Papers in Meteorology and Geophysics
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16 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 松本 誠一, 二宮 洸三
    1965 年16 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    昭和39年2月2日に本邦上空を通過した寒冷渦は,小型ではあつたが典型的な構造をもち,その中心部に中規模擾乱に伴う降雪がみられた.この寒冷渦の構造を,南北断面図,および輪島の時間断面図によつて詳しく解析した.またこの寒冷渦はほぼ定常的に東進したので,時空間坐標の変換を応用して温度・風の水平分布を推定し,cold dome上部の垂直流を求めた.
    本報告は北陸豪雪研究の一環をなすものである.
  • 重力波的考察
    松本 誠一, 二宮 洸三
    1965 年16 巻1 号 p. 9-22
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    昭和39年1月20日および2月20日には上層トラフが通過し,これに伴つて北陸地方にかなりの降雪がみられた.主要な降雪は寒冷渦の中心部にみられる中規模擾乱と関係し,顕著な線状エコーと共に移動した.
    気圧の半日週期,低気圧周辺部の大きな気圧傾度などを消去して振幅の小さい中規模擾乱をとり出してその性質を調べるために,2.5時間移動平均よりの偏差場につき解析した.
    気圧偏差場は3時間週期をもち,時速90kmで移動した.その振幅,発散場などの関係は,コールドドームを境する界面に発生する重力波としてよく説明がつくようである.
    本報告は北陸豪雪研究の一部をなすものである.
  • 曲田 光夫
    1965 年16 巻1 号 p. 23-37
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    FISHER, ESTOQUE等によつて行われた海陸風の数値実験においては考慮されなかつた効果として,地(海)表面における熱平衡, 凝結による潜熱,一般流の垂直歪等の効果を主題として計算を実施した.地(海)表面における熱平衡については,日射,放射,乱流輸送,地(海)中輸送等を組み入れたが,蒸発の潜熱を省略した.実際には雲による日射,放射の変動が重要であるが,この効果もここでは考慮できなかつた.凝結熱は現象を活発化させ,一般流の歪の効果は,歪の正負が問題になるようである、従来の安定度理論では,歪の自乗の形できいてくるので,この点については更に研究を進めなければならない.また,乱流拡散係数については,接地逆転層が形成された場合の気温の実測値を,拡散方程式を解いて求めた値と試行実験的に比較して決めた.出来れば,拡散係数を風と気温の分布の函数として時々刻々に計算して行くのが望ましいが,この点については今のところうまく行かなかつた.
  • 関原 彊
    1965 年16 巻1 号 p. 38-44
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    東京における月別平均日削量1日積算値をPAGEの提出した経験式により日照率のデータを用いて計算した.水平面日射量の計算値はIGYの期問についての実測値と,非常によい一致を示し,この方法が有効であることを示している.
    傾斜面については赤道方向にむかい45°,35°,25°,15°の各傾斜角の面への日射量を計算した.その結果日射量受熱の効率としては,緯度35°の東京における最有効傾斜角は25°附近にあり,その効率の得は1%程度であることが判つた.
    この原因は夏季における受熱量の得が冬季における損失を上廻つているためであるとして説明される.
  • 籾山 政子
    1965 年16 巻1 号 p. 45-64
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    疾病及び死亡の季節変化の様相は,昔から現代に至るまで,さまざまな変遷をとげてきている.昔は比較的,気候の影響をそのまま反映して,これらの季節的分布が決定されていたが,人間社会の進歩とともに,季節的分布の様相は大きく変ってきた.
    たとえば,赤痢の罹患をみても,昔は夏に著明な山をみせたが,現在では極めてゆるやかな山に変った.しかも,冬の赤痢患者の発生割合は,年々増加しているが,夏の患者発生割合は,むしろ減少しているといった具合である.
    また,死亡率の季節変動の型式も,時代的に著しい移り変りをみせている.
    死亡率の季節変動型式の移り変りから,“移行型”と“逆転型”の二つに分類できる.
