Papers in Meteorology and Geophysics
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38 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著論文
  • 内野 修, 田端 功, 甲斐 憲次
    1987 年38 巻4 号 p. 237-246
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     ライダーの基本的な問題の1つとしてレーザー送信部と受信望遠鏡との光軸合わせがある。ここでは、光軸合わせに便利なライダー後方散乱信号を、よく使用されているルビーレーザー、ヤグレーザーのそれぞれの基本波、高調波に対し、エーロゾル・オゾンを含めた大気モデルを用いて計算している。
     次に光軸合わせにミスアライメントがあった場合、後方散乱信号はどうなるか、また成層圏エーロゾル観測にどのような影響を及ぼすかを調べている。ライダーのレーザー送信部と受信望遠鏡の光軸が完全なアライメントから、互いに外向きにはずれた場合は、高度10~30km間で、上向きに大きくなるような見かけ上の後方散乱比RB′が、例えエーロゾルが存在しなくとも現れ、互いに光軸が交差した時には下向きに大きくなるようなRB′が観測されることになる。このような場合のRB′を補正する1方法について述べているが、言うまでもなく、このようなミスアライメントが起こらないようにライダーシステム設計することが重要である。
  • 松尾 敬世, 福田 矩彦
    1987 年38 巻4 号 p. 247-264
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     ユタ大学過冷却雲風洞を用いて、水未飽和、氷飽和以上で氷晶の成長実験を行った。気温領域は−10°Cから−20°Cまでとし、氷晶の成長に伴う諸量の時間変化を測定した。実験を開始する前に、氷晶を安定して浮遊させるための風洞の改良を行い、風洞内に現れる気流の乱れと渦を防いだ。この実験条件で成長した氷晶は、板状および角柱であり、樹枝状の結晶はできなかった。30分間成長させると、最大で質量が約10−5g、落下速度が50cm/s程度の氷晶が得られた。氷晶の質量、最大径、落下速度の関係は、それぞれ、m(g)=1.7×10−3d(cm)1.9およびv(cm/s)=4.8×103m(g)0.38となった。これらの結果は、降水物理学や降水制御の分野で有効に利用されるものと考えられる。
  • 時岡 達志, 山崎 孝治, 千葉 長
    1987 年38 巻4 号 p. 265-277
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     気象研究所大気大循環モデル (MRI・GCM-I) による長期予報実験の一例を報告する。ここでは単に月平均アノマリがどの程度予報出来るかということのみならず、初期条件 (IC) のインパクトと海面水温異常 (SSTA) のインパクトがそれぞれどのような時間経過をたどるかという点を調べることを主な目的としている。赤道東部太平洋域でエル・ニーニョが活発であった1983年5月1日を初期値として選び、2か月間の積分を行っている。
     低緯度域では既に1か月目で SSTA インパクトの方が IC インパクトを上まわっている。月平均でみられる大規模なアノマリはよく予報されている。2か月目では、アノマリがよく予報される領域はせばまり、東部太平洋赤道域から大西洋赤道域に限られてくる。2か月目ではICインパクトは殆ど無くなる。
     北半球中・高緯度では、1か月目はICインパクトの方が SSTA インパクトを上まわる。但し南半球の方では両者はほぼ同じ大きさに達している。アノマリはピーク付近では有意である。しかし予報されたアノマリは実測とよい対応を示さない。2か月目に入ると場所によって SSTA インパクトがICインパクトを上まわるようになる。そのような場所ではアノマリ相関が1か月目より2か月目の方がよくなっている。
  • 柴田 清孝
    1987 年38 巻4 号 p. 279-292
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     塩化リチウム露点計の外部蒸気圧-温度曲線 (calibration-curve) は LiCl 飽和溶液の蒸気圧曲線とは異なっており、使用条件 (ヒーター電圧、風速、周囲の温度) によって変化する。これらの事柄を説明するため塩化リチウム露点計の数学的モデルを作り、その定性的解析を行った。過去の実験結果から感部の水の量と蒸気圧に関して“露点計感部の蒸気圧は温度と水の量の関数である。”という関係が導けて、これを使うことにより、これまで不明であった塩化リチウム露点計の特性を説明することが出来た。結果は次ぎの様に要約される。(1) 動作は 2次の常微分方程式で表現されて、その係数はヒーター電圧、風速、周囲の温度の関数である。(2) パラメータをステップ関数的に変えた時の応答は通常の 2次の常微分方程式にデルタ関数とステップ関数の両方が入力された時の応答に等しい。(3) 周囲の空気の蒸気圧一定で感部の初期の熱損失を減らす様に使用条件を変えると、平衡状態での温度は上がり、水分量は減少する。熱損夫の増加に対しては逆の現象が起こる。(4) 一定の使用条件下で周囲の空気の蒸気圧を上げると平衡状態での水分量は増加し、それ故、蒸気圧-温度曲線は飽和溶液のそれより傾斜が大きくなる。
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