日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
Print ISSN : 1880-7666
ISSN-L : 1880-7666
47 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
会長講演
  • 吉原 正治
    2009 年 47 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    内視鏡検査は胃癌診断精度が高いが, 侵襲性や偶発症, マンパワーの問題など様々な課題があり, 十分な説明と精度管理のためにも, 対象の胃癌リスクを評価することがよい。H. pylori陽性胃炎の中でも, 特に萎縮性胃炎は高危険群であり, また, PG法陽性の中でもsPGI/II比低値の者はより高い胃癌有病率を示した。H. pylori感染とペプシノゲン(PG)を指標にして, 胃癌リスクの評価が可能である。H. pylori未感染群をlow-risk, H. pylori感染者で萎縮のない者をaverage-risk, H. pylori感染で萎縮の強い群をhigh-riskとし, high-risk逐年内視鏡検査, average-risk隔年内視鏡検査とする応用が考えられる。内視鏡検査には, 安全で確実な診断, 検診のためにも胃癌リスク評価が望ましい。
特別企画
  • 馬場 保昌
    2009 年 47 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    本学会の胃がんX線検診部門は, 精度管理体制の構築を終え, 活動を開始する段階にある。胃がん検診精度管理委員会の下部組織にX線部会を設置し, さらに全国規模で活動できるように本部会は支部X線部会, 評価委員会, 教育研修委員会で構成されている。医師と放射線技師が連携し, それぞれの役割を果たすことで精度管理は強化され, 確実に精度の向上を計ることができよう。今後の課題には, 1)撮影法では対策型検診と任意型検診の相互間に整合性のある撮影基準作り, 2)読影の基準ないし読影指針作りと読影医の育成, 3)資格検定の確立と有資格者ならびに有資格施設の拡大, 4)受診率の向上などが上げられる。NPO法人「日本消化器がん検診精度管理評価機構」との競合を避け, 連携を重視しながらこれらを克服する必要がある。
  • 渋谷 大助, 猪股 芳文, 加藤 勝章, 島田 剛延
    2009 年 47 巻 2 号 p. 210-216
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    無症状の高齢者を対象とした住民検診発見胃がんにおけるPG法陰性胃がんは, 外来発見胃がん症例と同様に進行がん・未分化型がんが多く, 住民検診においてもPG法はX線法との併用が望ましい。PG法とX線法の組み合わせによる効果的な胃がん検診は, 同日2段階法による, 特異度を優先したPG法のカットオフ値の設定とX線法における要精検の判定基準の設定(M領域は確実所見のみ)が効果的である。高感度HP抗体測定・尿素呼気試験・血清PGI値に重点を置いたPG法の判定等によってHP未感染者を正確に診断することができれば, 胃がん検診対象者の更なる絞込みによって費用効果を上げることが可能である。NPO法人「日本消化器がん検診精度管理評価機構」によるX線検査, 内視鏡検査も含めた精度管理が重要である。
原著
  • 辰巳 嘉英, 本田 浩仁, 足立 聡, 岡村 誠介, 河合 隆, 児島 辰也, 下河辺 宏一, 中田 博也, 原田 明子, 森 昭裕, 森 ...
    2009 年 47 巻 2 号 p. 217-226
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    JDDW2007神戸ワークショップ24“経鼻内視鏡による上部消化管スクリーニングの現状と問題点”に参加した14施設を対象に経鼻内視鏡検査(経鼻法)についてのアンケート調査を行った。検査経験数や経鼻法選択率は施設により大きな差が見られた。経鼻法を経口内視鏡との自由選択としている施設が多かったが, 極細径内視鏡しか持たないクリニックなどでの対応は今後の検討課題である。インフォームドコンセントの内容では, 咽頭反射が少なくて楽, 鼻痛・鼻出血が偶発症, 経鼻挿入困難なケースでは無理せず経口挿入などが多く, 経口内視鏡より狙撃生検能が劣ることの説明をしている施設は少なかった。鼻腔麻酔法は様々であるが, 麻酔剤総量を減らす努力も見られた。偶発症では, 鼻出血頻度は諸家の報告とほぼ一致したが, 少数ながらも抜去困難例や検査後翌日の副鼻腔炎様症状の発生もあり注意を要する。今後, 偽陰性例の研究などの科学的な検証が必須である。
  • 佐藤 友美, 野崎 良一, 藤村 宜憲, 鎌田 智有, 山田 一隆, 春間 賢
    2009 年 47 巻 2 号 p. 227-239
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    大腸腺腫発生と肥満および減量との関連性を解析する為に, 大腸肛門病センター高野病院総合健診センターで内視鏡検査を初回受診した15,410名(男性7,173例, 女性8,237例)を対象に約14年間調査した。肥満との関連性は14年間の全体像および年代別(10年前, 現代)に比較検討し, 減量は初回に大腸腺腫を認めない肥満者で, 次年度に受診した952名について調査した。統計解析にはロジスティック回帰分析を用いた。全対象では男性肥満者は腺腫発生が有意なリスクとなったが, 年代別にみて10年前はリスク因子とならず, 現代のみリスクとなった。一方, 女性肥満はリスクとしては認められなかった。減量と大腸腺腫発生の関連について, 減量した男性は非減量者に比べ腺腫発生は約半数(0.58倍)に減少し, 体重あたり0.5%減量で予防効果を認めたが, 女性の減量は有意な差がみられなかった。以上から, 男性肥満は大腸腺腫発生に関連があり, 男性では減量は予防効果があると示唆された。
  • 松田 一夫, 野口 正人, 田中 正樹
    2009 年 47 巻 2 号 p. 240-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    大腸がん検診には逐年・隔年検診ともに死亡率減少効果があるが, 逐年検診を隔年に変えると発見がんの予後がどうなるか検討した。
    1992年から1998年に福井県内で施行された大腸がん検診受診者246,660名を地域がん登録と記録照合し検診後2年以内に判明した浸潤がんを把握した。逐年群を逐年検診後1年以内に診断されたがん, 隔年群を隔年検診後1年以内に診断されたがんおよび検診の1年以後2年以内に診断されたがんと定義し, 中間期がんの割合および累積生存率を比較した。またCoxの比例ハザードモデルによって大腸がん死亡のハザード比を比較した。
    隔年群(111例)の中間期がん割合は40%で逐年群(90例)の17%よりも有意に高く(P<0.001), 5年累積生存率は73.0%と逐年群の88.9%より有意に不良で(P=0.003), 逐年群より2.29倍死亡の危険が高かった(P=0.043)。
    逐年検診を隔年に変えると, 中間期がんが増え予後不良となる可能性を認識すべきである。
地方会抄録
feedback
Top