Papers in Meteorology and Geophysics
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17 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 荒川 秀俊, 永福 順則
    1966 年17 巻3 号 p. 127-134
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    冬の北西季節風は,あたたかい海上を吹き渡るにあたって,積雲を生じつつ,運動している、筆者等は,種子島測候所の気象用レーダーによって1965年1月上旬発達した季節風の海上の動きを捉えてみたものである。海上の雲は,寺田寅彦博士が実験された Bènard cell のような動きをして,強い季節風の流れに沿って,美事にならんでいることを示した。
  • 二宮 洸三
    1966 年17 巻3 号 p. 135-149
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1962年2月10日朝鮮半島西岸に位置した低気圧は,11日発達しつつ日本海上を通過し,ひきつづき12日には寒気の吹出がみられた。第1報ではこの冬期の典型的な気象状態のみられた3日間について,主としてTIROS IVのchannel 2 輻鮒資料をもちいて日本海上での雲の分布・発生状況を調べたが,この報告ではさらにchannel 3(0.2-6.0μ)輻射資料をもちいてalbedoの分布を求め,前報の結果とあわせて,委節風下における日本海海上での積雲の発生状況をより詳しく解析する事を試みた。その結果は次の様に要約される。
    1. albedo, channel 2 equivalent black body temperature(TBB)および雲量分布の問には非常に高い相関が見出された。
    2.寒気吹出の状態で日本海域でみられる最大のalbedoは積雲のovercast域の30%であつた。またT.V写真との比較によつて海面のalbedoは5%である事が知られた。
    3. albedo分布から雲量を推定し,ついでTBBから雲頂高度の推定を行なつた。この推定は雲量10以下の部分においても行なわれ得るが,その結果は他の観測事実ともよく一致した。
    4. 雲量は日本海沿岸沖250km附近から急速に増加しはじめる。気団の変質と比較すると気団が大陸をはなれてからのち,海面から0.4gr・cm-2程度の水蒸気補給を受けた前後から雲量が急に増加している。
    5. 雲頂高度の増加はゆるやかで,250~300km沖あいで850 mb程度,沿岸部分で800~750mb程度である。この高さは,この日,寒気団内部に存在した顕著な逆転層下面の高さと一致していた。
    この報告は気象研究所・北陸豪雪特別研究の一部分としてなされたものである。
  • 佐粧 純男, 徳植 弘
    1966 年17 巻3 号 p. 150-156
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    富士山附近に現われる吊し雲の発生機巧は阿部(1941)が風洞実験によって次の様に推定している。山頂附近に温度の不連続面があるとき,第1図で山頂0を越えた気流O-O1-O2は山肩を周った気流 A-A1,A′-A1′とO1附近で衝突し,スパイラル状の上昇流を作った後 A1-A2,A1′-A2′と下降する,これらは更にその外側の気流 B-B1,B′-B1′とB1, B1′で衝突し同様な上昇流を作る、このようにして垂直軸をもった上昇渦が翼形に配列し,吊し雲が生じる。
    吊し雲がこのような機巧で発生するとすれば,雲の前面は当然可成りつよいDisturbanceが生じているはずである。われわれが本年6月26日に観測した吊し雲は,写真1に示すようにこの機巧を裏付けていると思われる。又この雲の8ミリのコマどり撮影から変形の様子を解析した。解析の結果吊し雲の大きさは大体2~3km,始めはほぼ定常的に大きさを減少していったが,後には15分位の間隔で間歌的な雲の発生を伴ない乍ら消滅した。
  • 前震,余震および群発地震の一定義とその地震統計への応用
    山川 宜男
    1966 年17 巻3 号 p. 157-189
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    前震と余震の研究は,対象それ自身に対する興味だけでなく,本震の発生機構に対する手がかりを与える可能性からも,地震学上重要な研究課題の一つであろう。また前震の調査は地震予防の立場からもかかせない、群発地震もまたいろいろな意味で興味ある対象である。しかしこれらの地震活動-ここでは,常時地震活動に対比させて,一まとめに異常地震活動と呼ぶことにする-の調査の前に,先ずそれらの定義を明確にする必要があることは論を待たない.この研究は前震,余震および群発地震活動の地震学的あるいは地球物理学的特性を吟味しようとする試みであるが,ここではその手始めにこれら異常地震活動の定義の客観化に対する一つの試みとして,統計学において異常値の検出に用いるトンプソンの検定を利用する方法を提案し,実際に宮崎県沖の地震活動に適用した。その結果0.05の信頼限界をとると,宮崎地方気象台において1日あたり0.7~0.9回程度の近地地震(S-P時間約15秒以内)が観測されるような期間は,異常地震活動期(たとえば,前震,余震活動期)であると判定できることがわかった。今後地震学上の知識を加え,スミルノフーグラッブの検定等を採用して改良を加えれば,かなり客観的な前震,余震および群発地震の定義を得ることができるであろう。
