日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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60 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 服部 聡
    2022 年 60 巻 2 号 p. 194-201
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    臨床医学研究に推測統計学の方法は広く用いられており,リアルワールドデータへの期待の高まりもあり,高度な統計手法が積極的に活用されてきている。一方で,統計解析が必ずしも適切に使われていない側面もあり,統計的方法の適切な理解と活用がますます望まれる。本稿では,推測統計学の基本的な考え方を解説する。検診の有効性を評価した無作為化研究と観察研究を対比させつつ,両者の解析法の考え方を明らかにすることを通じて,臨床医学研究にしばしば登場する統計的方法の考え方を解説する。解説は2回にわたり行い,本稿はその後半である。なお,章および図番号は前半(統計1)から通しで示している。

原著
  • 早藤 清行, 中島 滋美, 長谷川 大, 藤井 誠, 大原 真理子, 茶谷 玲奈, 藤山 佳秀
    2022 年 60 巻 2 号 p. 202-211
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    [早期公開] 公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】新型コロナウイルス感染拡大の中,上部消化管内視鏡検査中の被検者の咳き込みや嘔吐反射による飛沫感染リスクが問題となる。我々は飛沫散乱対策として不織布で口元を覆う不織布法を考案した。本研究の目的は,不織布法に対する受検者の忍容性とコストの確認である。

    【対象と方法】2020年9月から1か月,当院で上部消化管内視鏡検査を受けた受診者を対象に不織布法の感想をアンケート調査した。また,本法のコストを計算した。

    【結果】307人のうち293人(男185,女108,平均年齢55.7±11.6歳,回答率95.8%)から回答を得た。違和感,息苦しさ,圧迫感・閉塞感,コミュニケーションしづらさを訴えた割合は,それぞれ3.6%,4.2%,3.9%,2.0%であった。コストは1検査当たり約2.8円であった。

    【結語】上部消化管内視鏡時の不織布法は,低コストで被検者に十分許容されうる,汎用性のある方法である。

  • 名木野 匡, 大泉 晴史, 武田 弘明
    2022 年 60 巻 2 号 p. 212-222
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    [早期公開] 公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    【目的】山形県における胃がん死減少を図るため地域住民検診と職域検診それぞれで胃がん検診の精度管理および課題を検討した。

    【対象と方法】県,市町村,検診機関それぞれの“事業評価のためのチェックリスト”を用いて,2016から2018年度における精度管理体制の改善の有無を評価した。また2018年度の胃がん検診受診者207,341名を対象としてプロセス指標を評価した。さらに年齢階層別の胃がん死亡数と検診受診率を比較した。

    【結果】県と市町村の精度管理体制では改善が見られた一方で検診機関では停滞していた。また地域住民検診におけるプロセス指標は全て許容範囲を満たしたが,職域検診では満たしておらず特に精検受診率が低かった。地域住民検診と職域検診を合わせるとがん発見率で許容値を満たさなかった。年齢階層別の検討では特に75歳以上の高齢者で胃がん死亡数とその割合が高かったが,検診受診率は低かった。

    【結語】山形県における胃がん死減少のためには,職域検診では精検受診率向上に向けた取り組みの強化,また地域住民検診では75歳以上の高齢者に対する検診受診勧奨が望まれる。

症例報告
  • 尾上 耕治, 山田 浩己
    2022 年 60 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代男性。アルコール歴は焼酎1日500 mlを44年間飲酒し,喫煙歴は50歳頃から禁煙したが1日40本を30年間喫煙していた。毎年胃内視鏡検診を受けていたが,咽頭部の異常を指摘されたことはなかった。200X年胃内視鏡検診にて,初めて下咽頭左側壁に腫瘍性病変が認められた。遡及的に1年前の内視鏡画像をみても明らかな病変は指摘できなかった。生検の結果,咽頭扁平上皮がんと診断され,宮崎県立宮崎病院耳鼻咽喉科を受診。T2N0M0,Stage IIと診断され,化学放射線療法を受け,6年半後も健在である。本症例のみならず,胃がんより予後の悪いと思われる食道がんおよび口腔・咽頭がん(特に下咽頭がんの男性)に対して,アルコール多飲者,喫煙者および男性など共通のハイリスク者には,隔年の対策型検診枠から外れて,任意型検診か保険診療にて逐年の内視鏡検査を行うなどの検討が必要と考えられた。

  • 鈴木 孝典, 吉田 行雄, 中野 真, 三吉 博, 須田 健夫, 三好 和夫, 宮谷 博幸
    2022 年 60 巻 2 号 p. 228-234
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代男性。令和1年(2019年)度さいたま市胃がん内視鏡検診で,胃体部大彎に5 mm大の鮮紅色山田III型ポリープが認められた。近年注目されているラズベリー様腺窩上皮型胃癌を疑い生検した。生検では腺窩上皮型過形成性成分に,腺腫様成分の混在が認められたため,自治医科大学附属さいたま医療センター紹介となった。紹介先でのNarrow band imaging併用拡大観察では,病変は乳頭状構造を呈し,White zoneが菲薄化し,開大した窩間部に走行不整を伴う異常血管増生を伴っていた。Endoscopic submucosal dissection一括切除が施行され,低異型度分化型腺癌と診断された。本症例は背景胃粘膜に萎縮を認めず,Helicobacter pyloriH.pylori)-IgG抗体陰性でH.pylori未感染胃癌と考えられた。近年報告されているラズベリー様外観を呈する腺窩上皮型胃癌は,従来の腺窩上皮過形成ポリープと酷似しており,これまで検診等では見逃されてきた可能性がある。H.pylori未感染と思われる胃粘膜に,過形成性ポリープ類似の赤色ポリープを見つけた場合,腺窩上皮型胃癌を念頭において注意深く観察する必要がある。

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