Papers in Meteorology and Geophysics
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30 巻, 3-4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 柳沢 善次
    1979 年 30 巻 3-4 号 p. 111-121
    発行日: 1979/11/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    鉛直ビームの8.6mm波測雲レーダーを用いて,晴天時のパルス状エンゼルエコーの観測を行った。このようなエンゼルエコーは,高度200~1,500mの自由大気中の下層に発生し,パルス状エコーの持続時闘は1~3秒程度で,ビーム幅と発生高度の風速に関係していることも明らかになった。
    エンゼルエコーは,日出後約2時間頃に地表面近くの高度で最初に発生し,エコーの発生高度は時間とともに上昇して11時頃1,000m以上の最高高度に達する。最初のエンゼルエコーの発生は,夜間に形成された気温逆転層の解消に関係し,エコー発生高度は,3~5m/minの速度で上昇していることも明らかになった。また,エコー強度も時間とともに増加していることも示された。
    パルス状エンゼルエコーのレーダー反射断面積は,10-4~1cm2の間に分布し,3cm波ドップラレーダーを用いて観測したエコーの鉛直速度は,±1m/sec程度の値である。この論文では,レーダー,地上気象,係留気球等の資料を用い,エンゼルエコーの発生,エコー発生高度の上昇,エコー発生数の時間変化等と地表面付近の熱・水蒸気の鉛直輸送との関係について解析を行った。
  • 安田 延寿
    1979 年 30 巻 3-4 号 p. 123-132
    発行日: 1979/11/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    AMTEX観測に於いて得られた海上のラジオゾンデのデータを用いて,大気境界層のロスビー相似則の係数C及びDの値を評価した。大気境界層の高さhは0.3u*/ |f|に等しいと仮定した。温度と温度の鉛直分布について,海面直上に接する層流副層が考慮されている。得られた係数Cは中立温度成層に近い場合,不安定成層ならば正の大きな値,また,安定成層ならば負の大きな値をとる。従来の研究では,Cは中立に近い条件下で安定度と共にゆるやかに変化するとされているが,本研究の結果はこのような従来の研究結果と一見矛盾するように見える。しかし詳しく調べてみると,本研究の結果は合理的であり,従来の結果とも本質的には矛盾していないことが理解される。本研究で得られた係数C,Dの実験公式を用いて,ロスビー相似則に基いて計算した顕熱と水蒸気輸送量の値はパルク法によるものとよく一致する。
  • 北患 寿江, 丸山 晴久
    1979 年 30 巻 3-4 号 p. 133-139
    発行日: 1979/11/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    混合型の自動氷晶核測定装置を用いて,1967年9月から1970年12月まで,気象研究所の構内で連続的に大気中の氷晶核濃度を測定した。得られた資料のうち最も測定の連続している1968年4月から1970年3月までの二年間を選んで,濃度の変化について検討した。
    その結果,10分間隔で測定された-20℃核の平均氷晶核濃度の季節変化は,冬季には66.2個/lと最も高く,夏季には7.6個/lと低く,春季と秋季は20数個/lで似たような価であった。また梅雨入りから梅雨あけまでと9月から10月にかけての秋霖期の平均濃度には顕著な差はみられなかった。
    月別の氷晶核濃度は,1月,2月,12月に高く,6月,7月,8月に低かった。特に8月は年間の最低値3.8個/lを示し,月によって大きく変化していることがわかった。季節別に濃度の日変化をみると,変化のカーブは,夏季に比較して冬季の方が変動が大きく,しかも,冬季には濃度は夜間に低く,昼間に高い傾向がはっきりしていた。
    氷晶核濃度のばらつきを季節別に調べてみると,濃度の分布の標準偏差植は夏に最も大きく,冬季に最も小さかった。すなわち,夏季のばらつきが年間を通して一番大きいことがわかった。
    以上の結果について気象学的な検討を加えた。この報告書は,氷晶核濃度が過去と現在でどのような変化を示しているのか,その年々の変化を知るための第一段階のものである。
  • メカニズムに関する一つの提案
    関原 彊
    1979 年 30 巻 3-4 号 p. 141-151
    発行日: 1979/11/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    冬季高緯度地方に入射する太陽微粒子流(KeV程度のオーロラ粒子とMeV程度の太陽プロトン)がトラフの発達とか気圧傾度の変化という形で対流圏力学現象に影響を与えることはこれまで多くの著者により指摘されている所である。
