日本臨床救急医学会雑誌
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27 巻, 5 号
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会告
原著
  • 宮﨑 寛典
    原稿種別: 原著
    2024 年27 巻5 号 p. 595-605
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    背景:救急車要請件数は,全国的に年々増加傾向である。これら問題の解決には,救急車要請需要への影響要因を特定する必要がある。本研究では,各自治体の社会経済要因がその市町の救急車要請需要に影響すると仮定し,重回帰分析を行った。方法:対象地域は愛知県に位置する知多半島地域とし,各自治体の救急車要請件数を目的変数とした。また,2010〜2020年における地域内市町の人口密度,性比,世帯人員,社会保障費,労働人口を説明変数とした。結果:重回帰モデルの自由度調整済み決定係数R2=0.843,p<0.05となり有意であった。また,二乗平均平方根誤差RMSE=539.06,平均絶対誤差MAE=484.60,重み付き絶対誤差率WAPE=18.53(%)と算出された。なお,説明変数のうち,人口密度,性比,世帯人員,労働人口が独立して有意に影響していた。結論:本研究では,社会経済要因から救急車要請の発生を推定可能であることが示唆された。

  • 清水 鉄也, 上馬場 真, 諸江 雄太
    原稿種別: 原著
    2024 年27 巻5 号 p. 606-612
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:水タバコに関連した急性一酸化炭素(CO)中毒が疑われる救急要請の発生状況を明らかにする。方法:2018年1月〜2023年6月までに東京消防庁第三消防方面管内で水タバコ吸引後の者および水タバコカフェ勤務中の者に対する救急要請を対象とした。活動記録より発症時の症状,推定吸引時間などを,さらに三次救急医療機関へ搬送された者のカルボキシヘモグロビン(COHb)濃度を集計した。結果:64例が該当した。多くが20歳台であり,症状は意識消失や嘔吐が多く,推定吸引時間30分以下で発症することがあった。軽症者が多数であるが重症以上も2例あった。三次救急医療機関へ搬送された3例の平均COHb濃度は18.5%であった。結論:水タバコ関連の急性CO中毒が疑われる救急要請は月に1例程度発生していた。救急医療関係者はCO中毒見逃しの危険性を認識し,水タバコ関連の救急要請では急性CO中毒を疑った対応を行うべきである。

  • 牧野 夏子, 小川 謙, 菅原 美樹, 中村 惠子
    原稿種別: 原著
    2024 年27 巻5 号 p. 613-624
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:重症外傷患者の看護に関する救急・集中治療領域の中堅看護師および熟練看護師の学習ニーズを明らかにする。方法:救急・集中治療領域の中堅看護師10名および熟練看護師9名を対象に半構成的面接を行った。面接は重症外傷患者の看護に関する学習ニーズに関してオンライン面接を行い,分析は質的記述的研究法を用いた。結果:重症外傷患者の看護に関する学習ニーズは,中堅看護師は【外傷看護の基盤となる外傷初期看護ガイドライン(JNTECTM)などの的確な理解】などの7カテゴリー,熟練看護師は【事例の振り返りによる経験の共有と推進】などの7カテゴリーが生成された。結論:重症外傷患者の看護に関する中堅看護師および熟練看護師の学習ニーズは,外傷医学の知識の習得や事例検討のニーズなど共通の特徴があったものの,看護師の経験や資格の有無によりニーズの内容に相違があり,対象の経験を踏まえた外傷看護教育の構築の必要性が示唆された。

  • 宮崎 善史, 岩瀬 史明, 柳沢 政彦, 池田 督司
    原稿種別: 原著
    2024 年27 巻5 号 p. 625-629
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:COVID-19流行前後における院外心停止(OHCA)症例へのbystander CPRの施行率を調べること。方法:2018年4月1日〜2020年3月31日の2年間をCOVID-19流行前群,2020年4月1日〜2022年3月31日の2年間をCOVID-19流行後群として比較した。対象は当院へ救急搬送されたOHCA症例で,一般市民(非医療関係者)が最初に接触したものとした。結果:COVID-19流行前群では610例のOHCA症例に対しbystander CPRの施行率は40.8%であった。一方,COVID-19流行後群では623例に対し43.8%であり,流行前後で有意差を認めなかった。また,心停止の目撃があった症例に限っても同様にCOVID-19流行前後で有意差を認めなかった。結論:COVID-19の流行がbystander CPRの施行率に及ぼす影響は小さいと考えられた。

  • 佐藤 聖子, 白井 邦博, 石川 倫子, 小林 智行, 村上 博基, 長谷川 佳奈, 平田 淳一
    原稿種別: 原著
    2024 年27 巻5 号 p. 630-635
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:重症COVID-19患者のうち,気胸/縦隔気腫(PTX/PMD)を発症した背景,検査所見,治療などの臨床的特徴について検討し,発症に関連する入院時の項目について検討した。方法:高流量鼻カヌラ酸素療法(HFNC)または人工呼吸管理を要した119例を対象とし,PTX/PMD発症の有無で比較した後方視的観察研究である。結果:17例(14.3%)がPTX/PMDを発症した。入院時の重症度に差はなかったが,PTX/PMD群では糖尿病例が高率であり,検査値ではHbA1cとLDが有意に高かった。治療では,筋弛緩薬の投与率や腹臥位療法の施行率が有意に高率であった。また,入院後に治療した咳嗽が有意に多かった。結語:糖尿病の既往やHbA1c,LDの高値は,PTX/PMDの発生に関連する可能性があった。また,PTX/PMD群では非発症群と比較して,入院後からPTX/PMD発症までに,筋弛緩薬や腹臥位などの治療介入を要した入院後増悪例が多かった。