  • 関原 彊, 鈴木 正
    1966 年17 巻3 号 p. 190-199
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    日本の6地点におけるエプリー日射計による7ケ年間の水平面日射量の測定値と同じくジョルダン日照計による日照率測定値との相関関係を最小自乗法により調べた。即ち回帰直線Q/Q0=a+b n/N(Qは日射エネルギー月平均1日総量,Q0は同じく大気外における理論値,nは月平均日照時聞,Nは同じく可照時間)において,係数abの値および平均大気透過率をt(但し,t=〓〓a+b,mは平均air mass)の地域別変化,月別変化を吟味した。
    総体的に相関関係はよく,大阪の0.74を最低として0.9付近のかなり高い相関係数を示している。大阪については大気汚染に基づくと思われる大気透過率の低下もみとめられ都市の特殊事情がみとめられる。その他の地点についてもそれぞれ独特のa,bの値が見られ,統計的吟味を加えてもそれぞれ有意な差が認められる。これはDaviesの行なった西アフリカの結果が,地域的に画一の傾向を示したのに比し日本の気候の複雑性を物語っている。
    日本全国のデータ(大阪を除く)についての統計結果はa=0.22,b=0.52で相関係数0.91であった。これらから得られるtは0.79でDAVIESおよび他の著者等の提唱している0.83に比しやや小さい。しかしわが国の日照測定がジョルダン日照計によるものであり,外国のカンベル,ストークス日照計に比し約10%高感度であることを考慮して補正すると大体外国の他の著者等の結果と一致する。このことから逆にこの種の統計において日照計の感度を統一することが重要であることが指摘される。
  • 川村 清, 桜井 澄子
    1966 年17 巻3 号 p. 200-209
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1961年の冬と1962年の夏に群馬県須田貝で,また1963年の初秋と1965年の冬に千葉県富崎で大気二酸化窒素(NO2)およびオゾン濃度を観測した。その結果, NO2濃度は日出後約1時間および日入後1~2時間においてそれぞれ極大値をとるような規則正しい日変化を示した。この変化の傾向はわれわれがさきに乗鞍岳の山腹および東京でえたものと完全に一致する。汚染大気中におけるこの日変化は気象条件,特に逆転層の形成および汚染源からのNO2放出における日変化を考えることによって説明されている。清浄な大気中での場合は人工的発生源のかわりにわれわれが提出した土じょうからのNO2放出説をとり入れることによって説明できるだろう。
    須田貝の観測点近くの積雪が溶けている日の夕方に高濃度のNO2が観測された。大気に露出した地面からのNO2放出速度がこれらの日において異常に大きかったのかも知れない。太平洋の沿岸にある富崎では強い海風のときNO2濃度が低く,特に冬のときは平均して1.5μg/m3であった。須田貝におけるNO2濃度の平均値は夏,冬共に3.6μg/m3であったが,富崎での初秋および冬の値はそれぞれ3.7および7.3μg/m3であった。富崎の冬における値は大きいが,これは観測点北方にある諸都市の汚染された空気が流入したためと考えられる。
    須田貝の観測点は海抜701mにありながら富崎におけるよりもオゾン濃度は低かった。これは前者が小さな盆地に位遣しているため,風が弱く,従ってじょう乱等による大気の上下混合が不活発なために生じたと考えられる。
  • 三宅 泰雄, 猿橋 勝子
    1966 年17 巻3 号 p. 210-217
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    海水中の酸素の減少は有機物の酸化(呼吸)によるものとし,有機物の分布,水の拡散などを考慮に入れて,酸素極小層の出現を考察した。
    海洋においては,海流,水平および鉛直方向の拡散があるので, 酸素の分布は生物地球化学的な過程と,海水の動的な運動の二つの重なり合いによって決定されると考えられる。
    著者らは,溶在酸素の時間的変化に関するSverdrupの方程式を用いて, 北太平洋西部海域における酸素の分布を考察した。
    計算の結果は,定常状態においては,水平方向の移流は,水平方向の拡散や生物による消費にくらべてかなり大きく,水平方向の移流が,鉛直方向の拡散とほぼつりあっていることが分った。
  • 三宅 泰雄, 猿橋 勝子
    1966 年17 巻3 号 p. 218-223
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    海水の放射性炭素の含有量から,深海水の平均寿命(一度深海に没してから, ふたたび表層に出るまでの平均時間)が求められているが,著者らは炭素の循環に着目し, 海水の平均寿命といわゆる放射性炭素年令との間の関係を明らかにした。
    海水中の放射性炭素は放射能壊変にのみ支配されるものではなく, 生物による摂取, 大気-海洋間の交換,表層- 深層間の交換,有機物の分解による無機炭素の再生産を考慮しなければならない。
    計算の結果は,平均寿命として表面水については5~7年,深層水については200~300年という値が得られた。これらは従来考えられている深海水の1000年をこえる値にくらべると, かなり小さい。
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