現在, 全大腸内視鏡検査(以下TCS)で対策型大腸がん検診のスクリーニングを行うことが検討されつつある。そこで本総説では, TCSによる対策型大腸がん検診のスクリーニングが開始される前に解決しておかねばならない問題点を紹介するとともに, その実現可能性について言及した。まず, 問題点としてはTCSの安全性の確保, 大腸がん検診におけるTCSの有効性の証明, 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライドラインにおけるTCSの推奨レベルの改善, TCSに対する被検者の受容性の向上, TCSの処理能力の増強, TCSによる大腸がんスクリーニングの実施間隔, TCSの費用, TCS時の前投薬, 大腸内視鏡検診医の育成, 大腸内視鏡検診医としての技術の修得などがあるが, これらを事前に全て解決することは極めて困難な状況にある。さらに, 最後にあげた大腸内視鏡検診医として修得しておかねばならない技術とは, 第一に安全な検査, そして快適・正確・確実な検査, 最後に迅速な検査ができることであるが, これら全てをマスターし「真の大腸内視鏡検診医」となることも決して容易ではない。

膵癌は予後不良な難治癌であり, その罹患数および死亡数は増加の一途をたどっている。予後改善のためには, 膵癌の中でも予後が比較的良好である1cm以下の病変を見つけることが重要である。多くのモダリティの中で, 超音波内視鏡検査(EUS)は小膵癌の検出において他のモダリティと比較し, 有意に優れているといえる。効率的に膵癌を早期発見するためには, 病診連携を活用し, 膵癌高リスク群に対しクリニックで積極的に腹部超音波検査を用いて嚢胞や膵管拡張などの間接所見を発見し, 高次病院にてEUSを積極的に行うことが重要である。しかし, 現状ではEUSは一般臨床に未だ十分に普及しているとは言えず, 膵癌の早期発見のためにはEUSの更なる普及が望まれる。直視型ラジアル式EUSは上部消化管と胆膵領域の同時検査が可能というコンセプトをもとに開発されたスコープである。従来の前方斜視型ラジアル式EUSスコープと比較し, 低侵襲性, 高操作性を兼ね備え, 膵癌スクリーニングに理想的な内視鏡といえる。直視型ラジアル式EUSは今後のEUS普及の起爆剤としてだけではなく, 胃癌・膵癌同時スクリーニングという将来の癌予防医学にパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。

【目的】Ｘ線による胃炎診断が血清H. pylori抗体価(以下抗体価)参照とコンセンサスミーティング(CM)で向上するかを前向きに調べた。

【方法】多賀町の健診受診者で本研究に同意した者の胃Ｘ線写真, H. pylori除菌歴および抗体価を使用した。6人の読影医が抗体価の情報①なしと②ありで胃Ｘ線写真による胃炎診断をした。次にCMで6人のコンセンサス診断を求めた。1か月以上後に①②と同様に抗体価情報③なしと④ありで胃炎診断をした。コンセンサス診断を対照とし読影医の正診率を調べた。

【結果】52症例54検査のうち胃炎なし34例, 胃炎あり19例, 計53例(98.1％)にコンセンサス診断が得られた。①②③④における6人の正診率平均±標準偏差(％)はそれぞれ81.1±15.0, 91.8±9.6, 87.4±4.7, 96.5±3.7であった。①vs②, ③vs④, ①vs④では平均値が有意に上昇し(p＜0.05), ①vs③, ①vs④ではばらつきが有意に縮小した(p＜0.05)。

【結語】読影医の胃炎診断正診率は抗体価の参照により有意に上昇し, ばらつきはCMにより有意に縮小した。本法は読影医の教育に有用である。