    この論文では最近人工衛星観測によりフレア時の太陽プロトン流が上層のオゾンの減少をもたらした事実にもとづき,これら高エネルギー粒子又はオーロラX線が電離現象およびそれにひきっついて起る筈のイオン化学過程に新たな解析を加えて見た。
    それによると従来のこの種の議論は上層のNO生成に注目して行なわれ,出発点として窒素分子の解離が強調されてO+イオンの生成が過小評価されていたきらいがある。更にO+とCO2の反応速度はO+とN2との反応速度より三桁速いという実験事実がある。次にCO2+イオンのエネルギー準位はN2, O2+ と異なり高準位で安定なものが少なく著しく解離しやすいことも知られている。
    これらの理由から成層圏まで達した高エネルギー粒子やオーロラX線は炭酸ガス分解を惹き起こす可能性が非常に強い。
    次にその放射的影響の議論が試みられた。炭酸ガスの分解は15μ 吸収帯の消失と一酸化炭素の4.7μ 吸収帯の生成を意味するが地球の放射温度からは15μ 帯の消失が重大な意味を有する。圏界面附近は下からは大量の水蒸気からの赤外放射と上からは大部分成層圏の炭酸ガス15μ 帯の赤外放射を吸収して気温形成に関与している所である。この15μ 帯は同時に水蒸気吸収帯とも重なっているために上からのCO215μ 帯の放射消失は直ちに上向きの水蒸気による赤外放射とのバランスに影響してその附近の気温降下をもたらす,これは丁度成層圏の尿酸ガスが圏界面気温に対して温室効果をもっていることになる。
    この圏界面の広域にわたる気温降下は高緯度地方の気塊の不安定化をもたらすことになりその力学的結果としてはRoberts等のいうトラブの発達,Stolov等のいう中高緯度の気圧高度差の変化,あるいは筆者等の報告した舘野の偏西風の増加という一連の結果をもたらし得る。これらを別の言い方で云えばNewe11等がまとめた大気の子午面循環における3セル構造において,高緯度にお
    ける直接循環が放射冷却により促進された結果現われた現象であるといえる。
    圏界面気温がフレアの24時間後に降下したことはSchuurmans(1969)により報告されていることであるが観測における今後の課題はオーロラ時におけるこの現象の確認とそれにも増して成層圏の炭酸ガス減少の確認が重要な問題となる。
    ともかくもここに太陽微粒子流の影響と対流圏力学現象の変化との関係に首尾一貫した解釈が与えられることになるであろう。
  • 柏原 静雄, 浜田 信生, 山本 雅博
    1979 年 30 巻 3-4 号 p. 153-165
    発行日: 1979/11/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地球の自由振動については,1960年のチリ地震以来,数多くの観測および解析結果が報告されている。しかし観測の歴史はまだ浅く今後さらに観測資料の蓄積が大切であろう。
    現在気象庁で用いている測器で地球の自由振動のような長周期地震波の解析に利用できるものとしては,松代の石英管式ひずみ計・WWSS地震計・ASRO地震計および地震課で東海・南関東地域に展開中の埋込式ひずみ計がある。これらの器械は観測期間がまだ短かいこともあって,今日までに,自由振動の観測および解析はあまり行なわれていない。このため今回,松代の石英管式ひずみ計および伊良湖・三ケ日の埋込式ひずみ計の資料を用いて1977年8月にインドネシア・スンバワ島付近に発生した地震の解析を行なった。主な結果は次のとおりである。
    (1)石英管式ひずみ計から0Snについて29個,1Snについて10個,2Snについて8個,lTnについて23個のモード,また埋込式ひずみ計から0Snについて29個のモードの地球の自由振動周期が得られた。これらの値と今日までに求められている観測値の平均値〔Anderson・Hart(1976)による〕との差はほとんどのモードで約0.5%以内である。
    (2)観測から得られた地球の自由振動周期を用いて表面波の位相速度を求めた。求めたレイリ波の位相速度は,Anderson・Hartの値から求めた速度よりやや大きくなる傾向が見られた。この相違は解析した地震の波の伝播径路中に位相速度の大きい海洋的地域および盾状地的地域(Canadian・Brazilian shields)の占める比率が大きいために生じたものであろう。
    (3)自由振動の解に含まれる関数d2Pnm(cosθ)/dθ2から求めた位数の零点列と地震記録の周期解析から求めたスペクトルピークの極小を与える位数の列を比較して自由振動のデグリーを決めた。松代の石英管式ひずみ計による伸び縮み振動に対応するスペクトルを用いた場合,デグリーは0または2となる。
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