日本消化器がん検診学会雑誌
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59 巻, 6 号
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巻頭言
総説
  • 祖父江 友孝
    2021 年 59 巻 6 号 p. 496-508
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

    がん検診に係る疫学研究は,有効な検診かどうかを判断する「評価(アセスメント)」と,正しく実施されているかどうかを判断する「管理(マネジメント)」のそれぞれの段階で,科学的根拠を生み出すために実施される。疫学研究の質は,偶然性,バイアス,交絡をいかに制御したかで決定される。これらを制御するには,偶然性とバイアスは研究デザインで,交絡は,研究デザインと解析の段階で対応する必要がある。

    がん検診の有効性は,がん検診が対象とするがんの死亡率減少効果で評価することが原則であり,生存率向上効果は種々のバイアスの影響を受ける。偶然性,バイアス,交絡をもっともよく制御できる方法が,個人単位のランダム割付を行った比較試験であるが,観察的な評価方法として,症例対照研究やコホート研究が用いられる。有害性(不利益)として過剰診断の重要性が指摘されているが,定量的に評価する方法論が確立していない。がん検診の管理においては,精度管理指標として,精検受診率,要精検率,がん発見率が用いられるが,今後は,感度,特異度,がん有病率を精度管理指標に用いることが期待される。

  • 満崎 克彦, 福永 久美, 野村 美緒子, 坂本 祐二, 管 守隆
    2021 年 59 巻 6 号 p. 509-523
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

    大腸CT検査は10 mm以上の大腸腫瘍の検出能は内視鏡検査に劣らない精度を有し,低侵襲で安全であること,画像の客観性・再現性から標準化できること,多数の対象者を短時間で検査可能なことから検診に適した検査である。大腸CT検査は便潜血陽性者の精密検査として期待されるが,前処置の多様化,放射線科医不足などの課題も多い。大腸内視鏡は感度・特異度が最も高い検査法であり,大腸内視鏡の検診への導入によって死亡率減少への大きな貢献が期待できる。ただし,安全性や質の担保,内視鏡キャパシティの確保,サーベイランス期間,費用対効果,検査のアドヒアランスなどの課題がある。

    日本における大腸がん死亡率を減少させるためには,便潜血検査免疫法(fecal immunochemical test,以下FIT)を中心に行われてきた大腸がん検診システムに画像診断を効率よく介入させ,実効性のある体系的な検診システムを構築することが大切である。また,大腸がん検診受診率やFITによる精検受診率の更なる向上を目指し,各検査の精度管理を徹底することも重要である。

原著
  • 河端 秀明, 本井 重博, 山口 勝利, 上田 悠揮, 岡崎 裕二, 人見 美鈴
    2021 年 59 巻 6 号 p. 524-530
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    [早期公開] 公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    【目的】上部内視鏡検診におけるCOVID-19感染を考慮した検温,問診および抗原検査による院内感染予防策の有用性を明らかにする。

    【対象と方法】2020年7月20日から2020年8月5日まで当院人間ドックで上部内視鏡検査を受診した119名に対し,検査前に検温,問診およびCOVID-19抗原検査を施行した。内視鏡スタッフは勤務中個人防護具(PPE)の装着を徹底し,調査期間終了後にRT-PCR検査を施行した。

    【結果】当日37度以上の発熱を1名(37.1℃),軽微な感冒症状を5名に認めたが,抗原検査は症状を有した6名を含め115名で陰性,他の4名は判定保留でありreverse-transcription PCR(RT-PCR)検査で陰性を確認した。全受診者に上部内視鏡検査を行い,2例の早期胃癌を診断した。調査期間終了直後の全内視鏡スタッフ29名に対するRT-PCRはすべて陰性であった。

    【結語】COVID-19時代の上部内視鏡検診において,本手法は感染患者を高率かつ効率的に除外することが可能である。PPEの徹底や感染予防教育などを加えた十分な感染予防策のもとで,内視鏡検診を継続すべきである。

  • 田近 正洋, 正木 久典
    2021 年 59 巻 6 号 p. 531-545
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    [早期公開] 公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】大腸内視鏡検査を行うにあたり腸管を洗浄する前処置は重要な位置を占めるが,ときに偶発症を招くこともある。より確実で安全な前処置を行うため現状の把握は重要である。

    【対象と方法】大腸内視鏡検査における前処置に係わる全国の医師,看護師,技師を対象に各施設における前処置の方法や前処置に対する意識に関してWebを介してアンケート調査を行った。

    【結果】適格基準を満たした医師200名,看護師70名,技師60名を解析した。腸管洗浄剤の服用リスクについて,医師で100%,看護師,技師では約90%で周知され,患者情報の問診はいずれかの職種でほぼ100%行われていた。検査前に遠位大腸に狭窄が疑われた場合,下剤内服後や腸管洗浄液服用後に排便がなかった場合の対応は,ほぼ全ての職種で,状況に応じて対応されていたが,マニュアル化されているとの回答は職種間でバラツキがあった。特に自宅飲用での対応時にマニュアルがないとの回答が医師で4割,看護師,技師で2割であり,リスクの点から早急な対応が必要であると考えられた。

    【結語】医療従事者全員が前処置のリスクを再認識し,患者情報を共有することで起こりうる事態に備えることが重要である。

  • 森川 敬斗, 三宅 悠司, 北野 琢也, 池田 雄士, 臼井 和美, 兵藤 康弘, 櫻井 勝則, 小川 武, 野口 潤, 北井 孝明
    2021 年 59 巻 6 号 p. 546-555
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    [早期公開] 公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

    【背景】大腸CT検査のCT colonography reporting and data system評価においてポリープの大きさの正確な計測は重要である。本研究ではウィンドウ幅及び撮影条件と計測値の関係について検討した。

    【対象と方法】5 mm,7 mm,10 mmの模擬ポリープを画像Standard Deviation(SD)8とSD30の2通りの撮影条件にて撮影した。得られたデータからMulti Planar Reconstruction画像を構築し,ウィンドウ幅の値を300 HU,600 HU,900 HU,1,200 HU,1,500 HUと変化させて模擬ポリープを独立した放射線技師10名で計測した。模擬ポリープの計測値が既知のサイズと±5%以内である場合を適正なウィンドウ幅とした。

    【結果】ウィンドウ幅が大きくなるほど計測値も大きくなる相関関係を認めた。また,模擬ポリープの高さよりも直径の方がウィンドウ幅による計測値の変動が大きかった。画像SDによる比較ではSD30の方が計測者間のばらつきが大きく,ウィンドウ幅による計測値の変動も大きかった。適正なウィンドウ幅は5 mmの模擬ポリープで600~1,500 HU,7 mmで600~1,000 HU,10 mmで800~1,500 HUであり,すべてを満たすウィンドウ幅は800~1,000 HUであった。

    【結語】大腸CT検査において正確にポリープの大きさを計測するためにはウィンドウ条件を適切に設定する必要があり,その適正ウィンドウ幅は800~1,000 HUであることが示唆された。

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