【目的】Helicobacter pylori(H.pylori)胃炎は胃がん発生に深く関与するリスク因子である。本研究の目的は, 人工知能の一種であるdeep learningと胃X線画像を用いてH. pylori感染を陽性と陰性とに二分類するartificial intelligence(AI)の試作である。
【対象と方法】初めに, 胃X線検診と血清H. pylori抗体検査を実施した受診者300名(H. pylori陽性150名)を学習群として登録しX線AIを試作した。次に, このAIの診断精度を評価するテスト群として, 学習群と同一条件の受診者を協力健診機関から100名登録した(H. pylori陽性50名)。試作したX線AIの精度評価ではH. pylori血清抗体価を感染診断のゴールドスタンダードとした。
【結果】AIの診断性能は受診者動作特性曲線により評価した。試作したX線AIによるH. pylori感染の診断精度は, 感度76%, 特異度84%, 正診率80%であった。
【結語】Deep learning技術を応用した胃X線AIを試作した。今後はAIの学習画像を増やし, H. pylori除菌後・既感染への対応について研究を進めたい。
施設内視鏡検診において, 敷石状胃粘膜を呈する症例について, その頻度と特徴などを検討した。
上部消化管内視鏡検査 4,750例中15例(0.32%)に同所見を認めた。関連因子として, プロトンポンプ阻害剤(PPI)服用歴と喫煙歴を有するものに分けられた。前者が7例(47%)(内5例は喫煙歴あり), 後者が13例(87%)の計15例であった。男女比は13:2で男性に多く, 平均年齢は, 52.6歳であった。喫煙者における本症の頻度は, 非喫煙者に対し有意に高かった。
Helicobacter pylori抗体を測定した11例は, すべて陰性であった。残り4例も画像上未感染と思われた。内視鏡所見で関連因子による差は認めなかった。敷石状粘膜は, 体部小弯に多く, 大きさは中から小結節, 空気量の差で描出に違いが見られた。同所見の認識が拾い上げに重要と考えられた。
胃X線検査が3例に施行されていたが, その所見は軽微であり今後の課題と思われた。
従来同所見はPPIの関与のみが注目されてきたが, 今回の検討で, 喫煙がより重要な関係を有している可能性が考えられた。
症例は72歳, 男性。年に1度の人間ドックで施行した血液検査にてCA19-9が62.2U/mLと高値であったため, CT検査を行ったところ膵頭部に腫瘍を指摘され, 精査加療目的で当院紹介受診となった。腹部造影CT検査で膵頭部に21mm大の乏血性腫瘍を認め膵癌が疑われた。同部位に対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検法を施行し, 腺癌と病理診断された。以上から膵頭部癌と診断し, 手術前化学療法施行後, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。手術検体の病理組織学的所見では, Hematoxylin Eosin染色で低分化型腺癌成分に加え, 小型円形核, 淡明な胞体を有する異型に乏しい細胞が蜂巣状に増生しており, 免疫染色でsynaptophysin染色, chromogranin染色が共に陽性であったことから, 充実胞巣状構造の成分はneuroendocrine neoplasmと診断した。腺癌およびneuroendocrine neoplasmがそれぞれ30%以上存在していたことから膵頭部原発Mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasmと最終診断された。