調査・報告
  • 切石 卓見, 山本 麻未, 許 智栄, 有吉 孝一
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年27 巻5 号 p. 636-643
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    ERにおいてグリーフケアチームを発足し,残された家族に対して電話によるフォローアップを行ってきた。電話対応は126件(49.6%)で,複雑性悲嘆と考えられたものは23件(9.1%)であった。電話によるフォローアップしていくなかで,家族対応への困難さ,カルテ記載の不足,複雑性悲嘆の判断の相違についての3つの課題が抽出された。これらに対して,グリーフケア看護師を対象とした勉強会,救急看護師を対象とした勉強会,BGQの導入の対策を講じた。その結果,家族の反応に関するカルテ記載が増え,電話によるフォローアップを行う際の家族の状況に関する情報収集が容易になり,さらに悲嘆プロセスに対する知識を学び,コミュニケーション技術の訓練をすることで残された家族に電話かけを行うことへの心理的負担の軽減につながった。また,BGQを導入することにより複雑性悲嘆の判断を統一することができた。しかし,これらの取り組みにより今後への課題も浮き彫りになった。

  • 増山 純二, 苑田 裕樹, 渡邉 岳人, 柳田 和之, 本田 稔, 梅木 雄大, 新井 祐介, 松本 隆, 井手 宏直, 谷口 誠太
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年27 巻5 号 p. 644-652
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:患者急変対応フローチャートを基にした研修設計を行い,研修の有用性について検討する。方法:患者急変対応フローチャートを作成したうえで研修の課題分析図を作り,eラーニング(座学,CBL;case-based learning)と集合教育(SBL;simulation-based learning)のブレンディッドラーニングの研修設計を行った。クリニカルラダーⅡの看護師(A看護系大学関連病院)20名を対象に研修を実施し,研修前後に患者急変対応の実践力チェックリスト(自己評価;リッカート尺度4件法)を用いて調査した。結果:チェックリスト(自己評価)の研修後の結果,研修前と比較して,「一次評価の実践」「問診」「生理学的徴候の分析」「疾患予測」「緊急度の判断」「救急処置の選択」「緊急検査の選択」「SBAR報告」の項目において有意に上昇した。結論:患者急変対応フローチャートを基に設計した研修は,患者急変対応の問題解決思考のスキーマが形成され,研修の有用性が示唆された。

  • 野添 めぐみ, 濵本 健作, 磯﨑 千尋, 長橋 和希, 渡部 晋一, 石原 哲
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年27 巻5 号 p. 653-660
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    近年,救急救命士を病院内で雇用する医療機関が増加しており,救急救命士にとって医療機関は就職先の一つとして考えられるようになった。また,2021年に救急救命士法が改正され,救急救命士による医療機関内(主に救急外来)での救急救命処置の実施が可能となり,病院で働く救急救命士の需要はさらに拡大することと思われる。しかし,現状ではその業務内容に対する他職種の理解は乏しく教育体制の確立もなされていない。そこで今回,当院における救急救命士業務を検討し,教育体制の整備を行う必要があると考えた。本研究では当院に在籍している救急救命士,関係する医師および看護師を対象に無記名アンケート方式による意識調査を実施した。その結果を解析し,当院の救急救命士用のクリニカルラダーの作成,導入に向け整備を行ったので報告する。

  • 桑原 雅恵, 村井 毅, 樋口 照
    原稿種別: 調査・報告
    2024 年27 巻5 号 p. 661-668
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:医師と救急救命士へのインタビューを通し,救急ワークステーションにおいて看護師が同乗し活動する意義と求められる役割について明らかにする。方法:救命救急医5名,救急救命士5名に対し,半構造化面接を実施。質的帰納的研究デザインとし,インタビュー内容をコード化し,サブカテゴリー,カテゴリー化し分析した。結果:医師によるワークステーションにおける看護師の同乗についての意義,役割は,101コード,11サブカテゴリーから,「医師が治療に専念するうえで必要な存在」「院内外を問わない看護を提供」「モニタリング力と推察力への期待」「自施設との連携および他職種間調整」の4カテゴリーを抽出。救急救命士では,69コード,13サブカテゴリーから「現場活動が円滑になる存在」「安心感を与える存在」「家族ケアのロールモデル」「看護師の意見で視野が広がる」「自施設との連携および他職種や他院とのコーディネート」「看護師の知識,技術を学びたい」の6カテゴリーを抽出した。結論:ワークステーションで看護師が求められるものは多く,同乗し活動することには意義があり,重要な役割を果たしていることが明らかになった。

