日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
Print ISSN : 1880-7666
ISSN-L : 1880-7666
57 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
原著
  • 馬嶋 健一郎, 村木 洋介
    2019 年 57 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    大腸がん検診の精検受診率向上のため, 大腸CT検査の役割が期待されている。本研究は, 便潜血陽性の精検における大腸CT検査の実施状況を把握するため全国226施設の病院勤務医師にアンケート調査を行った。調査内容は便潜血陽性者への大腸CT検査に関するもので, 大腸CT検査は保険適用があると思うか, 大腸内視鏡を受けたくない方に大腸CT検査が実施可能か, 実施できない場合の理由とした。プライマリアウトカムとした実施体制の結果は, 「可能」と「おおむね可能」をあわせて42%(50/120, 95%信頼区間33-51%)で, 過半数以上が実施困難な状況にあった。不可能な理由は, 撮影・画像構成や読影の問題などがあげられた。また, 保険適用についての考えも様々であった。大腸CT検査の利用がより広がるために, 便潜血陽性者への保険適用の明確化を望みたい。そして, 前処置・撮影・読影についての標準化を推進していく必要があると考える。

  • 丸山 勝, 寺島 俊幸, 高倉 俊晴
    2019 年 57 巻 2 号 p. 170-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院人間ドックの腹部超音波検査は, 超音波検査法フォーラムが推奨している基本走査法に即して施行し, 無所見時の記録断面は, 肝腎コントラスト, 胆嚢の長短軸像の3断面であった。腹部超音波検診判定マニュアルでは16断面以上を推奨しており, 記録断面を増加する必要とする意見もある。そこで, 超音波検査法フォーラムが基本走査法で提唱している基本断面のうち22断面を選び, 記録断面を増加させた前後での検査時間を検討した。

    【対象・方法】当院人間ドック受診者に対して施行した検査, 従来方式の記録断面が3断面の検査92例, 新方式の記録断面が22断面の検査102例について検討した。

    【結果】従来方式が中央値9分45秒, 新方式が中央値11分1秒であり, 従来方式の方が中央値:1分16秒の差を以って有意(p:0.002)に検査時間が短かった。また, 1つ以上の有所見群について同じ検討を行うと, 従来方式の方が, 中央値:1分26秒の差を以って有意(p<0.001)に検査時間が短かった。

    【結語】腹部超音波検査の記録断面を増加させると検査時間は増加するが, 必要な断面を記録するために施設全体で対応を検討すべきである。

経験
  • 神田 泰一, 中島 晃, 関口 隆三, 桑島 章, 板垣 信生
    2019 年 57 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    腹部超音波スクリーニングに関する精度向上のための取り組み―電子情報システム導入によるものと技師育成について―を紹介する。当センター健診超音波検査受診者から発見された癌(肝臓, 胆道, 膵臓, 腎臓)のうち早期癌の割合を電子情報システム導入前の2003年4月1日~2006年3月31日までの健診のべ受診者(男性101,742名, 女性59,109名, 総数160,851名)と, 電子情報システム導入後の2013年4月1日~2016年3月31日までの健診のべ受診者(男性87,505名, 女性51,337名, 総数138,842名)とで比較検討した。早期癌の定義はT1N0以下とした。電子情報システム導入前は総受診者数160,851名中に発見された癌の総数は87例, うち早期癌は31例(35.6%)であった。電子情報システム導入後は総受診者数138,838名中に発見された癌の総数は71例, うち早期癌は35例(49.3%)であった。X2検定で電子情報システム導入前後での比較ではp=0.079であり優位性は認められなかったが, 改善傾向が見られた。

    当センターの総合健診は逐年受診者が増え, 最近では約9割である。電子情報システム導入によって過去画像や検査データを参照できるようになり, 観察困難部位の対応など, 効率的な検査が可能となった。電子情報システムの利用と技師育成の両輪での取り組みが早期癌発見割合の改善に関係していると思われる。将来的には腹部超音波検診判定マニュアルに準拠した検査方法にあらため, さらなる精度向上を目指したい。

症例報告
  • 野村 栄樹, 菊地 達也, 渋谷 里絵
    2019 年 57 巻 2 号 p. 186-194
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    75歳女性。自覚症状なく大腸がん検診便潜血検査陽性のために施行した大腸内視鏡検査で上行結腸に隆起性病変が指摘された。腫瘤は30mm大の亜有茎性病変で, 頂部は陥凹し陥凹内隆起を呈していた。陥凹部からの生検病理検査で悪性間葉系腫瘍が疑われた。CTでは腫瘤は強い造影効果を伴い, 周囲への浸潤や遠隔転移所見は認めなかった。当院外科で右半結腸切除術が施行された。切除標本の病理組織学的検査では, 紡錘形細胞の束状増殖, 核分裂像, 静脈侵襲を認め, 免疫組織化学染色でそれらの腫瘍細胞はdesminとHHF35がともに陽性, c-kitおよびCD34は陰性で, 平滑筋肉腫と診断された。間葉系腫瘍診断に免疫組織化学染色が主流となった2001年以降, 真の大腸平滑筋肉腫は稀であり, 発見契機としては血便や腹部膨満感等, 腫瘍が巨大化してからの自覚が多く, 本症例のように検診契機の発見例は他に認めなかった。検診により比較的早期の段階で発見, 診断された貴重な症例であり報告する。

地方会抄録
feedback
Top