日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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61 巻, 1 号
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巻頭言
大会長 報告
会長講演
  • 濱島 ちさと
    2023 年 61 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    がん検診は公衆衛生政策の一環であり, がん検出(case finding)とは異なる。その役割は特定のがんの死亡率を抑制したり, 罹患率を減少させることにある。その実現には, 科学的根拠に基づき, 系統的なプログラムとして提供されなくてはならない。がん検診の導入には有効性評価が必須であり, その集大成がガイドラインである。科学的根拠に基づくガイドラインは公共政策にも反映され, 我が国のがん検診プログラムの基礎となっている。がん検診の評価は国際的に標準化されたプロセスを段階的に評価し, がん死亡率減少効果が証明された方法がプログラムとして導入される。新技術の導入にも同様の評価が必要となるが, 1次検診以外の方法として利用できる可能性もある。公共政策として行うがん検診は科学的根拠に基づき, さらに利益と不利益のバランスを検討することが必要である。今後のがん検診においては, 受診者に正しい情報を伝え, 継続受診を支援するShared Decision Making(共同意思決定)を推進すべきである。

総説
  • 佐藤 秀一, 松原 夕子, 福原 寛之
    2023 年 61 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    膵臓は他の腹部実質臓器に比べて観察の仕方にコツがいる臓器である。そのコツを10項目にまとめた。

    1)膵臓の形状や膵臓周囲の解剖を知る, 2)系統的膵臓の観察をする, 3)深度, ゲイン, フォーカスを調整し, 1画面で撮る, 4)じっくり時間をかけて検査する, 5)ボーダーラインを確認する, 6)主膵管の走行を知り, 正しく計測する, 7)膵臓の弾性を考える, 8)飲水法(胃充満法)を利用する, 9)体位変換を利用する, 10)可能であれば高周波プローブを使用する。

    これらを用いることで読者が膵臓癌をはじめとする膵腫瘤性病変を高い頻度で検出できることを願っている。

原著
  • 箕川 正明, 中條 直人, 堀部 俊哉, 原田 容治
    2023 年 61 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/09/03
    ジャーナル フリー

    【背景】質の高い胃がん検診を行うには, 新・胃X線撮影法ガイドラインで提唱している撮影の手順を守り, 造影効果を上げ, 適切な体位で撮影する事が重要であるが, その一方で, 胃形は大きな問題の一つと言える。

    【対象と方法】今回我々は, 精度向上を目的に, 独自に作成した異なる胃形の自作胃ファントムを用いた教育効果を検討した。対象症例は2019年1月1日から2019年9月30日までに実施された胃がん検診受診者400名で, この400名を胃の形状から鉤状胃, 下垂胃, 横胃に分類し, A:造影効果, B:描出範囲, C:ポジショニングの3項目において, 胃がん検診専門技師を含む診療放射線技師5人で視覚評価を行った。さらに, 胃がん検診を担当した技師5名に対し, 自作胃ファントムを用いて教育を行った。教育後に2019年11月から2020年1月に実施された胃がん検診受診者108名の胃X線画像を用いて, 教育前と同様に視覚評価を行い, 教育による効果を評価した。

    【結果】教育前での視覚評価は, 鉤状胃, 下垂胃, 横胃の順に低い結果であったが, 教育後では, いずれの胃形においても視覚評価の向上を認めた。

    【結語】胃ファントムを作成し教育する事で, 撮影技術の向上だけでなく, 診断に適切な胃X線画像を撮影する事ができ, 病変の拾い上げの向上につながると推測された。

  • 三宅 悠司, 北野 琢也, 森川 敬斗, 池田 雄士, 臼井 和美, 兵藤 康弘, 櫻井 勝則, 小川 武, 加藤 丈佳, 野口 潤, 北井 ...
    2023 年 61 巻 1 号 p. 36-48
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/09/03
    ジャーナル フリー

    【目的】大腸CT検査では患者被ばく線量を考慮し低線量撮影を行っている。本研究では画像再構成法であるhybrid iterative reconstruction(Hybrid IR)とdeep learning reconstruction(DLR)を用いた画像を比較検討し, 更なる被ばく低減と画質担保について検討した。

    【対象と方法】撮影条件standard deviation(SD)8, SD30, SD40にて大腸CTファントムを撮影して被ばく線量を測定した。得られた画像データをDLRとHybrid IRにて再構成を行い, 10mm, 7mm, 5mmの模擬ポリープの最大径およびmodulation transfer function(MTF), noise power spectrum(NPS), low-contrast object specific contrast to noise ratio(CNRLo)の物理的評価とvirtual endoscopy(VE)画像の視覚的評価について検証した。

    【結果】被ばく線量はSD8:12mGy, SD30:0.6mGy, SD40:0.3mGyであった。

    模擬ポリープの計測値と撮影線量および画像再構成法の関係には有意差が認められなかった。MTF, NPS, CNRLoの物理的評価は全てにおいてDLRがHybrid IRよりも優れ, 特に低線量領域, 低周波数領域で顕著であった。VE画像においてDLRはHybrid IRより視認性が優れていた。

    【結語】低線量撮影のSD40で患者被ばく線量の低減を図りDLRで画像再構成を行うことで, 画質を担保したまま, 病変を正確に計測することができる可能性が示唆された。

委員会報告
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