Papers in Meteorology and Geophysics
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12 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鈴木 栄一
    1961 年12 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    極値推測論は多くの人によつて研究されているが,推測に伴う誤差表示はあまりやられていない。ここでは大標本的方法であるが,誤差を評価する技術的手順を二つ与え,その応用例を示した。一つは有限標本での極値分布の式をもとに期待値,分散を求めるが,GUMBELの方法が過小推定の傾向をもつのに対し,これは過大推定の傾向をもつ。他はtuncated分布における正規化変換曲線の外挿で,パラメーター変数の外挿に問題を帰着させるので,割合妥当な結果がでるし,誤差も少いが,truncation pointの設定次第で多少結果がかわるという弱点がある。現在の段階では誤差を少くする意味で後者が望ましい。そして極値推測とそれに伴う誤差は自ら推測の限度を規定することにもなり,現在やられている相当長期間の推測は誤差の中に推定値が埋没してしまう傾向からみてあまり意味がないことを示唆する。
  • 当舎 万寿夫, 市村 市太郎
    1961 年12 巻1 号 p. 18-29
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    Radarによる雲のecho観測で,そのtop高度による驟雨と雷雨の判定法がのべられている。このために,RHIによるecho観測が用いられ, echo top の高度比較をなすのにビーム幅による補正,電波屈折率や地球の曲率に関する補正,radar反射率に関する補正を行つた。館野におけるradio sondeの dataより echo top の温度がきめられ,雲の過冷却部における厚さと零度層高度との関係が掛された。驟雨と雷雨についての累積頻度曲線をつくつてみると,echo topの温度でcritical vaiue として-15.6°Cをえた。これは雲頂が一15.6°C層以上に成長すれば90%の出現率で雷雨になる。この層に達しない雲頂は90%で験雨になる。この高さは7.5kmから 8.2kmの問にある。
    雷雨における上昇気流の速さが水滴の凍結過程によつて計算され,凍結開始高度からの雲頂高度より求めた。この結果,平均して,雷雲内の上昇気流はかなりの速さになつている。-15.6°C層の面において,上昇気流の速さが水滴の半径に関係する Critical value以上になれば,その地域に雷雨の発生する必要条件を求めうる。
  • 第1報 理論的取扱
    根本 茂
    1961 年12 巻1 号 p. 30-52
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気中の自然の風と風洞による模型風との間の相似の問題はこれまで多くの人々によつて取扱われて央たが,いまだに明確な結論は得られていないように思われる.その主なる原因の一つは,相似の条件の一貫した適切な取扱い方が充分にわかつていないことにあると思われる.そこで著者はこの点についても考えてみた.風洞による模型実験は,風洞自身に色々と制約があるために,時間的にも空間的にも限られた範囲の実験しか出来ないことは勿論であるが,しかし,一般に自然大気中では,分子粘性の項は渦動粘性の項に比較して小さいので無視出来,対象とする範囲が比較的狡ければ,コリオリスの力および静圧の変化も考慮しなくて済み,また風の強い場合には気層の安定度の影響も小さく,これも無視してよいであろう.従つて,ここに述べられるような限られた条件のもとに得られた結果でも,実用的な価値は十分持ち得ると考えられる.従来相似法則としては,既によく知られている如く,Reynolds numberを一致させればよいとの考え方があり, 自然風の相似の問題を取扱うに際しても,これとの類推により,分子動粘性係数の代りに渦動粘性係数を概き換えたReynolds numberを一致させればよいということが,例えば,井上などによつて提案されている.これは,結果的にはここで論じた結果と同じであるが,乱流構造の相似までは具体的に考えられていないように思われる.著者はまず,自然風と模型風のそれぞれについて,代表的な長さ,代表的な速度を用いて,無次元の変数および演算子を定義し,これらを用いて自然風の乱流場ならびに模型風の乱流場の平均流の運動方程式ならびに連続の方程式をいつれも無次元の方程式に書き換え,この両者の流れが相似になるためには,これらの無次元の方程式が同一の形を持つべきであると考え,そのようになるための条件を以て相似の条件とした.