日本消化器がん検診学会雑誌
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58 巻, 2 号
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巻頭言
会長講演
  • 鎌田 智有
    2020 年 58 巻 2 号 p. 62-72
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
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    Helicobacter pyloriH. pylori)感染と胃癌をはじめとする胃・十二指腸疾患との関連についてはこれまでの多くの研究により明らかとなっている。著者は1994年から広島大学において「H. pylori感染と胃・十二指腸疾患の発生」に関する研究,臨床では消化性潰瘍・胃炎に対する除菌治療を比較的早期から開始した。なかでも組織学的胃炎に着眼し,萎縮性胃炎,腸上皮化生,鳥肌胃炎などと胃癌発生について研究を行い,著者の携わっている今日の胃がん検診にも役立てている。

    2002年からは川崎医科大学と岡山県健康づくり財団との共同研究が開始され,対策型胃がん検診において胃X線検査によるH. pylori胃炎診断を新たに導入し,効率の良い胃癌発見に成果を上げた。また,近年では胃内視鏡所見からH. pylori感染状態を診断する時代となり,2014年「胃炎の京都分類」が発刊され,内視鏡検診における胃炎診断と胃がんリスク評価にさらなる光をもたらしている。

原著
  • 西川 孝, 安田 鋭介, 渡邉 真也, 木村 光政
    2020 年 58 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    日本消化器がん検診学会による『胃X線検診のための読影判定区分:カテゴリー分類』を用いて診療放射線技師による読影補助の精度に追加撮影が判定に与える影響を検討した。

    悪性症例において追加撮影実施時の感度は65.2%,未実施時の感度は49.7%で有意に追加撮影実施時の感度が高かった(P≦0.01)。不確実判定であるカテゴリー3bの付与率は,追加撮影実施時が19.5%で,未実施時の17.6%との間に有意差は認めなかった。非悪性症例におけるカテゴリーの過剰判定(偽陽性)率は,追加撮影実施時42.1%であった。技師の知識や経験を考慮した検討では,何れのクラスの技師群においても有意に追加撮影実施時の方が未実施時より感度は高かったが(P≦0.05),不確実判定カテゴリー3bの付与率は各技師のクラス間で有意な差は無く,非悪性症例におけるカテゴリー判定の過剰判定(偽陽性)率は,知識と経験が豊富な指導的技師群(57.1%)の方が他の技師群より高かった。

  • 太田 洋一, 千田 浩一, 渋谷 大助
    2020 年 58 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本検討は胃X線検査の線量評価の基礎的検討を目的として,宮城県対がん協会で基準撮影法IIによる胃X線検査を施行された331名と診療放射線技師4名を対象に,被検者体型(BMI,体脂肪率,腹囲)・検査担当技師の経験年数それぞれと入射表面線量(ESD)を比較した。その結果,撮影におけるESDはBMIと強い正の相関を示し,透視における入射表面線量は被検者体型より技師の個人差が強く影響した。また,経験の少ない技師の透視におけるESDは経験の十分な技師より多く,さらに本検討での条件では,1検査あたりのESDは透視によるものが7~8割を占めていた。本検討は胃X線検査のESDにおける透視の割合が大きいことを確認し,線量低減には高BMI被検者に対するX線条件の見直しと透視線量の低減が有効であることを示した研究である。

  • 廣澤 幸恵, 皆川 京子, 齋藤 洋子, 岡安 啓介, 桑原 淳, 鈴木 由美子, 富山 芳丈, 西木戸 理子, 早川 修太
    2020 年 58 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    上部消化管X線造影(以下,胃X線)検査と胃がんリスク層別化検査を同日に実施した男女478名を対象に,リスク層別化検査でHelicobacter pylori(以下,H.pylori)未感染と予測されるA群に分類された受診者の胃X線画像からH.pylori感染か未感染かを判断し,結果が一致しない受診者において数値上特徴があるかを検討した。リスク層別化検査はH.pylori抗体カットオフ値4.0 U/mL未満(和光純薬工業株式会社),PG法は三木の基準を用い,A群312名(65%),B群78名(16%),C群28名(6%),D群3名(1%),E群57名(12%)であった。A群312名中,X線画像上H.pylori未感染と判断した例が252名(81%),H.pylori感染胃炎と判断した例が60名(19%)であった。A群から,PGII≧14 ng/ml,PGI/II比<5である受診者を除外することにより偽A群を低減できる可能性があった。

  • 八坂 貴宏, 安田 貴明, 山口 将太, 本田 徹郎
    2020 年 58 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
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    【目的】便潜血検査陽性者の標準的精密検査法は全大腸内視鏡検査(以下TCS)であるが,離島へき地においては消化器内視鏡医の不足により十分な精密検査を提供することが困難な状況にある。TCSが困難な地域における大腸がん検診精密検査法として,大腸CT検査(以下CTC)がTCSと同等に扱えるかを検証した。

    【方法】2014年4月から2018年3月に2つの附属診療所において検診で便潜血検査陽性と判定され,精密検査法としてCTCが行われた169例とTCSが行われた273例の患者別の病変発見率,がん発見率,陽性反応適中度(以下PPV),偶発症発生率について比較検討した。

    【結果】CTCを施行された症例では,58例(34.3%)で6 mm以上の病変を指摘された。47例(81.0%)がTCSに移行しPPVは93.6%であった。大腸癌は3例であった。一方,本院に紹介してTCSを行った症例では,70例(25.6%)で6 mm以上の病変を指摘され,大腸癌は11例であった。両者において病変発見率,がん発見率,偶発症発生率に有意差はなかった。

    【結論】TCSが困難な地域において,CTCは精密検査法としてTCSを補完できると考えられた。

  • 西村 重彦, 藤本 敬, 川端 聡, 山田 晃, 妙中 直之
    2020 年 58 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2020/03/15
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    当院人間ドックで腹部超音波検査を施行した17,274人に対し,腹部超音波検診判定マニュアルを用いてカテゴリー(以下C)判定を行った。

    C-3から発見されたのは膵臓がんの2例のみで,膵臓のC-3;389例中2例にがんが認められたためがん発見率は0.5%であった。C-4からのがん発見率は,肝臓;50例中5例(10%),胆道;18例中2例(11.1%),膵臓;14例中3例(21.4%),腎臓;12例中4例(33.3%)であった。C-5から発見されたがんは膵臓3例,腎臓3例で,C-5のがん発見率は100%であった。C-4の各『超音波画像所見』をC-4a悪性疑い;低い疑い(20%未満の悪性の可能性),C-4b;悪性疑い;中間~高い疑い(20%以上の悪性の可能性)にわけて検討したところ肝臓では「充実性病変;最大径15 mm以上」の所見が有意に悪性の可能性が低く(p=0.009),膵臓では,「主膵管拡張,主膵管内結節」の超音波画像所見が,そして腎臓では「充実性病変;内部無エコー域・辺縁低エコー帯・側方陰影のいずれかを伴う」の所見が,悪性の可能性が高いことが示唆された。カテゴリー4の各超音波所見には,悪性の可能性につき差があることを認識しつつ判定を行うことが重要であると考えられた。

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