日本消化器がん検診学会雑誌
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59 巻, 3 号
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巻頭言
会長講演
  • 松浦 隆志
    2021 年 59 巻 3 号 p. 204-216
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    九州における消化器がん検診のあゆみは,日本の消化器がん検診の始まりと密接に関係している。本稿では九州支部および福岡地区胃集検読影研究会のあゆみと検診実績について報告する。また,全国に先駆けて平成12年から北川晋二先生,故中村祐一先生が中心となって開始された福岡市内視鏡個別検診の歩みと成績を呈示する。福岡県でも,平成28年度から胃内視鏡検診が徐々に開始されており,現在,市町村数では60市町村中31市町村で実施している。市町村数では約半数だが,福岡県の胃がん検診受診対象人数1,299,077人に対し胃内視鏡検診実施自治体対象人数1,030,132人と内視鏡検診の実施可能人数を考慮しなければ,内視鏡検診実施可能市町村のがん検診対象者数は福岡県胃がん検診対象者数の80%を占める。福岡県の胃がん内視鏡検診の現状と課題についても報告する。

原著
  • 山田 耕一郎, 満崎 克彦, 森 猛, 井上 淑博, 野村 美穂子, 福永 久美, 坂本 祐二, 菅 守隆
    2021 年 59 巻 3 号 p. 217-226
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/05/17
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    【目的】胃がんX線検診のための読影判定区分(カテゴリー分類)を用いた診療放射線技師(以下;技師)による読影補助の有効性を検証した。

    【対象および方法】2011年4月~2017年3月に胃がんX線検査を受診し,要精検の胃内視鏡検査を実施し最終診断が判明している232例を対象とした。読影医1名と経験年数の異なる技師6名がそれぞれ独立してカテゴリー判定を実施し,読影医と技師のカテゴリー判定の比較検討を行った。

    【結果】全技師と読影医とのカテゴリー判定の一致率は75.8%(カッパ係数:0.601)と良好であった。胃がん検診専門技師有資格者の一致率83.9%(カッパ係数:0.710)は,資格未取得者の一致率68.0%(カッパ係数:0.454)より良好であった。資格未取得者は有資格者と比較し過小評価しやすい傾向にあった。

    【結語】読影判定区分を用いた技師による読影補助の有用性は示唆されたが,読影補助を行う技師は胃がん検診専門技師であることが望ましい。技師間の読影力格差を是正するため,勉強会への積極的な参加,実践形式での読影トレーニングや症例検討を積み重ね,読影精度の向上と読影力の標準化を図る必要がある。

  • 山本 晃大, 丸山 保彦, 矢野 庄悟, 星野 弘典, 寺井 智宏
    2021 年 59 巻 3 号 p. 227-236
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/05/17
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】藤枝市では,2013年度から胃がんリスク判定(独自基準を設けた修正ABC分類)と胃内視鏡検診を行っている。修正ABC分類の結果をもとにした効率的な胃がん検診の対象集約について検討した。

    【方法】リスク判定は2013-2017年度に39-75歳であった者に1人1回のみ通知・施行した。ペプシノゲン法陽性(PG(+))基準をPG I≦70 ng/mLかつPG I/II≦3.0としたうえで,修正ABC分類の定義を,A群:Helicobacter pyloriH. pylori)抗体<3 U/mLかつPG(-)で,さらにPG I/II>4かつPG II<15 ng/mLを満たす者。A':「3 U/mL≦H. pylori抗体<10 U/mLかつPG(-)で,3<PG I/II≦4」,「3 U/mL≦H. pylori抗体<10 U/mLかつPG(-)で,PG II≧15 ng/mL」のいずれかを満たす者。B1群:H. pylori抗体≧10 U/mLかつPG(-)かつPG II<30 ng/mLを満たす者。B2群:H. pylori抗体≧10 U/mLかつPG(-)かつPG II≧30 ng/mLを満たす者。C群:H. pylori抗体≧10 U/mLかつPG(+)を満たす者。D群:H. pylori抗体<10 U/mLかつPG(+)を満たす者とした。リスク判定後にA,A'群は公費助成による,B-D群は保険診療による内視鏡を施行した。その後も定期的な内視鏡フォローを行った。

    【結果】リスク判定胃がん発見率:0.27%,各群胃がん発見率:A 0.0081%,A' 0.18%,B1 0.43%,B2 0.26%,C 1.22%,D 1.23%。内視鏡フォロー胃がん発見率:0.53%(41/7,700;A 0,A’2,B1 4,B2 5,C 26,D 4)。内視鏡フォロー中に発見されたA'群の胃がんの発見時期は全てリスク判定受診4年以降であった。

    【結語】修正ABC分類によるA群からの胃がんは極めて少なく胃内視鏡検診の対象から除外も検討できる。またA'群への検診間隔は延長が許容されうる。

  • 西川 稿, 土屋 昭彦, 高森 頼雪, 原田 容治, 堀部 俊哉, 広津 崇亮
    2021 年 59 巻 3 号 p. 237-245
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/05/17
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    【背景】がんの早期発見は重要であり,簡便で高精度ながん検査が求められている。広津らによって開発されたNematode-NOSE(以後N-NOSE)は,尿を検体として線虫Caenorhabditis elegans(以後C. elegans)の優れた嗅覚を利用した簡便ながん検査であり,先行研究では95.0%の特異度と95.8%の感度が報告されている。

    【対象】本研究では消化器系がん74例と非がん30例の尿検体を用いN-NOSEの性能の検証を行った。

    【結果】N-NOSEインデックスは,がんと非がんで有意差p<0.0001が認められ,ROC解析ではAUC=0.774が示された。がんの感度は81.1%と高く,特異度は70.0%であった。がん種別の感度は食道癌80.0%,胃癌68.8%,大腸癌80.0%,肝細胞癌90.9%,胆道癌100%,膵臓癌80.0%,ステージ別ではIで76.9%,IIで90.9%と早期から高い感度を示し,腫瘍マーカーとの大きな違いが見られた。N-NOSEインデックスと,被験者の年齢,性別,合併症,肝機能,腎機能,尿一般定性には有意な関係性は見られなかった。

    【結語】これらよりN-NOSEは非侵襲で高感度かつ簡便ながんのリスク検査となり得ることが示唆された。

経験
  • 辰巳 嘉英
    2021 年 59 巻 3 号 p. 246-258
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2021/05/17
    [早期公開] 公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    大阪市における対策型胃内視鏡検診の検討を行う大阪市胃内視鏡検診運営会議が2016年3月に設置された。高水準消毒液による洗浄消毒は必須,抗血栓薬服用中の者は検診対象外,鎮静剤の使用は原則禁止と決定した。内視鏡撮影記録は40枚程度の撮影を実施し,ダブルチェックは,施設内での運用のみとした。診療,検診にかかわらず,胃内視鏡検査の経験が1,000件以上あり現在も概ね年間100件以上の胃内視鏡検査を実施している医師は内視鏡検査医やダブルチェック医としている。現在は,検査医やダブルチェック医の研修に力を入れており,良好な画質の網羅性の高い撮影を検査医に促すと共に,偽陰性症例の提示を研修会の中心としている。今後は,胃炎の京都分類の教育を含むピロリ感染診断や萎縮性胃炎評価を研修会の中心とする予定である。

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