Papers in Meteorology and Geophysics
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17 巻, 2 号
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  • 松本 誠一, 二宮 洸三
    1966 年17 巻2 号 p. 51-64
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1965年1月30日, 寒気吹出の気象状態のもとで,日本海上において対流圏下層に典型的な逆転層がみいだされた。この日に行われた,ドロップ・ゾンデ観測,雲の航空写真観測などを含む,北陸豪雪特別観測の資料をもちいて,この逆転層およびその下で発達する積雲対流の様相の詳細を解析した。その結果は次の様に要約される。
    1.大陸性極気団が寒気の吹出として日本海上に流れ出す時,顕著な逆転層が寒気内に見出される。
    2.逆転層以下では,海面からの補給によって積雲対流が活発である。これらの積雲は逆転層にさえぎられ,逆転層下面より上層では湿度が急激に減少する。しかも逆転層上面での混合比は日本海域全体にわたってほぼ一様であって,気団変質が逆転層上空にはおよんでいない事を示していた。
    3.逆転層下面の高さは,寒気の垂直安定度によって支配される積雲対流の強さによって変動している事,すなわち上層寒気の侵入時に高い逆転層のあらわれる事が示された。
    4.メソスケールの逆転層の起伏が見出された。その起伏は水平距離100kmに対し500mの程度である。逆転層の盛上りは活発な積雲対流のgroupの上空で見出され,この事はメソスケールの積雲の分布が逆転層の起伏に関係する事を示している。
    5.長波輻射による雲層上面の冷却は,逆転層を強化・維持するセンスに作用する事がわかった。
    6.逆転層下面から海面に至る大気下層では,相当温位・風速ともに非常に一様である。これは逆転層があたかもrigid boundaryであり,その下層で積雲対流によって,混合が行われたものと理解される。
    本研究は気象研究所北陸豪雪特別研究の一部分をなすものである。
  • 外山 芳男, 小林 寿太郎
    1966 年17 巻2 号 p. 65-75
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    上層のオゾン観測に用いられているオゾン受感部は殆んどが化学方式の絶対測定に基づいているが,これらの方式はそれぞれ受感部を使用するにあたって,オゾンが受感部に入り反応するまでの間に,汚染物質の存在によりオゾンが分解することがあるので,受感部内で反応するオゾン量を吟味する必要がある。この理由で簡単なオゾン発生器と較正装置がつくられた。
    オゾン発生器は無声放電の原理に基づき,主に採集空気の乾燥系統と放電管とで構成されていて,オゾン受感部を較正する場合,.適当な流量で一定オゾン濃度の空気を感部に送り込むことができる。 較正装置はファラデーの電解の原理に基づいており,チオ硫酸ナトリウムを含んだ沃化カリウム溶液中に一定の電解電流を流し,電解により析出した沃素が溶液中のチオ硫酸ナトリウムと完全に反応し終る迄の時間を基準とし,電解とオゾンを含んだ空気とを使用することにより,単位時間当りの生成沃素が増加するためチオ硫酸ナトリウムと反応し終る時問が短縮され,基準との時間差よりオゾン濃度が求められる。
    オゾン発生装置の動作は安定であり,取扱いも簡便であり,その精度は環境条件により左右されるが,環境制御が厳密に行われない場合は±10%,同一環境条件下では,強制オゾン化処理後40分以後における発生器の誤差は±15%以内である。この装置でつくられるオゾン濃度の径時変化は強制オゾン化処理後40分以後では毎時4.5x10-6g/m3の一定の減少を示し,どの条件下でもこの傾向は同一である。
    集約すると,オゾン発生器および較正装麗の総合較正精度は±3%以内であることが実験的に明確にされた。これは米国で使用されているRegener方式のオゾン発生器および較正法に較べ精度(特に,安定性,再現性)が高いことを示している。この装置は取扱いも簡便で精度も高いので化学方式のオゾンゾンデによる定常的な観測に用いることによって観測精度の一層の向上が期待されよう。
  • 光学式オゾンゾンデ
    小林 寿太郎, 経塚 貢, 村松 久史
    1966 年17 巻2 号 p. 76-96
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気オゾンが成層圏中間圏のエネルギー収支,大気運動を左右する重要な要素であることから,これの垂直分布の測定手段の開発は1921年以降今日に至っている。
