Papers in Meteorology and Geophysics
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23 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 井沢 龍夫
    1972 年23 巻2 号 p. 33-71
    発行日: 1972/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    熱帯太平洋のような地球上の限られた領域からサンプルされた空-時系列の西進波と東進波の成分をもつ連続空-時スペクトルを空-時共分散のフーリエ変換として推定する問題について述べる。
    従来空-時スペクトルの研究は主として緯度圏に沿って全地球的にサンプルされた空-時系列の時間的には連続ではあるが空間的には不連続な場合についてのみ行あれてきたので,本論文の始めでは従来の研究との関係を明らかにするためいくつかの型の空-時スペクトルについても議論される。
    第1章では先づ西進波と東進波の成分をもつ空間的にも時間的にも不連続な空-時スペクトルが空-時平均により定義された共分散のフーリエ変換として与えられる。次にこのような空-時スペクトルの1つの極限として空間的には不連続であるが時間的には連続な空-時スペクトルが導かれ,更にその極限として空間的にも時間的にも連続な空-時スペクトルが導かれる。不連続スペクトルと連続スペクトルの関係も議論される。
    空-時系列の統計的研究では空-時スペクトルは母集合平均により定義された空-時共分散のフーリエ変換として与えられる。第2章ではこのように定義された一般化された空-時スペクトルには9つの異った空-時スペクトルの和として表わされることが示される。空-時スペクトルが空間的にも時間的にも絶対連続の場合には空-時スペクトル密度が存在する。
    統計的に云うと,第1章で述べた連続空-時スペクトルは連続な空間および時間に対して存在すると仮定される連続係数空-時系列の標本空-時スペクトルを意味する。然し多くの場合,連続係数空-時系列は空間的にも暗間的にも等間隔な不連続係数空-時系列としてサンプルされるので,この場合生じる偽波数-周波数の問題についても簡単に述べる。
    次にこのようにサンプルされた空-時スペクトルは或る確率法則で母空-時スペクトル密度に収束することが要求される。ここでは標本空-時スペクトルが母空-時スペクトル密度の一致推定量になるために標本空-時スペクトルを平滑する2つの空-時スペクトル窓関数について述べる。次にこのようにして平滑された空-時スペクトルの大標本的性質が調べられ,x2-分布に基く標本分布の近似が導かれる。
    連続係数空-時系列を不連続空-時系列としてサンプルしたときに起る重要な問題の1つは低波数-周波数の波が他の波より大きな値を示すことである-第3章では低波数一周波数の波を消し,綜観規模の波だけを残す2つの型の高波数-周波数通過フィルター-が提案される。或る場合には超高波数-周波数の波は信号としてでなく雑音として現われることがある。このため超低波数-周波数と同様に超高波数-周波数の波を消し,綜観規模波動のみを残す中間波数-周波数通過フィルタ-についても述べる。フィルターされた空-時スペクトルとフィルターされない空-時スペクトルの関係も簡単に議論される。
  • 井沢 龍夫
    1972 年23 巻2 号 p. 73-120
    発行日: 1972/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    エッサ気象衛星の気候学的雲写真上に明確な積算雲分布として現われる熱帯太平洋の平均下層大気とその擾乱の特性を統計的に調べた。
    北半球の夏では太平洋の気候学的雲写真は西から南東に伸びる赤道無雲帯により分離された2つの明察な雲帯を示す。月平均の地上気圧と風速場の解析から北側の雲帯は赤道収束帯(ITCZ)に関連しており,一方南側の雲帯は南太平洋の極トラフに関連していることが分る。これらの雲帯は顕著な低気圧性渦度と収束,風向の低い定常性,気圧および風の東西,南北成分における大きな分散により特徴づけられている。赤道無雲帯は西太平洋の赤道トラフと東太平洋の赤道リッジに関連しており,顕著な負渦度と発散,風向の比較的高い定常性,気圧および風の比較的小さい分散により特徴づけられている。
    このような平均の気圧場および風速場における局地変動の周波数スペクトル解析によると4-5日週期がITCZの北側と南太平洋の極トラフに卓越していることが分る。西から南東に伸びる赤道無雲帯では西太平洋の4-5日週期,東太平洋の8-10日週期が顕著である。太平洋の緯度圏に沿って取られた空-時系列のスペクトル解析によると,ITCZ内の10°N近くでは波長2,500km週期4-5日をもって西進する偏東風波動がみられるが,この波動は20°Nで最も顕著になる。6日週期で東進する波長5,000kmの波動は30°Nで観測されるが,それは5,000km聞隔で東進する北太平洋亜熱帯高気圧として追跡出来る。一方20°Sでは4-5日週期と10日週期をもって偏東風(基本流)と逆向きに東進する波長5,000kmの波動が観測されるが,これは5,000km間隔で東進する南太平洋亜熱帯高気圧として追跡出来る。10°Sと10°Nの間の赤道地方では6日週期と10日週期をもって西進する波長6,000kmの波動が観測されるが,これらは6,000kmの間隔で西進する赤道高気圧または赤道リッジとして追跡できる。
    風の東西および南北成分の相関解析によると,擾乱による東風運動量の南内き輸送がITCZの北側で起り,一方北向き輸送がITCZの南側で起っており,擾乱による東風運動量の収束がITCZに沿って起っていることを示唆している。空-時系列のコースペクトル解析によると10°Nで東風運動量の北向き輸送が5.5日週期をもって東進する波長4,000kmの波動により起り,一方南向きの輸送は5.5日週期をもって西進する波長2,500kmの波動により起っている。後者は偏東風波動によるものである。偏東風波動による東風運動量の南向き輸送は20°Nで最も顕著である。
  • 根本 茂
    1972 年23 巻2 号 p. 121-134
    発行日: 1972/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    BRADLEY(1968)によれば,粗い地衷面から滑らかな地表面に急に変化する際,その境目からある程度離れた風下側の各地点における風速の鉛直分布はPANOFSKY-TOWNSEND理論によって碓定された分布とあまりよく一致しない。理論的に推定された風速の鉛直分布は実測された分布よりも風速の小さい方へずれる,即ち実測された分布は加速されたような形になる。
    しかし,その理由がよくわからないので,BRADLEYの観測値を用いてこの問題を再検討してみた。
    その結果,Roughness parameterを適切に選べば実測された風速の鉛直分布はPANOFSKY-TOWNSEND理論によって推定された分布とよく一致し,BRADLEYのいうような加速は認められなかった。
    (この研究は文部省科学研究費補助金による研究の一部である)
  • 木沢 綏
    1972 年23 巻2 号 p. 136-147
    発行日: 1972/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    秋田駒ヶ岳の噴火活動(Sept.1970-Feb.1971)は,熔岩の流出,爆発等に近年稀な諸現象を含む点で興味深い。
    筆者は,この爆発機講の特性をS/Mという量で現わした。駒ケ岳に於けるTide generatingforcesの理論値と調和させつつ活動性質の探究を行ない,その特性の解明,爆発源の深さとその推移等について説明した。これは諸火山活動や,松代群発地震にも現われた興味深い地下活動機構である。
    噴火活動中に本邦初の“煙環現象”が出現した。筆者は幸いにも全生成過程を火口から8ミリとテープコーダーとによって並行観測することが出来たので Spectrum 分析,爆発エネルギーの消長と地震波動との関係等の研究を行い,世界火山史上稀有なこの現象の原因を科学的に記述する事が出来た。
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