日本消化器がん検診学会雑誌
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48 巻, 4 号
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会長講演
総説
  • 草野 健, 渋江 正, 瀬戸山 史郎, 西俣 寿人, 中原 信昭, 伊東 祐治, 有馬 貞三, 納 利一, 鮫島 由規則, 松元 涼, 林 ...
    2010 年 48 巻 4 号 p. 404-418
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    がん死亡減少を目的とするがん検診の遂行にあたっては, 効率や有効性などの追求だけでなく, 受診率拡大が必須となる。
    受診者数減少が継続している胃がん検診受診の動向を鹿児島県の成績を中心に分析すると, 地域胃集検では殆どの年代で減少し, 職域で若干増加しているが, いずれも初回受診者は1割未満と受診者の固定化が著明である。しかし, 行政の報告による地域胃集検受診率は上昇傾向にあるなど, 行政も実態の全体像は把握できていない。また, 受診率拡大のために各市町村は多彩な受診勧奨法を実施しているが, 普遍的有効性を持つ勧奨法は認められない。
    一方, 施設健診として実施される任意型検診は増加傾向にあるが, 多くの検診機関以外の医療機関でも実施され, その実態把握は困難である。
    受診率拡大方策は, 画一的ではなく対象集団特性を踏まえての多彩な方式が採用される必要があるが, そのために先ず, 正確な受診動向実態把握が不可欠である。
  • 石原 立, 花房 正雄
    2010 年 48 巻 4 号 p. 419-428
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    食道癌の早期発見のためにヨード染色が主に用いられてきたが, 染色後の胸痛などの症状が問題であった。一方, 狭帯域光観察(NBI:Narrow band imaging)は狭帯域化した光を照射することにより, 染色液を用いずに粘膜表層を強調表示でき, 通常内視鏡では視認困難であった食道表在癌の発見を可能とした。これまでにもNBIの食道癌スクリーニングにおける正診率は通常内視鏡よりも高く, ヨード染色に匹敵するものであると報告されている。今回我々は食道癌スクリーニングにおけるNBIの有用性について, 内視鏡医の経験度別に検討した。経験の長い内視鏡医の食道癌診断における感度はヨード染色と同等であったが, 経験の短い内視鏡医の感度は53%とヨード染色に比べ低かった。つまりある程度経験を積めば, NBIは食道癌スクリーニングに用いることができる。しかし経験の浅い段階では, NBIの食道癌検出における感度は十分でなく, ヨード染色の併用が必要と考えられた。
原著
  • 東山 佳代, 山崎 秀男
    2010 年 48 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    1996年から2002年の間に, 当センターで実施した胃がん検診受診者431,899人と大腸がん検診受診者213,978人を大阪府がん登録ファイルと照合することにより, 2003年までの胃・直腸・結腸がん罹患患者を把握した。検診で「異常なし(精検不要)」と判定されたにかかわらず, 1年以内に新たにがんの罹患が確認された症例(偽陰性例)を把握して感度・特異度をもとめ, 検診精度を評価した。
    胃がん検診の精度管理指標は, 感度93.2%, 特異度90.7%, 偽陽性率9.3%, 偽陰性率6.8%であった。
    大腸がん検診の精度管理指標は, 感度96.5%, 特異度96.0%, 偽陽性率4.0%, 偽陰率3.5%であった。
    がん検診と地域がん登録との照合は, がん検診ファイルが電子化され地域がん登録が整備されている地域では, ルチン作業として実行可能である。今回は検診機関の検診ファイルを使用したが, 今後は市町村や職域など検診実施主体の持つ検診ファイルを都道府県単位で収集し, がん登録との照合による評価をルチン作業として実施するべきである。
  • 松本 吏弘
    2010 年 48 巻 4 号 p. 436-441
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    【目的】胃内視鏡検診による胃癌死亡率減少効果について検討した。
    【方法】X線検診群1,425例, 内視鏡検診群2,264例, 検診未受診群6,284例に3区分し, 性別, 年齢をマッチングさせた3群を2008年12月まで追跡した。胃癌死をエンドポイントとした場合の3群それぞれの累積生存率を算出し解析を行い, 検診内容別の死亡に対するハザード比を求めた。
    【成績】胃癌発症者40例(X線群18例, 内視鏡群12例, 未受診群10例)において胃癌死した症例はX線群1例, 内視鏡群1例, 未受診群8例であった。累積生存率は, X線群と内視鏡群では有意差はみられなかったが, これら2群と未受診群においては有意に未受診群の生存率が低い結果となった(p=.0073)。未受診群は内視鏡群よりも8倍胃癌死亡の危険が高かった(p=.0499)。
    【結論】内視鏡検診は胃癌死亡率減少効果を認め, X線検診に劣っていない可能性が示唆された。
症例報告
  • 宮崎 武士, 大久保 秀, 右田 健治, 赤澤 武, 前川 進, 芹川 習, 西東 龍一, 石原 悦子, 佐藤 敏美, 三原 修一
    2010 年 48 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    人間ドックを契機に発見された胃体上部前壁陥凹型胃癌を経験したので報告する。症例は50歳代女性。新・胃X線撮影法(直接・間接)ガイドラインに準じて行ったスクリーニング胃X線検査において, 胃体上部前壁にバリウム斑と周囲の透亮像を基準撮影画像にて認識した。
    その後行った追加撮影では, 二重造影I法, II法の撮影手技に加え, フトンの厚さを変化させた腹臥位圧迫, 撮影角度を変化させた側面位の撮影など, 様々な撮影手技を組み合わせている。
    最終的に本症例は, 追加撮影により病変の示現度が向上し, スクリーニング胃X線検査の段階において質的診断が可能であった。今後も継続して新・胃X線撮影法(直接・間接)ガイドラインに即した撮影手技の習熟と病理組織構築に基づいたX線形態診断学の熟知に努めることが最も重要であると思われる。
  • 赤羽 たけみ, 福居 健一, 美登路 昭, 白井 康代, 片岡 智栄子, 榎本 泰典, 野々村 昭孝, 大石 元
    2010 年 48 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    膵Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)は稀な膵腫瘍として知られている。健診で発見されたSPNを経験したので報告する。症例は30歳女性。健診の腹部超音波検査で膵尾部に径4cm大の境界明瞭で内部が不均一な円形の低エコー腫瘤を指摘された。超音波内視鏡検査(EUS)で嚢胞部分と充実性部分が混在している腫瘤が明瞭に描出された。CT, MRIでも同様の所見であり, 膵solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断し脾合併膵体尾部切除術を施行した。切除標本の肉眼所見は被膜を有し充実部分と出血による嚢胞部分が混在する球形の腫瘍で病理組織所見からSPNと診断した。本症例は無症状で健診が発見の契機となった。無症状の若年女性でSPNに特徴的な画像所見を呈したため術前診断が容易であったが, EUSがとくに質的診断に有用であった。
地方会抄録
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