日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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61 巻, 2 号
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巻頭言
会長講演
  • 小川 眞広
    2023 年 61 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    これまで約30年以上にわたり超音波検査に携わった経験より, 現在に至るまでの超音波診断装置の発展の歴史とこれに伴う超音波診断の検査体系の変革について述べこれからの診断装置に求められる私見を加えた。超音波診断装置と周辺機器の発展により超音波検査の客観性は上昇しており, 腹部超音波検診判定マニュアルの導入と改訂により超音波所見と判定区分の客観性は飛躍的に上昇した。これらの背景を考えると“信用のある超音波検診”に成り得るための準備はできつつある。今後本マニュアルが広く検診施設に普及・徹底することが精度管理上の鍵であると考えられる。

  • 中島 滋美
    2023 年 61 巻 2 号 p. 141-152
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    Helicobacter pylori(以下H. pylori)の発見から背景胃粘膜診断までの歴史と胃がん検診の将来展望を概説した。H. pyloriが最初に報告されたのは1983年で, 前庭部型急性胃粘膜病変(AGML)がH. pyloriの急性感染症と証明されたのは1995年であった。1996年改訂シドニー分類により胃生検組織の病理診断が国際的に統一された。1997年H. pylori感染と胃がんとの関係や除菌による胃がん予防の可能性が指摘された。1999年筆者らは胃X線検査によるH. pylori感染診断を報告し, 2007年に背景胃粘膜診断を考慮した胃がん検診を提案した。現在H. pylori未感染正常胃の人の検診間隔を延ばせるかに関して大規模研究が実施されている。今後H. pyloriの未感染者が増加し内視鏡検診の効率が悪くなるので, 胃X線検査やABC法による一次検診後に二次内視鏡検査を実施する方が効率がよい。地域の実情により各種一次検診を組み合わせるとよい。胃X線検診では従来法より胃炎検診の方が胃がん発見感度・特異度が高く(>90%), 胃がん検診を胃炎検診に置き換える方がよい。

総説
  • 久津見 弘
    2023 年 61 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    臨床研究を取り巻く規制環境は大きく変化したが, 臨床現場に十分浸透しているとは言い難い。そこで今回, 研究を実施するにあたり知っておくべき規制につきその改正点を中心に整理した。観察研究におけるカルテ情報の研究への活用, 他機関への情報提供は, 「個人情報保護法」上は「本人同意が必要であるが, 学術例外あるいは公衆衛生例外が適用されオプトアウトで実施が可能である。また, 今回改正された「生命・医学系指針」では, 倫理審査委員会が独立した組織となり, 研究責任者が研究の最終責任者となったことで多機関共同研究の一括審査がスムースに進められるようになった。また, 研究協力機関が新しく定義され, 多機関共同研究においてより多くの機関から試料や情報が収集しやすくなった。

  • 萩原 廣明, 茂木 文孝
    2023 年 61 巻 2 号 p. 161-175
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    群馬県の胃がん検診の現況と胃内視鏡検診の導入状況を報告した。群馬県では, 県内35自治体のうち26自治体ですでに胃内視鏡検診が導入されており, 26自治体の人口は県人口の96%であった。胃がん検診ガイドライン改訂前に導入した自治体は, 対象が40歳以上, 逐年受診方式で, ガイドライン改訂以降に導入した自治体は, 対象が50歳以上, 隔年受診方式で実施されていた。検診参加施設は各自治体の所属する医師会の専門委員会で認定されており, 画像のダブルチェックも各自治体の現状に合わせた方法で行われていた。2018年度の群馬県の対策型胃がん検診受診者は102,456人で, うち69,763人(68%)が胃内視鏡検診を選択していた。

経験
  • 馬嶋 健一郎, 村木 洋介
    2023 年 61 巻 2 号 p. 176-183
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    【背景】質の高い大腸内視鏡検査の指標に, 十分な抜去時間がある。本検討は, 6分以上の抜去時間推奨と抜去時間のレポート記載を行った場合の, 抜去時間やポリープ発見率への影響を調査した。

    【対象と方法】任意型大腸内視鏡検診受診者1,231例を, 抜去時間推奨前, 抜去時間推奨後, 抜去時間記載開始後の半年ごと3期に分け, 抜去時間, ポリープ発見率について検討した。

    【結果】抜去時間推奨前における異常なし症例の平均抜去時間(以下抜去時間)が3分13秒の医師Aは, 3分48秒, 4分19秒と順に有意に延長, 医師Bは推奨前後で4分0秒から5分49秒に有意に延長した。推奨前の抜去時間が6分台の医師C~E, 8分台の医師Fは, 有意な抜去時間の変化はなかった。医師Gは抜去時間推奨前後で9分13秒から7分22秒に有意に短縮した。医師全体だと推奨前後で5分35秒から6分26秒へ有意に延長していた。ポリープ発見率は各医師および医師全体において有意な増加はなかった。

    【結語】抜去時間6分以上の推奨の効果は限定的で, ポリープ発見率は改善しなかった。精度向上には, より長い抜去時間推奨, 具体的観察方法の教育, フィードバックといった対策が必要と考える。

地方会抄録
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