Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
22 巻, 3-4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 北岡 龍海, 相馬 清二, 菊地原 英和, 奥田 穣
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 143-159
    発行日: 1971年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    構造物の設計風速を求めるため,地形因子を考慮した瞬間風速の推定値をえなけれぽならない.そのため
    (1)日本全国124ヶ所の気象官署における20年以上にわたる10分間平均風の年最大値に関する観測値から任意地点の平均最大風速期待値を計算で求める方法とその結果について述べ,さらに,
    (2)平均最大風速から瞬間最大風速を推定するため,必要な両者の関係についてその地域性と気象擾乱による相異を調べた.
  • 森 信成
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 161-176
    発行日: 1971年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    低緯度準地衡風波動に適用される方程式系をスケール・アナリシスの方法で導いた.ここに低緯度とはsinψ の大きさが10-1のオーダーの範囲で,ほぼ緯度5° から20° の緯度帯に相当する.対流圏,成層圏の長波と超長波の四つの擾乱を取上げた.それらの一般的特徴は次のようである、渦度方程式は初めは順圧予報式となる.精度をあげると,それは傾圧予報式となるが,最初の傾圧性は非断熱効果のみによっており,したがって,非断熱効果を取去れば順圧予報式と同じになる.中緯度の力学的効果による傾圧性とは性質が異るようである.中緯度では第一近似の渦度方程式は気圧場の予報式になるが,低緯度では第一近似から流線場の予報式である.発散方程式から導かれるすべての式は,たとえ発散の時間変化項が含まれていても発散の予報式ではなく,常に初期値として与えられる流線場と非断熱効果とから気圧場を求める診断方程式である.これは中緯度と全く逆の関係である.熱の式も,たとえ温度の時間変化項を含んでいても温度の予報式ではなく,垂直運動の大きさを見積るための診断方程式となる.その第一近似は簡単かつ従来扱われたことのない型となる.すなわち,その中の最大項は常数安定度を係数とする垂直運動の項と非断熱効果の項で,最初にこの二つの項が釣合う.非断熱効果と垂直運動とは直接結びつけられ,大気に与えられる非断熱効果は温度場の変動に寄与することなく,そのまま垂直運動を起すエネルギーに変換されることを示している.このスケール・アナリシスで導かれるどの方程式系も,それを解くには初期値として流線場と非断熱効果の二つの量を与えなければならない.長波,超長波それぞれの特徴は次のように述べられる.長波に関しては,風はパランス方程式を満足しなければならないので地衡風ではなく,その東西,南北両成分とも大きさは10m・sec-1のオーダーであることが許される.一方,超長波に関しては,風の東西成分の大きさは10m・sec-1のオーダーである.しかし,南北成分の大きさは最大で1m・sec-1のオーダーでなければならないし,その大きさは常に連続の式から求められねばならない.すなわち,連続の式は風の南北成分を求める診断方程式である.風の東西成分の最初の近似は地衡風である.南北成分の第一近似では,その廻転部分は地衡風であるが,非断熱効果のみによる発散部分も含んでいる.
    低緯度準地衡風波動の特徴を一口で言うならば,スケール・アナリシスの精度の面から風の場に対し気圧場が追随すること,および低緯度擾乱は本来順圧波動であるが,非断熱効果は温度場との相互作用を通さずに直接擾乱の変動に影響を与えることであろう.
  • 広野 卓蔵, 佐藤 馨
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 177-193
    発行日: 1971年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    MSK震度階が我が国に適した震度階であるかどうかを試験するために,106の気象官署で, MSK震度とJMA震度の同時観測を1967年から1970年まで行った.このために作った調査表に地震時に観測した現象の項目をチェックして気象研究所に送り,著者等はそれによってMSK震度の決定を行った.地震を大地震と小地震に分けて,JMA震度と比較しながら統計を取った.その結果JMA震度は低震度に適し, MSK震度は高震度に適していることが分った.JMA震度3までの低震度をMSK震度になおす式はM=1.5J+1.5で,ここにMはMSK, JはJMA震度である.また大地震のときの両者の関係はM=1.5J+0.75と求められた.
    両者にはそれぞれ長所と短所があり,気象庁は両者を併用することが望ましい,すなわち,JMAは緊急報告用に,MSKは大地震の現地調査などに用いられる.
  • サックス I.S, 末廣 重二, エバートソン D.W., 山岸 要吉
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 195-208
    発行日: 1971年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地殻歪には永年変化と地震に伴う急激な変化の2種類があり,前者は地震エネルギー蓄積状態,後者は地震発生のメカニズムに関する重要な情報を与えるものである.歪変化の連続観測には従来5~100mの長さの水晶棒,あるいは特殊金属棒を本体とする伸縮計が用いられてきた.しかしこれらは,きわめて変化速度の遅い永年変化に適しているが,地震に伴なう急激な歪変化の観測値はあまりにも大きな分散を示し,その中のある値については理論では到底説明のつかないほど大きな値を示している.われわれはこれを,伸縮計の構造とその設置方法が地震時の急激な加速度に対して持つ“弱さ” にあると考え,この弱点を持たない新型の歪計を開発し,地震の多発地帯に設置して満足すべき結果を得た.