    測定法は大別して,光学的に行う方法と化学的に行う方法の2つに分けられるが,ここで述べる方法は前者の部類に属し,その動作原理は,オゾンにより吸収をうける波長3050Å,半値巾200Å,および吸収をうけない波長3400Å,半値巾100Åの帯域巾のそれぞれの太陽スペクトラム強度を検出し,その強度比より,機器より上にある全オゾン量を算出する方法に基づいている。
    機器の特徴は,アクリル樹脂,ソーダ硝子といった簡便低廉な素材をもとにした4枚のフイルターを用い透過率の違いを利用して,2つの独立のスペクトラムを選択し,これを安定な情報伝達系に伝える点に見出せる。
    ここでは,これらの特徴を含め,機器の動作原理,構成,性能に関する実験結果,更に観測結果の整理法,試験飛揚観測結果について総括的な吟味が行なわれている。
    なお,スペクトロメーターによるオゾン全量観測値とは略々±15%以内で一致しているので,若干の改善をはかることと,天空散乱光の補正の仕方を明確化することにより,従来のこの方法による機滞に比し,確度がよいこと。取扱いが簡便であること等の利点が一段と生かされ,オゾン層の探測,特にオゾン層上部の探測に最も有利な武器として役立つことが結論される。
  • 滴定方式オゾンゾンデ
    小林 寿太郎, 外山 芳男
    1966 年17 巻2 号 p. 97-112
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気オゾソを化学的方法で検出する工夫は古くから,いろいろと試みられてきたが,沃度カリ溶液を用いる方法が信頼度も高いので基調をなしている。
    ここで述べる滴定方式の動作原理は,ファラデーの電解の原理を利用し,チオ硫酸ソーダを含む沃度カリ溶液とオゾンとに関する既知の化学反応に基づく反応過程を電気的に検出することにある。
    機器は主として溶液内の沃度の発生によるチオ硫酸ソーダーの消滅にともなう分極崩壊を監視する検出器と,溶液を一定の割合で電解する機構と,分極崩壊探知後,直ちに既知のチオ硫酸ソーダ溶液に注入し,初期状態にもどす滴定機構とから構成されている。
    オゾン量は,電解作用だけで分極崩壊が開始する時間を基準とし,この基準時間の添加オゾン量による短縮をはかり求められる。
    機器の感度は2μg/secで応答時間は約30秒である。使用前に電解電流と滴定時間間隔との対応を求めることにより,チオ硫酸ソーダの濃度の検定および機器の動作の確認が容易に行えること,および,汚染物質の混入がなければ絶対測定方式であることに特徴をもつ。ここでは,これらの点を含め,総括的に機器の性能の吟味が扱われる。
    なお,測定精度は±2%以内で,滴定量の誤差に基因する。飛揚試験の結果によると,気圧低下にともない,滴定器内の汚染物を中心として,気泡の発生がおこり,これがため,滴定量が異常に不規則になることが屡々観測されたが,この点の改善がはかられることにより,他のいろいろな方式の準器として役立っことが結論される。
  • 炭素-沃素方式オゾンゾンデ
    小林 寿太郎, 外山 芳男
    1966 年17 巻2 号 p. 113-126
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気オゾンの気象学的意義の重要性からいって,地上におけるオゾン全量観測の充実に次いで,高層における観測網の展開がはかられる気運にある。これがためには,取扱いが簡易で,価格も安く,動作が安定で連続記録が期待されるオゾンゾンデの開発が望まれ,今日迄種々のものが考案されてきたが,ここで述べる機器は中でも最も新しい試みの1つである。
    機器は,ハロゲン溶液(KIとKBr)を含む2ケの連通された反応セルと,各々のセルに固定された白金電極,炭素電極とで基本的に構成され,その動作原理は白金電極側のセルにオゾンを含んだ空気を送り込むことにより電池が形成され,この放電電流が反応にあづかったオゾン量と正確に対応していることに基づく。
    測定精度は,暗電流を考慮に入れることにより±2%以内に保たれ,応答速度はオゾン量の増加過程で約15秒,減少過程で約35秒である,連続記録がとれるので,オゾン層の微細構造が知れる特徴を有している。
    ここでは,これらの特徴を含めて,機器の綜括的吟味,二三の飛揚結果の吟味が行われる。室内実験,飛揚実験の結果によると,汚染物質の測定系への混入が防除されている限りでは,オゾンの絶対量測定方式の1つであることを示し,動作の安定性,取扱いが簡易なこと等,高層のオゾンの定常観測に最も適した方式であると結論される。
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