実際のデーター解析における抽出時間長,また観測時間は有限であるので, これらを基にして得られる統計値は,標本平均,標本分散等であつて,可能性のあるすべての事象にわたつての統計値ではない。
この事実を考慮して極超短波の見通し外伝搬の受信界を処理すると,短い抽出時間のときには,見掛け上の可干渉性が得られる。これによつて,WATERMANの有名な“rapid beam-swinging experiment”の結果が説明される。
また,大気の渦による電波散乱のみが,見通し外伝搬に有力であるかどうかを決定する, 一つの方法も示されている。
以上の考察に基づいて, 3,000MC/Sと1,300MC/Sを用いての海上見通し外伝搬データーを解析してみると, 多くの場合,渦による散乱だけでなく, 波状の層からの反射も大いに寄与していると考えられる。他の伝搬機構については, ここでは論じない。よく混合している大気の場合に得られた僅かの場合には, 解析の結果,渦による散乱が最も有力のようにみえる。また,ここでなされた解析は, いわゆるメソケールの天気状態を示す, ある種の尺度を与えるのに役立つであろう。
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