    Fig.2に示す通り,シリコン油で充たされたステンレススティール製の円筒を,岩盤中に堀られた深さ55mの孔底に,固まると膨張する特殊なセメントでもって固定し,周囲の岩石と一体化してしまう.円筒の上部には隘路とセンサーが設けられている.岩石に容積変化の歪が発生すると,円筒はそれに従って変形するため,シリコン油は隘路を通ってセンサーに押し出され(あるいはその逆),その量が精密に測定され,10-10の精度をもって歪に応じた電気的出力が得られる.大きな長所は,シリコン油の持つ圧縮性と隘路の持つ流体抵抗によって液体系のフィルターを形成し,センサーを大きな短周期の加速度から防護していることである.
    この新歪計を松代地震観測所の構内に300m離して2本,さらに3本目を15km離れた長野市大峰山の,東京大学北信微小地震観測所の観測坑附近に設置した.記録はテレメータにより全部松代で行っている.Fig.3に示したのが,ほとんど真南にあたるニューギニアで発生した地震について,歪計と周期30秒の地震計の記録の比較である.P波,反射時にP波を発生するSV波,およびレーリー波は歪計によく現われている.一方,SH波であるラブ波(発震後9分)は,地震計の記録で震源方向に直角の向きを持つEW成分には非常に大きく記録されているが,この波は当然のことながら反射しても容積歪を生ずるP波を発生しないので歪計の記録には現れていない.
    この歪計を設置して以来,松代の100m水晶棒伸縮計はいくつかのいわゆるストレイン・ステップを記録したが,新歪計ではそれらしきものは無いか,あっても約10分の1程度である(Table.3).
    さらにこの歪計が設計通り加速度に強いことを試験するために,周囲の岩石も含めた実際の観測状態で爆破による衝撃試験を行なった.測器より実距離46魚離れた5mの爆破孔中で,50 grmより最大1.6kgにおよぶ異った量のダイナマイトを爆発させ,最大気象庁震度Vに相当する加速度を加えたが,岩石の破壊より期待される各薬量に見合った最大6×10-9のストレイン・ステップを記録したのみで,何んら不合理な反応はなかった.
    今後の観測の進行と共に,300m離れた2地点で歪の変化に差があるか,15km 離れた点の測器で地震に伴なう歪変化の距離による減衰はどうか,永年変化について100m水晶棒の伸縮計を基準とした時の比較はどうなるか,等の問題が明らかにされよう.
  • 村松 久史, 経塚 貢, 三崎 方郎
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 209-227
    発行日: 1971年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    ロケットによる22~60kmの大気オゾン分布の観測結果を報告する.測定原理はオゾンによる太陽紫外線の吸収を利用するもので,2500-3700Å の間の3波長帯の吸収を測定した.このゾンデは1970年1月23日内之浦から打ち上げられたが,パラシュートの開傘の失敗のため同時に測定しようとした気温・風の資料は得られなかった.
    今回得られたオゾン分布は他の実験の結果とだいたい一致している.光化学平衡理論による計算値と比較してみると,30km以上では,純粋酸素大気モデルに対する分布よりむしろ,水素-酸素大気モデルに対する分布に近い結果となっている.
    ロケット観測の前日,鹿児島で行なわれたオゾンゾンデ(化学的)の分布と比較すると30~22kmで両者はあまりよく一致していない.
  • 市川 政治, 望月 英志
    1971 年 22 巻 3-4 号 p. 229-290
    発行日: 1971/01/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    現在,気象庁で地震の定常的調査業務に使用している,深さ(h) 0kmのP波の標準走時表(和達・鷺坂・益田の表)は,戦後,日本各地で行なわれた爆破地震動の観測結果-その精度は0.1秒以上であると言われている-に比べて,震央距離20~200kmの範囲で,3~4秒程度,系統的におそくなっていることや,気象庁決定のorigin time(震源における発震時)は,1~2秒早いことなどが,安芸敬一(1965)や東京大学地震研究所走時曲線研究グループ(1967)によって指摘された.
    また,この表は震央距離(Δ)は1,500kmまで,震源の深さ(h)は500kmの範囲に限られているため,日本周辺の地震の震源要素の計算に不便なことがある.
    このような事情から,上記の観測結果や,爆破地震動の記録から験測したS波の発震時(浅野ら,1967)から,日本付近の地殻内外の平均的な地震波速度分布を計算し,走時表を作った.
    この走時表の計算には,上記の速度分布と,世界的に広く使われているJEFFREYS-BULLENの走時表の計算に使用された速度分布とが組み合わされている.本表は, h≦600km, Δ≦2,000kmの範囲に至って計算されているので,これまで震源要素の計算に不便であったが,日本周辺の地震の処理に有用である.
    昭和44年(1969)5月から1年間,日本付近に発生した地震の震源計算を本表によって行ない,これと気象庁や米国沿岸測地局発表のものとを比較した.その結果は良好で,本走時表の実用性が明らかとなった.
    この走時表のほか,S-P~ 震央距離の表や,地震のメカニズムの解析に有用な震央距離~ 射出角の表,震央距離~ 震源距離の表,震央距離と震波線の最深点の表など,いろいろの研究・調査に有用な表も計算し,用意した.
feedback
Top