わが国のがん検診は, 対策型と任意型に分けられ, 対策型として, 胃・大腸・肺・子宮頚・乳がん検診の5つがある。厚生労働省による「2021年の人口動態統計」の部位別がん死亡数では, 男性は肺, 大腸, 胃, 膵, 肝, 女性は大腸, 肺, 膵, 乳, 胃の順に多い。胃, 大腸, 肺, 子宮頸, 乳の5つの癌は, 対策型検診が普及し, 早期診断そして癌死亡率減少に寄与している。一方, 膵がんは男性で4位, 女性で3位にもかかわらず, 科学的根拠に基づくがん検診が確立されていない。また, がんの原因として, 胃がんとヘリコバクター・ピロリ, 子宮頸がんとヒトパピローマウイルス, 肝がんとB型・C型肝炎ウイルスとの関連が明らかとなり, がん予防だけでなく発がん高リスク群の囲い込みに有用だが, 膵がんにおいては, 様々な原因の関与があり, 囲い込みは困難な状況である。膵がんの検査法として, 体外式エコー, CT, MRI, 超音波内視鏡(EUS)があげられるが, MRIとEUSを組み合わせた膵がん検診が注目されており, 欧米では, 家族性膵がん家系などの高リスク群で, その有用性が示された。わが国では, 国立がん研究センター中央病院が主導する臨床試験の登録が始まり, その結果が待たれる。
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