。IDLA治療後、血清LDLは約7日後には前値に回復し、半数以上の症例で7日以降治療前値よりも上昇した。血清総コレステロール(TC)の14日間におけるTACは、LDI1A治療前のTCに比し、約15%低値だった。TCを240mg/dl以下に保つために、家族性高脂血症に対しては7~14日間隔、原発性ネフローゼ症候群に対しては7日間隔以内でLDL-Aを行う必要があると考えられた。各症例におけるLDL-Aの治療効果を評価する上で、治療後のreboundの観察が必要であり、そのモデル化は有用と考えられた。
  • 嘉悦 勲, 内田 熊男, 上田 真司, 田辺 孝司, 須谷 康一, 土居 功年, 川端 充孝, 深川 武紀
    1996 年 25 巻 3 号 p. 702-706
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    センサー部と薬物放出制御部より成る信号応答性薬物放出システムの開発を進めているが、その基本ユニットの1つとして、シリコン基板を加工、修飾したシステムを作製した。基板をリソグラフィ、エッチングで穿孔して、薬物貯蔵室および薬物注入拡散用のピッチ(溝)を作り、そのカバー蓋(ガラス製)にレーザー照射で薬物の放出孔を開け、さらにその孔に高分子電解質膜(分子センサー、分子ゲート)を塗布した。水中にデバイスを浸漬し、モデル薬物(メチレンブルー)の放出性をしらべた。チップ数、ピッチ幅、放出孔の孔数などの増加とともに放出は促進、加速された。また、溶媒のpHを変化させて分子ゲートを開閉させ、pH応答性の薬物放出制御を試みた。モデル薬物の放出は、pHが酸性下では促進され、アルカリ性下では抑制された。高分子電解質膜が分子センサー、分子ゲートとして作動しているものと推定される。
  • 阿部 一彦, 鈴木 憲, 岡野 光夫, 桜井 靖久, 堀江 俊伸
    1996 年 25 巻 3 号 p. 707-713
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PHEMA-PSt-PHEMA ABA型ブロック共重合体(HSB)表面及びBiomer表面に粘着した血小板の超微形態変化抑制能の違いについて画像処理解析装置(IA)を用いて定量的に評価した。すなわち、粘着血小板の超薄縦断面のTEM像をIAに入力したのち、5つの測定パラメータ(面積、幅、丸さの度合い、凹凸の度合い、1μm2当たりの貯蔵顆粒数)について計測し統計学的有意差検定を行った。その面積、幅、丸さの度合いはHSB表面とBiomer表面間で有意差は認められなかった。一方、凹凸の度合い、1μm2当たりの貯蔵顆粒数には有意差が認められた。以上のことから、HSB表面はBiomer表面に比べて粘着血小板の超微形態変化抑制能が優れていることが明らかになった。このことから、HSB表面はBiomer表面に比べて、粘着血小板の細胞骨格系の再配列を著しく抑制することが示唆された。
    〔略語:PHEMA, ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);PSt, ポリスチレン〕
  • 古川 克子, 牛田 多加志, 立石 哲也
    1996 年 25 巻 3 号 p. 714-719
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血管内皮細胞, 血管平滑筋細胞, 線維芽細胞自身のもつ組織形成能により血管様の階層構造を生体外で3次元的に再構築することが可能かどうか検討した. 3種類の血管壁細胞をコラーゲンゲル内で別々に3次元培養したところ, 内皮細胞は毛細血管様の構造を形成し, その枝を延ばすようにゲルの中を増殖して, ゲル表面でmonolayerを形成することがわかった. 一方, 平滑筋細胞と線維芽細胞では, 内皮細胞のように毛細血管様の構造は形成せず, それぞれの細胞が独立してランダムにゲル内で増殖することが確認された. そこで3種類の細胞をゲルに均一に混合し, 同様の培養を行ったところ, 培養開始初期にはゲルと培地との界面で多くの内皮細胞が観察された. しかし, 3週間目にはゲル表面の内皮細胞が減少することが観察された. よって血管を構成する3種類の細胞がゲル表面で共存している条件では内皮細胞はmonolayerを形成することが困難であることがわかった.
