日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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59 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 松本 直樹
    2021 年 59 巻 2 号 p. 151-161
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    検診での腹部超音波検査にあたり,良く遭遇する高頻度の疾患を熟知する必要があることは言を俟たないが,超音波像に特色のある疾患や,日常遭遇するものとしては非典型の場合に鑑別に挙がる疾患は,頻度が低くても知っておくべきである。

    肝血管筋脂肪腫は典型的には著明な高エコーと音響陰影,流出静脈が特徴である。硬化性血管腫は硝子変性した血管腫で,硝子化領域は乏血となる。肝原発リンパ腫は無エコーに近い低エコーが見られ,貫通血管が特徴的である。混合型肝癌は肝細胞癌,肝内胆管癌の両方の成分が混在した腫瘍で,その割合や分布によりいずれの特徴も持ち得る。Intraductal papillary neoplasm of bile ductは,胆管癌の前癌病変で,粘液を多量に産生して著明な胆管拡張が見られる。フォンタン関連肝疾患は先天性心疾患の姑息的手術であるフォンタン手術後,長期経過の後に持続するうっ血により肝硬変,多彩な肝腫瘍が生じるものである。

原著
  • 山岸 史明, 小田 丈二, 入口 陽介, 小峰 詠里加, 中村 清華, 菊地 博敦
    2021 年 59 巻 2 号 p. 162-171
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    新・胃X線撮影法(対策型)における追加撮影の有用性を明らかにするため,追加撮影がカテゴリー判定に及ぼす影響を検討した。対象は2012年4月から2015年3月までに当センターで経験した胃癌症例51症例とした。新・胃X線撮影法規定8体位のみで病変が描出されていた症例は46症例,病変に対して追加撮影を行った症例は38症例であった。追加撮影によりカテゴリー判定が上がった症例は21症例あり,そのうち17症例は早期癌であった。規定8体位のみでこの17症例中5症例はC-2,10症例はC-3bと判定され,追加撮影によりC-4以上と判定された。進行癌症例は13症例存在し,規定8体位のみで全例C-4以上と判定された。今回の検討から,追加撮影により特に早期癌のカテゴリー判定が上がったことから,早期癌に対して追加撮影の影響が大きいと考える。撮影に携わる診療放射線技師は病変に対する理解を深め,適切な追加撮影を行う事により,読影補助の一環として胃がん検診の精度向上に貢献することが可能であると考える。

  • 依光 展和, 入口 陽介, 小田 丈二, 水谷 勝, 冨野 泰弘, 山里 哲郎, 大島 奈々, 園田 隆賀, 岸 大輔, 中河原 亜希子, ...
    2021 年 59 巻 2 号 p. 172-184
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    【目的】内視鏡検査の精度向上のため,偽陰性胃癌の要因について明らかにすること。

    【対象と方法】2011年4月から2017年3月に当センターにて診断された胃癌1,088病変のうち,3年以内に内視鏡検査歴のある211病変を偽陰性例と定義し,臨床病理学的特徴を検討した。また粘膜下層以深癌の内視鏡画像から,偽陰性となった要因を分析した。

    【結果】対象は平均年齢70±6歳,男性168女性43,U/M/L領域:45/102/64,平均腫瘍径15±13 mm,深達度M/SM1/SM2-3/MP/SS/SE:161/19/21/6/3/1であり,偽陰性例早期癌率95.7%,粘膜内癌率76.3%であった。検査間隔1年以内/1-2年/2-3年では早期癌率99.1/97.1/73.1%,粘膜内癌率81.2/76.4/53.8%であり,検査間隔2-3年で有意に低率であった。U/M/L領域別では早期癌率88.9/97.1/98.4%,粘膜内癌率51.1/82.4/84.4%と,U領域で有意に低率であった。粘膜下層以深癌50病変の前回内視鏡画像から偽陰性となった要因を分析すると,観察不良8,拾い上げ診断不良20,診断困難22病変であった。U領域では観察不良5病変,急速発育し診断困難11病変と多く,丁寧な観察と軽微な所見の拾い上げが重要であった。

    【結語】内視鏡検査の精度向上のためには,網羅性が高く画質が良好な観察撮影にて発見された胃癌症例を分析し,観察診断能力を常に向上させていくことが重要である。

症例報告
  • 武藤 桃太郎, 栁川 伸幸, 佐藤 啓介
    2021 年 59 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,女性。2017年12月当院人間ドックでの腹部超音波検査で,脾動脈幹近位リンパ節と肝十二指腸間膜内リンパ節の腫大を指摘され,胃X線検査で胃に潰瘍性病変と粘膜ひだの肥厚を認めた。上部消化管内視鏡検査で胃角部から体部にかけて全周性の粘膜ひだの肥厚と不整形の潰瘍を認めた。胃壁の伸展は良好であった。潰瘍部位からの生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)の診断となり,血液内科の専門病院へ紹介となった。精査の結果,Ann Arbor分類III期のDLBCLの診断となり,リツキシマブ併用CHOP療法を計6コース施行し,完全寛解を得た。腹部超音波検査における詳細な観察・知識と胃X線検査の丹念な読影が発見につながったと考えられた。

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