2000年9月11日から12日にかけて、東海地方を中心に多いところで500mm/48hを超える豪雨があった。このときの総観場とそれによる豪雨の維持機構を、現業観測データと気象庁全球客観解析を用いて診断した。
豪雨の最盛期には、下層で湿潤絶対不安定成層が観測された。これは対流不安定成層の持ち上げによって生成されたと考えられる。θeの水平移流は925hPaの正の移流と700hPaの負の移流が同程度の大きさで、これらが下層の対流不安定の維持に同程度に寄与していたと思われる。
対流不安定成層を持ち上げるforcingは、下層のgeostrophic frontogenesisで説明された。日本付近ではまず、南海上の台風と日本の北の低気圧と太平洋高気圧により、合流の変形によるfrontogenesisが生じた。そこへ40N付近を中層の擾乱が東進して傾圧帯へ接近し、北陸地方のジオポテンシャル高度低下とシアー変形によるfrontogenesisの増大に寄与した。シアーfrontogenesisの位置とタイミングは東海地方の豪雨の最盛期とよく一致していた。またジオポテンシャル高度の低下により南風が強まると、それがさらに対流不安定の増大やfrontogenesisに寄与した。
抄録全体を表示