    移行型:がんがこれに入る.がんは明治,大正の頃には8月を中心に夏の山があったが,それがだんだん移行して最近では10月を中心に秋の山がある.季節変動係数は0.1位から0.04と最近では半分にちぢまって,季節変動が縮少してきた事を示す.
    逆転型:逆転型“A”は昔は夏に山があったが,現在では山が消えて谷となり,冬の部分の低下がそれほど著明でないため,むしろ冬がクローズアップされて逆転したタイプである.腸炎,脚気,結核などがある.
    逆転型:“B”は昔は夏と冬の2つの山があり,それが夏山の低下により完全に冬だけ一つ山を持つ型に変型した.成人病としての脳卒中,心臓病,老衰がこれである.
    つぎに,季飾変動型式の時代的変化がなぜおこったかを考えてみる.たとえば,脳卒中や心臓病の場合,発病の問題はともかくとして,昔は夏の暑い時期に,暑さの影響をそのまま受けて患者の体力は消耗し,自然の力に抵抗できぬままに死に至る事が多かった.また,これら死因の中には感染症の混在も考えられる.それが医療技術の進歩,新薬の発見などで,夏に死ぬ筈の患者の生命を延長でき,冬にまで持ち越された結果ではないかと考えられる.
    一方,疾病死亡の季節変化の変遷と必ずしも対応するわけではないが,人体機能の季節変化にも変遷がおきているようである.即ち人体の基礎代謝の四季にわたる変動カーブ,人体の血球比重の季節変動カーブは,何れも最近では季節変化が縮少してきている.
    また,最近,あらたに登場してきた問題として“死亡率低下の停滞現象”がある. 戦後さまざまな疾病死亡率が低下したが,ある時点からは横ばい状態になっている.肺炎,腸炎,結核等の細菌性疾患は,どの季節においても停滞現象に近い傾向がみられる.
    これとは逆に,脳卒中,心臓病などの成人病は,年令層の老令化にともなって,最近はその死亡率はますます高まる傾向にある.季節的には冬季に著しい.
  • 前田 嘉一, 須田 友重
    1965 年16 巻1 号 p. 65-75
    発行日: 1965/09/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    熱帯成層圏風系の変動に約ニヵ年の週期性のある事が発見されて以來,この現象に就いて多くの観測およびその観析が行われているが,未だにその奇妙な週期性(約26ヵ月)の成因は明らかにされていない.
    地上で観測される宇宙線強度の変動には,地球大気変動によるもの(大気効果)と,地球大気外に於ける変動によるものとがある事はよく知られている.そこで本稿では,先づ大気効果を通じて予想される宇宙線強度の準双年度化の振巾および位相をエネルギー別に論じ,1937~1959年に亘るHuancayo(12°S,3150m)とCheltenham(39°N, sealevl)の電離函のデーターの解析結果(Power Spectrum Analysis)を示す(Fig.4).即ち熱帯(Huancayo)では季節変化は無く,磁気的静穏日のみのデーターに就ては16,24および40ヵ月に小さなpeakが認められる,一方中緯度(Cheltenham)では大気温度効果による顕著な季節変化(12ヵ月)の外に,統計的には有意でないが,24および48ヵ月に小さなpeakが認められる.
    以上の結果は決定的でわないが,一応「地球大気の準双年変動は熱帯以外にも存在し,その原因は地球大気外よりも,むしろ地球大気振動系の非線型的性質によるものであろう」と云う意見にfavorableである(少くとも矛盾しない)と解釈される.
    所で宇宙線気温効果の理論から,大気効果による宇宙線強度の準双年変化は,高エネルギー程大きく,位相は約1Gev附近を境に低エネルギー強度の変化とは逆になる事が示される(Fig.3).従つて地球大気準双年変化の原因を究明する為にも,今後の解析には,長期に亘る赤道および高緯度に於ける更に高エネルギーの宇宙線観測データーが要望される.
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