  • 川嶋 隆久, 上沢 修, 長谷川 伸之, 三澤 吉雄, 長谷川 嗣夫, 布施 勝生
    1996 年 25 巻 3 号 p. 720-722
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ゼラチン被覆処理Y型人工血管(Gelsoft®)を使用した腹部大動脈手術44症例の, 術後炎症反応とエンドトキシン値の変動について検討した。術後第7病日に37.5℃以上の発熱遷延例は11例あったが, 人工血管が原因と考えられたのは1例のみであった。第14病日にも発熱遷延を認めたのは3例で感染が原因であった。発熱遷延例(F群11例)と非遷延例(N群33例)の比較では, 最高体温はF群で経過中高かったが, 第14病日には解熱した。WBCはF群において低下遅延傾向が認められたが, 両群とも第7病日には正常域に低下した。CRPは両群に差なく変動したが, 術後第7, 14病日にも正常域に低下しなかった。エンドトキシン値は, 感染例4例を除く全例で, Toxicolor値のみが術直後より上昇, その後漸減したが, Endospecy値に上昇は認められなかった。Toxicolor反応物質が人工血管移植後上昇するが, エンドトキシンではなく, またエンドトキシンを術後発熱遷延の原因とするのは不適当と考える。
  • 井上 仁人, 四津 良平, 上田 敏彦, 三丸 敦洋, 佐野 美子, 川田 志明
    1996 年 25 巻 3 号 p. 723-727
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心房中隔欠損(ASD)に対し内視鏡下にstaplerによる非侵襲的経管的閉鎖実験をブタを用いて心拍動下に施行した。バルーン付内視鏡を無名静脈より挿入し正常な心房中隔を術野として内視鏡を固定した。ASDを作製した後、右心耳より挿入したtrocar catheterよりstaplerを術野に挿入し、ASDをチタン製stapleにて閉鎖した。4頭でASDは閉鎖可能で、この過程は内視鏡により観察された。摘出標本にて閉鎖を確認し得た。ASDの‘Transcatheter Staple Closure’は、実験装置の小型化改良により経皮的アプローチへ応用可能であると考えられた。
  • 計良 夏哉, 加藤 周司, 塚本 正樹, 山本 晃之, 里田 雅彦, 立川 弘孝, 中路 修平
    1996 年 25 巻 3 号 p. 728-732
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    自家腹水濾過濃縮再静注法の有用性が報告されてきたが, 濾過・濃縮にはダブルフィルトレイションモニターなどの高価な機械(装置)が必要で, 処理過程も煩雑で, 汎用されなかった. 機械式腹水処理法の, 3ポンプシステムと比較して, 改良した2ポンプシステムは, 蛋白回収率は高かったが, 2倍の処理時間を要した. そこで, 機械を使用しない落差式腹水処理法(ノンマシン腹水処理法)を開発した. 基礎実験では, 血漿蛋白濃度3.0g/dl以下, Ht0.5%の血性の牛血漿でも処理可能であった. 落差式腹水処理法と2ポンプシステムの比較では, 蛋白回収率に差はなく, 処理時間は落差式腹水処理法では1/2であった. 臨床応用では, 薬剤抵抗性の難治性腹水症例, 19例に, 落差式腹水処理法と2ポンプシステムを, 31回ずつ施行した. 落差式腹水処理法は, 2ポンプシステムより蛋白回収率は高く, 処理時間も短縮でき, 簡便性のみならず, 処理能力においてもその有用性が実証された.
  • ―血管壁再構築過程の追跡―
    石橋 和幸, 川副 浩平, 松田 武久
    1996 年 25 巻 3 号 p. 733-737
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体血管類似の階層型ハイブリッド人工血管を開発し、生体内における組織化を細胞の動的挙動および細胞外マトリックスの再構築過程から検討した。線維芽細胞層、平滑筋細胞層、内皮細胞層の三層構造をin vitroでダクロン製入工血管(内径4mm、長さ6cm)上に逐次的に階層構築した。作製したグラフトを細胞を採取した同一犬(17頭)の総頚動脈に移植した(2~23週間)。17本中開存していた15本のグラフトはすべて内腔面は内皮細胞で完全被覆されていた。移植後12週で、細胞レベルおよび細胞分子レベルでほぼ生体血管同様の立体再構築を認めた。移植後23週では、吻合部肥厚も認めず、より高度に緻密化した血管壁構造を認めた。3種類の血管壁細胞を用いた階層型ハイブリッド人工血管は過度の内膜肥厚を起こすことなく血管壁再構築を大幅に促進すると考えられる。
  • 三田村 好矩
    1996 年 25 巻 3 号 p. 738-743
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    電磁駆動式完全埋込型人工心臓の実現の障害となっている要因としてアクチュエータを取り上げ, その解決, 回避法の立場より, 我国における完全埋込型人工心臓(拍動流, 定常流)を紹介した. また我々が開発しているボールネジ駆動拍動性補助ポンプが, 腹部に植え込み可能で, 21%の効率で6L/minの拍出が可能, 6カ月の耐久性があることを示した. さらに, 1)高出力, 高効率, 小型アクチュエータの開発, 2)抗血栓性ポンプの開発, 3)耐久性人工心臓の開発, 4)体内エネルギー技術の開発, 5)人工心臓研究の国家プロジェクトと民間との協力が人工心臓開発に必要であることを明らかにした.
  • 山家 智之, 仁田 新一, 永沼 滋, 薗部 太郎, 柿沼 義人, 秋保 洋, 小林 信一, 南家 俊介, 福寿 岳雄, 田林 晄一, 松木 ...
    1996 年 25 巻 3 号 p. 744-748
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    より付加価値のある第2世代の補助人工心臓(VAS)の開発を目指して、生体にない高周波の血流波形を発生する振動流ポンプ(VFP)を用いた埋め込み型VASを開発した。システムは電磁駆動型のVFP本体と、アモルファスを応用した経皮的電力輸送システム等よりなる体内埋め込み部と、体外の電力輸送コイル及び制御用ユニットより構成されている。模擬回路による検討において、101/minまでの拍出が可能であり、動物実験においては振動流ポンプの駆動周波数を変化させることにより、臓器血流配分が変化することが観察され、治療用機器としての興味深い側面が観察された。また慢性動物実験における左心補助実験では、十分な左心補助効果とともに、自律神経機能に影響を与えていることが示唆されていた。以上より本システムは、VASとして十分な基本性能を保持しているのみならず、他の臓器の治療機器として興味深い側面を保持していることが判明した。
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