日本消化器がん検診学会雑誌
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59 巻, 5 号
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巻頭言
総会長報告
原著
  • 山崎 幸直, 松田 一夫
    2021 年 59 巻 5 号 p. 440-451
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    [早期公開] 公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    【目的】2016年2月の厚生労働省がん検診指針の改訂により,対策型胃内視鏡検診が実施可能となった。平等かつ安全で質の高い胃がん検診を提供する目的で,福井県の全県下(16市町)を対象に構築した胃内視鏡検診システムについて検証を行う。

    【方法】2016~2018年度の胃内視鏡検診の総受診者数21,238名(男性8,933名,女性12,305名,40歳~99歳)のデータを検証・解析する。

    【結果】要精検者2,196名,要精検率10.3%,精検受診率90.5%,発見胃がん119例(早期胃がん97例,進行胃がん22例),胃がん発見率0.56%,陽性反応的中度5.42%であった。先駆的に胃内視鏡検診を導入している自治体との比較では,要精検率,精検受診率,胃がん発見率,早期癌比率は同等以上の結果であったが,陽性反応的中度は低い傾向にあった。

    【結語】全県下統一した対策型胃内視鏡検診システムは比較的スムーズに導入され,ダブルチェックの中央化の整備および精度管理も維持されているが,更なる精度管理,安全性および質の向上が必要である。

  • 足立 政治, 馬淵 正敏, 堀部 陽平, 山内 治, 齋藤 公志郎, 畠山 啓朗, 西脇 伸二, 小島 孝雄, 清水 雅仁
    2021 年 59 巻 5 号 p. 452-461
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    [早期公開] 公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    【背景】岐阜県山県市では,2017年度から個別胃内視鏡検診に加えて検診車による集団胃内視鏡検診(経鼻)を胃X線検診と併せて実施し4年目を迎えた。

    【対象と方法】山県市で胃がん検診(胃X線,個別胃内視鏡,集団胃内視鏡)を受けたすべての受診者を対象(のべ5,575人)とし,胃内視鏡検診導入前後の受診率,要精検率の推移,胃がん検診精度管理評価項目(陽性反応適中度[PPV],がん発見率)を用いた胃X線検診と胃内視鏡検診(個別と集団を合わせたもの)あるいは個別検診と集団検診との比較検討を行った。さらに2017年度に検診車による胃がん内視鏡検診を受けた受診者(325人)と集団胃X線検診受診者(431人)にアンケート調査を行った。

    【結果】山県市の胃がん検診受診率は2016年度は5.0%であったが,2017年度以降は11%台に上昇した。また要精検率(内視鏡:2~7% vs 胃X線:8~13%),がん発見率(内視鏡:0.26% vs 胃X線:0.12%)や陽性反応適中度(内視鏡:6.7 vs 胃X線:0.9)はいずれも胃内視鏡検診が胃X線検診を上回っており,精度の高い検診が実践できた。検診車による集団検診受診者に対して行ったアンケート調査では,集団内視鏡検診受診者の約45%は今まで検診を受けていない群であった。今回検診を受けた理由としては「利便性がいい」がもっとも多く(52.3%),交通手段の乏しい山間部の居住者に多い傾向にあった。次に「経鼻であること」が挙げられ(40.0%),利便性だけでなく受容性の向上が受診率増加に繋がったと考えられた。一方,胃X線検診を強く希望する受診者も一定数存在した(4.3%)。

    【結語】集団胃内視鏡検診導入により新規受診者の掘り起こしが可能であったが,受診者のニーズは多様であることから,柔軟な検診体制を構築する必要があると思われた。

  • 大黒 隆司
    2021 年 59 巻 5 号 p. 462-472
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    [早期公開] 公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    【目的】当院の任意型胃がん検診の成績をもとに,任意型検診の対象年齢と検診方法について検討した。

    【対象と方法】20年間の受診者71,866人(X線検診56,603人,内視鏡検診15,263人)の成績を5年毎(I-IV期)に検討した。

    【結果】全期間の胃癌発見率はX線検診0.06%(32人)に対し内視鏡検診0.32%(49人),食道癌発見率はX線検診0.009%(5人)に対し内視鏡検診0.059%(9人)といずれも内視鏡検診で有意に高率であった(ともにp<0.001)。今後対策型検診から除外される40歳代受診者の胃癌発見率はI期0.09%に対しIV期0.01%と有意差を認めず,2016年度では同年代の20.9%に萎縮性胃炎を認めた。III,IV期に発見された胃癌49例中Helicobacter pyloriH. pylori)除菌後胃癌は14人(28.6%)で,13人が内視鏡検診であった。

    【結語】任意型検診では40歳代受診者の検診を続行し,同年代の胃癌の早期発見とともにH. pylori胃炎の除菌による胃癌リスク低減に努めるべきである。除菌後胃癌の早期発見と食道癌の効率的な発見のためには,内視鏡検診が推奨される。

  • 菅原 悦子, 藤田 剛, 松井 佐織, 森元 宏樹, 久禮 泉, 今田 祐子, 栃谷 四科子, 阿南 会美, 阿南 隆洋, 菅原 淳
    2021 年 59 巻 5 号 p. 473-484
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    [早期公開] 公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    【目的】大腸がん検診における大腸advanced neoplasia(AN)高リスク群の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2014年1月から2016年12月までに当センターにて大腸がん検診を受け,免疫学的便潜血検査(FIT)が陽性であった3,779例のうち当院で全大腸内視鏡検査(CS)を受けた905例を対象に,ANに関与する臨床的特徴を多変量解析にて後ろ向きに調査した。

    【結果】905例中148例(16.4%)にANを認めた。CS受検歴のない群(812例)のANに対するFITの陽性的中度(PPV)が18.1%であったのに対して,CS受検歴のある群(93例)でANを認めた例は1例のみで,PPVは1.1%と有意に低かった。CS受検歴のない812例を用いた多変量解析では,年齢60歳以上(OR 2.64,95%CI:1.78-3.95,P<0.001),高血圧あり(OR 1.62,95%CI:1.06-2.47,P=0.026),喫煙習慣あり(OR 1.77,95%CI:1.05-2.94,P=0.034),毎日の飲酒習慣あり(OR 1.63,95%CI:1.09-2.41,P=0.017),FIT値が259 ng/ml以上(OR 1.92,95%CI:1.31-2.83,P<0.001)の5因子がANに有意に関連するリスク因子であった。また,これらのリスク因子の保有数が多いほどANに対するFITのPPVは有意に増加した(保有数0のPPV 4.3%,保有数1のPPV 9.3%,保有数2≦のPPV 28.8%,保有数3≦のPPV 33.1%,保有数4≦のPPV 42.9%)。

    【結語】大腸がん検診の有効性を高めるためにはCS受検歴のないANリスク因子を持つ要精検者への精査勧奨の推進が必要である。

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