大気オゾンが成層圏中間圏のエネルギー収支,大気運動を左右する重要な要素であることから,これの垂直分布の測定手段の開発は1921年以降今日に至っている。
測定法は大別して,光学的に行う方法と化学的に行う方法の2つに分けられるが,ここで述べる方法は前者の部類に属し,その動作原理は,オゾンにより吸収をうける波長3050Å,半値巾200Å,および吸収をうけない波長3400Å,半値巾100Åの帯域巾のそれぞれの太陽スペクトラム強度を検出し,その強度比より,機器より上にある全オゾン量を算出する方法に基づいている。
機器の特徴は,アクリル樹脂,ソーダ硝子といった簡便低廉な素材をもとにした4枚のフイルターを用い透過率の違いを利用して,2つの独立のスペクトラムを選択し,これを安定な情報伝達系に伝える点に見出せる。
ここでは,これらの特徴を含め,機器の動作原理,構成,性能に関する実験結果,更に観測結果の整理法,試験飛揚観測結果について総括的な吟味が行なわれている。
なお,スペクトロメーターによるオゾン全量観測値とは略々±15%以内で一致しているので,若干の改善をはかることと,天空散乱光の補正の仕方を明確化することにより,従来のこの方法による機滞に比し,確度がよいこと。取扱いが簡便であること等の利点が一段と生かされ,オゾン層の探測,特にオゾン層上部の探測に最も有利な武器として役立つことが結論される。
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