近年の伊豆半島における地殻の上下変動の図を参照すると、(1) 隆起の中心が移動すること、(2) 目玉状の振幅の大きな隆起域に隣接して小振幅の沈降域があること、など幾つか特徴的な現象が見受けられる。
本研究では、指向性を有する圧力源モデルを新たに導入して、三次元有限要素法による数値解析等を行い、これらの地殻変動現象がこのモデル、あるいは球状均等圧力源モデルによって定性的に説明可能であるかの考察を行った。
その結果、(1) については複数の分布した均等圧力源あるいは指向性圧力源により説明可能である。(2) についても同様である。しかし、均等圧力源モデルでは沈降域の目玉の真下に圧力源 (減圧) が存在しなければならないが、ある特定の期間に典型的に見られた上下変動パターンの場合、沈降域の目玉の付近に圧力源となる火山などは分布せず、均等圧力源では説明困難であり、指向性圧力源で説明できる可能性があることがわかった。その他、指向性圧力源は、開口断層に比べて、隆起域に隣接して生じる沈降域をより効率的に生じ得ることを示した。
また、球状均等圧力源モデルに対して計算を行い、本稿で用いた数値解法の妥当性を確認するとともに、低速度表層の存在がそれの無い場合に比べて水平変位を1.3倍程増大させることなどを示した。
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