日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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59 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 森 秀明
    2021 年 59 巻 4 号 p. 378-393
    発行日: 2021/07/15
    公開日: 2021/07/15
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    腹部超音波検査は非侵襲的な検査であり,健診(検診)では第一選択となる画像検査法として位置付けられている。腹部超音波検査の問題点としては検者が病変を見落としてしまうと画像に記録されないため,後で超音波画像をみても正しい診断にたどり着くことが困難である点があげられる。検者が第三者に理解できる鮮明な超音波画像を記録するためには超音波診断装置の適切な設定条件と超音波検査に特有なアーチファクトに対する理解が必要である。また報告書を作成する際は正しい用語やサインを用い,検査を依頼した医師の知りたい情報に的確に答えられるレポートを作成する必要がある。さらに肝胆膵領域の腫瘤を中心に偽陽性による不要な精査を回避するために鑑別診断に有用な超音波所見について解説する。

原著
  • 高橋 悠, 和田 亮一, 山道 信毅
    2021 年 59 巻 4 号 p. 394-399
    発行日: 2021/07/15
    公開日: 2021/07/15
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    【背景】ピロリ菌除菌判定においてEIA法での血清抗体価の低下を用いる方法があるがラテックス法検査試薬でも可能であるか検証した。

    【対象と方法】2010年,2015年にH-ピロリ・ラテックス「生研」を用いて血清抗体測定された症例のうち2010年に除菌治療歴がなく陽性であり,2015年までに除菌治療を受けた846例を対象として除菌前後の抗体価の比を除菌からの経過時間毎に比較した。

    【結果】除菌前後の抗体価比は成功例では0.19±0.01,失敗例では0.44±0.03と有意に除菌例で抗体価が低下することが判明した(P<0.0001)。除菌前後の抗体価比は除菌後6か月未満では0.30,1年未満では0.23,1年半未満では0.16となり,除菌後6か月未満と1年半未満では有意に抗体価の比が異なるが(P=0.039),それ以降は低下しないことが判明した。除菌後1年以降に抗体価が1/2以下になる症例では528/559(94.5%)で除菌成功していた。酸分泌抑制薬内服は抗体価に影響がなかった。

    【結語】ラテックス法検査試薬を用いてもピロリ菌除菌後の抗体価が低下することが判明し,除菌判定に有用であると考えられた。

  • 関口 正宇, 松田 尚久
    2021 年 59 巻 4 号 p. 400-410
    発行日: 2021/07/15
    公開日: 2021/07/15
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
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    【背景】安全性の観点から,検診における大腸内視鏡検査(CS)では観察のみを行い,ポリープ切除は治療CSで対応する方法も考えられるが,治療CS時に病変を同定できるかという懸念がある。また,CS件数の大幅な増加を避けるには,微小腺腫を無治療経過観察できるか確認する必要がある。

    【対象と方法】2004年から2013年に国立がん研究センター検診センターでポリープ切除を伴わない初回の検診CSを受けた受診者データから,治療CS時の病変同定能(検討1)と,微小腺腫に対して無治療経過観察を行った場合の経過(検討2)を検討した。

    【結果】(検討1)大腸癌や5 mm以上の腺腫は非常に高い割合で治療CS時に同定できるのに対し,微小腺腫の同定率は7割程度であった。(検討2)微小腺腫に対して無治療経過観察を行ってもAdvanced colorectal neoplasiaの5年累積発生率は1.4%と非常に低かった。

    【結論】微小腺腫は時に治療CSでの同定が困難であるが,過剰なサーベイランスなしに無治療経過観察できる可能性がある。治療対象から微小腺腫を除く場合,ポリープ切除を伴わないCSは検診法の選択肢になりうる。

経験
  • 大賀 純一, 白畑 敦, 佐藤 純人, 石田 康男
    2021 年 59 巻 4 号 p. 411-418
    発行日: 2021/07/15
    公開日: 2021/07/15
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    宮崎県における全大腸内視鏡検査の実態を実際に現地調査と対面アンケートを行うことによって詳細な調査を行った。宮崎県内で全大腸内視鏡件数が多い施設に見学依頼を行い,見学可能であった12施設を対象とした。方法は現地調査16項目と対面アンケート6項目の全22項目を現地施設で見学しながら記録した。実際の挿入法は二木会専門用語を用いて大腸を4つに区分しパターン化率で判定した。宮崎県における大腸内視鏡検査は盲腸到達率が高く検査環境も良好であった。4区域すべてでパターン化されている施設での挿入時間に統計学的有意差は認めなかったが(p<0.072),パターン化されていない施設と比較して挿入時間は短い傾向にあった。今後はさらに検討施設を増やし,そこから得られた情報を施設間で共有することにより,受容性が高く安全かつ質の高い大腸内視鏡検査の標準化と精検受診率の向上が期待される。

症例報告
  • 武藤 桃太郎, 栁川 伸幸, 佐藤 啓介
    2021 年 59 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 2021/07/15
    公開日: 2021/07/15
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    症例は36歳,女性。2019年9月当院人間ドックでの腹部超音波検査で,膵体部腹側に胃に接した径38 mmの腫瘤を指摘され,胃X線検査で胃角部小弯側に粘膜下腫瘍様の隆起を認めた。CT検査で胃角部小弯側に造影効果が不均一で,内部に一部嚢胞成分を有する壁外性腫瘤を認め,上部消化管内視鏡検査で胃角部小弯側に径30 mmの粘膜下腫瘍を認めた。超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)を施行し,gastrointestinal stromal tumor(GIST)の診断となり,腹腔鏡下胃部分切除術を施行した。病理組織結果はKIT陽性,CD34陰性,核分裂像が3/50HPF,MIB-1 labeling index 6.9%で低リスクのGISTであった。腹部超音波検査が発見・診断につながった管外発育型の胃GISTであった。

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