症例・事例報告
  • 古谷 毅一郎, 小松 直人, 田中 良知, 松谷 和奈, 角 真徳, 山下 紗弥, 張 良実, 鹿戸 佳代子, 坪内 弘明, 荻田 和秀
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年27 巻5 号 p. 669-677
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    重症COVID-19感染妊婦の集学的な緊急帝王切開準備/ 実施時の工夫について紹介する。症例1:感染妊婦が呼吸不全で緊急帝王切開を決定した。手術室準備に時間を要したため病棟で挿管した。同209分後,緊急帝王切開で児娩出し母児ともに救命したが,長時間の母体鎮静に伴うsleeping babyで児は退室できず,高温多湿下での手術継続を強いられた。この経験から感染妊婦緊急帝王切開準備の定型化・役割分担の明確化を各科と協議し,迅速な緊急手術準備体制を構築した。症例2:感染妊婦が呼吸不全で緊急帝王切開を決定し22分後に出棟,手術室で挿管を実施し,同1分42秒後(手術決定28分後)児娩出した。児は速やかに退室し,通常室温下で手術継続し得た。感染妊婦の迅速な緊急帝王切開実施には,上記準備に加え出生児の鎮静など産科特有の問題を考慮した体制構築が重要である。本経験は,隔離を要する将来の新興感染症到来時の緊急帝王切開の一助となり得る。

  • 岩本 博司, 濱口 満英, 一ノ橋 紘平, 植嶋 利文
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年27 巻5 号 p. 678-681
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    脊髄硬膜外膿瘍は比較的まれな疾患であるが,対処が遅れると不可逆的な麻痺を残す重篤な疾患である。多くは初診時には診断されないが,救急外来を担当する救急医は臨床経過や炎症反応上昇などから疑いをもつことが大切である。40歳代,男性が後頸部痛を自覚し,近医を受診され内服薬とトリガーポイント注射にて経過観察となる。7日後に頸部神経根症状と頸椎椎間板ヘルニアの疑いにて経過観察となるが,8日後に左下肢麻痺と尿閉のため当院紹介となり頸髄硬膜外膿瘍の診断にて入院加療となる。抗菌薬による保存的加療となるが,左化膿性胸鎖関節炎から前縦隔内膿瘍・左胸壁膿瘍を併発したため,入院6病日に外科的ドレナージを施行し他部位への感染は認めず全身状態は改善した。発熱と炎症所見を伴う後頸部痛では脊髄硬膜外膿瘍を疑い,非侵襲的で早期診断に有用なMRI検査を行うことが重要である。診断後は,敗血症や髄膜炎などの合併症を意識して治療を行う必要がある。

  • 冨岡 卓哉, 鈴木 剛, 武藤 憲哉, 大山 亜紗美, 三澤 友誉, 岩渕 雅洋, 伊関 憲
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年27 巻5 号 p. 682-686
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    牛外傷による顔面外傷で緊急気管挿管を必要とした2症例を経験した。症例1:77歳,男性。牛に顔面を突かれ来院した。両側眼瞼の腫脹が強く,咬合障害,開口障害を認めた。CT検査で上顎骨骨折,下顎骨骨折を認めた。発語可能であり入院としたが,夜間に気道緊急に陥った。経口気管挿管困難であり,輪状甲状靱帯から穿刺法により気道確保を行った。 第2病日に再度McGRATH TM を用いて気管挿管された。第7病日に気管切開術を施行し,第14病日にICUを退室した。症例2:80歳,女性。牛に顔面を突かれ来院した。発語は可能であったが,口腔内出血が持続していた。CT検査で下顎骨骨折,鼻骨骨折,左顔面動脈損傷,咽頭血腫による中咽頭圧排を認めた。C-MAC ® とGum Elastic Bougieを用いて気管挿管を行った。第8病日に気管切開術を施行し,第15病日にICUを退室した。牛の頭部による顔面外傷はpanfacial fracturesとなる可能性があり,difficult airway management(DAM)が必要である。

資料
  • 大江 理英, 豊島 美樹, 杉本 吉恵
    原稿種別: 資料
    2024 年27 巻5 号 p. 687-696
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー

    目的:救急看護師の自律性を育成する支援内容を明らかにする。方法:救急看護師と救急看護経験を有する大学教員計6名へのフォーカスグループインタビュー内容から救急看護師の自律性を育成する支援内容を質的記述的に分析した。結果:救急看護師の自律性を育成する支援内容は【基盤となる知識と技術の習得を促す】【学びにつながるつながりを作る】【新たな視点を得るための振り返り】などの8カテゴリ,促進要因は【リフレクションへの理解があること】【ファシリテートできる人材】の2カテゴリ,阻害要因は【日常の看護に思考がみえない】【看護師間の自律性の認識が違う】【業務中心の教育方針】の3カテゴリが抽出された。 結論:救急看護師の自律性を育成する支援では,救急看護の意味や価値を認識させる内容を含むことが必要である。とくに,リフレクションは日常業務を看護的視点に再構成し,その実践から新たな知識や観点を獲得できるため重要である。

編集後記
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