救急医療システムの地域較差を明らかにする目的で,救急救命士および救急隊員を対象に質問紙調査を実施した。救急医療システムの構造に起因し,搬送先選定に影響すると考える“医療機関関連要因”・“システム関連要因”・“地域環境的要因”・“救急車乗務員関連要因”の4要因を本研究の指標とした。質問紙調査から1,178名の有効回答(回収率70.4%,有効回答率98%)が得られ,職種および管轄地域の人口に関して,群間の回答差をχ2検定した。その結果,医療機関の受け入れ態勢などの“医療機関関連要因”や“情報伝達システム”などの“システム関連要因”,学習への自覚や機会に関する“救急車乗務員関連要因”で職種間および人口群間でそれぞれ回答に有意差があった。また,残差分析の結果,小・中規模都市では救急医療機関の段階的機能分担と情報伝達システムが未整備で,大規模都市では救急医療機関の量的不足と機能分担の非有効活用が示唆された。
抄録全体を表示