Papers in Meteorology and Geophysics
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13 巻, 3-4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 電波気象学への応用(I)
    内藤 恵吉
    1962 年 13 巻 3-4 号 p. 207-215
    発行日: 1962年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    実際のデーター解析における抽出時間長,また観測時間は有限であるので, これらを基にして得られる統計値は,標本平均,標本分散等であつて,可能性のあるすべての事象にわたつての統計値ではない。
    この事実を考慮して極超短波の見通し外伝搬の受信界を処理すると,短い抽出時間のときには,見掛け上の可干渉性が得られる。これによつて,WATERMANの有名な“rapid beam-swinging experiment”の結果が説明される。
    また,大気の渦による電波散乱のみが,見通し外伝搬に有力であるかどうかを決定する, 一つの方法も示されている。
    以上の考察に基づいて, 3,000MC/Sと1,300MC/Sを用いての海上見通し外伝搬データーを解析してみると, 多くの場合,渦による散乱だけでなく, 波状の層からの反射も大いに寄与していると考えられる。他の伝搬機構については, ここでは論じない。よく混合している大気の場合に得られた僅かの場合には, 解析の結果,渦による散乱が最も有力のようにみえる。また,ここでなされた解析は, いわゆるメソケールの天気状態を示す, ある種の尺度を与えるのに役立つであろう。
  • 深発地震の性質について
    末広 重二
    1962 年 13 巻 3-4 号 p. 216-238
    発行日: 1962年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    西南太平洋のフィージー群島附近は深発地震の活動の最も激しい地域である、合衆国沿岸測地局によれば,1959年7月から1961年3月迄の期間に深さ300km以上の深発地震141ケがこの地域に起つている。松代地震観測所に設置した短周期上下動の地震計は70度の震央距離にありながら驚くべきことにこのうち112ケを記録した。この記録の解析によつて次のことが結論される。
    (1) 遠距離でも深発地震は浅発に比べてよく記録される。これはP初動附近の時間当りのエネルギー密度が高いためと思われる。
    (2) マントル伝播中,地震波のスペクトル構造は殆んど変らないと考えられる。従つて記録さえあれば,深発に関する限り遠距離からでも震源の状態を調べることができる。
    (3)深発のP初動附近は短周期が卓越して,之の周期はMによつてあまり変化しない。
    logT0=-0.80+0.10M
    (4) この卓越周期から推察すると,浅発に比べて震源半径は小さく,エネルギー密度は高いことになるが,深さ500kmの高温,高圧下では可能と思われる。
    (5) 深発地震の記象は初動直後に最大動が現れ,その後急に減衰するという特徴をもつている。この特徴は深さの減ずると共に失われてゆく。
    (6) M別の発生頻度をみると,M=6以下ではM>6.5のところのようには頻度が増加していない。これは日本附近の深発について見られたことと一致している。
    日本附近の深発とフィージー群島附近の深発は種々の点で同一の性質をそなえているようである。日本には直接P波のとどかない南米の深発,また太平洋地域でも更に小さな深発を調査するために,震央近くでの観測が極めて望ましい。
  • 当舎 万寿夫
    1962 年 13 巻 3-4 号 p. 239-244
    発行日: 1962年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大阪管区気象台のレーダによつて得られたエコー高度の観測データに基づいて我が国の驟雨と雷雨の判定基準が出されている。大阪のレーダは気象研究所のものと性能が大体似ているので,先に筆者と市村の求めたレーダ因子がそのまま使える。これによつて補正を行い,雷雨と驟雨に分けた。高層気象観測のデータは潮岬のものを用い,レーダエコーの高度とその高度に対応すを気温を求めた。
    得られたレーダ観測資料をすべて適用すると臨界値として-9.8℃ の温度値がえられた。
    不連続面の存在している場合を除外して,同一気塊内における雷雨や驟雨のものに限定すれば,臨界値は-15.0℃になつた。
    この値は気象研究所のレーダにて求めた同一気象条件のもの(-15.6℃)に近い。よつて,我が国の雷雨判定規準として,雲頂高度が-15℃~-16℃の等温層を越えるものにとりうる。
    不連続線によつて発生する雷雨では規準高度が低い,雲頂高度が低い所でも雷の発生を認めることになる。これは不連続面の場合,大きな乱れ作用によつて帯電現象が早く起ることになる。
  • 三宅 泰雄, 松尾 禎士
    1962 年 13 巻 3-4 号 p. 245-259
    発行日: 1962年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地球内部からの水の供給速度と,大気中における水蒸気の光分解による水の逃失速度の差に等しい一定の速度で,海洋水が蓄積されたという仮定のもとに,原始地球の水の重水素濃度を推定した。その結果,原始地球の水の重水素濃度は,現在の海洋水のそれよりも3~4%低いことが示された。
    海洋水中の重水素濃度に関しては,蒸発のさかんな海域の海水,あるいは融氷水の混入している海水をのぞいて,重水素濃度と深さおよび塩分との間には特に相関関係はみい出されなかった。
    降水中の重水素濃度に関しては,水蒸気-液体および水蒸気-氷の二つの系に対する同位体分別作用を論じ,雨水中の重水素濃度に,水蒸気-氷の系を果たす役割りが重要であることを指摘した。さらに,水蒸気-氷の系では,重水素の分別係数が約-5℃ で極大(水蒸気-液体の系では0℃)になり,HDOの氷の蒸気ぼは,-25℃以下ではH2Oの氷の蒸気圧よりも高くなることをのべた。
    地球上における水の移動速度をふくめた重水素の収支表を作製した。海洋における降雨中の重水素濃度(-6.9%)は陸地の降雨中のそれ(-8.9%)より2%だけ高く,また大陸の降雨の55%は,海洋起源の水蒸気に由来することが結論された。
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