その結果,両者の時間スケールの間には〓〓なる関係がみたされ,且つ,両者のEddy Reynolds numberを合わせればよいという結果を得た.得られた結果は井上などによつて提案された相似の条件と同じであるが,このような取扱い方をすれば,色々な場合(例えば,垂直方向と水平方向とで縮率が異なつている模型についての実験など)について相似の問題が近似的ではあるが,比較的容易に比較的明確に取扱えると思われる.尚,井上は,Eddy Reynds numberを合わせるという条件のうえに,更に,乱れの強さを合わせるという条件を付け加えoてlいるが,これは,Eddy Reynolds numberを一致させることと同じ意味を持つものと考えられる.ここではこの点も明らかにされた.しかし,Eddy Reynolds numberを一致させるという相似の条件も,このままの形では,模型実験を行うに際して何等具体的な方法を明示出来ないように思われる.それは,Eddy Reynolds numberの中に含まれている渦動拡散係数が今まで容易に決められなかつたからである.そこで,更に,この点について考え,最近の乱流の相似理論によつて得られた関係を用いて渦動拡散係数を平均渦のスケールに関連させて決め,従来殆んど考慮されなかつた両者の乱流構造の相似まで考慮してEddy Reynolds number一致の条件から,風速の縮率と模型の縮率との間の関係として, 〓〓なる関係を導いた.同時に,また,単なるMean flow patternのみの相似と,乱流構造の相似まで考慮したMean flow patternの相似との間の相違を明らかにした.更に,温度成層のある場合の流れの相似の条件として,自然の場合の流れと模型の流れの対応する2高度間の温位差,模型の縮率,風速の縮率の間には,近似的に,〓〓なる関係のあることを理論的に導いた
  • 佐貫 亦男, 木村 茂, 馬場 素生
    1961 年12 巻1 号 p. 53-56
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    レーダー用アンテナ模型の風洞実験により回転を助けるための尾翼をつけるときは,回転速度がアンテナ単独の場合の2倍となり,回転速度を一定とすれば,アンテナ駆動動力を著じるしく軽減できることを知つた。なお,アンアナだけでも,風の中では一度回転を始めると回転を持続する性質がある。
  • 関原 彊, 村井 潔三
    1961 年12 巻1 号 p. 57-74
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    直射光及び太陽周辺の空の光を分光測光するために新しい装置を設計製作した。その主な部分は,テレスコープ,ダブルモノクロメーター及び二次電子増倍管であり,テレスコープの開口角は約54'であつて,空の任意の方向からの光を取り出す事が可能で,太陽から1° 離れた方向まで測定出来る様特に注意して設計した。周辺光については太陽を含む鉛直面内で,太陽から天頂の方え2°,3°,4°,5°,6° 及び10° の方向の光を,種々の太陽高度において4種の波長について測定した。直射光は,約12ケの波長を選び出し,種々の太陽高度について測定を行つた。直射光の測定から求めた消散係数の波長に対する変化の模様は近紫外部では,短波長の方え急激に増大する傾向を有し,可視部の長波長部分では殆ど変化がない。又,近紫外部において Sekera及び Deirmendjianが問題として取上げている異常な透明現象は観測されていない。周辺光の測定から得られた結果の一つとして,極めて太陽高度の低い時に,空の光が太陽から離れるに従つて強度を増す傾向を示しているが,これは,空気分子の多重散乱による影響として説明される様である。以上の二種類の測定の結果を,Deirmendjianあるいは Bullrichの計算値と比べて見ると,大気中に存在するエーロゾルの粒度分布としては,所謂4乗則とは異つたものに対応している傾向が見られた。
  • 三宅 泰雄, 川村 清, 桜井 澄子
    1961 年12 巻1 号 p. 75-84
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    東京の地面近くの大気中にあるオゾソと亜硝酸の濃度を郊外と都心部の二地点で測定した。郊外で行つたオゾン測定の結果は4月に極大(29μg/m3),10月に極小(14μg/m3)をもつ節変化を示した。都心部で測定したオゾソの日日変化は郊外でのそれと密接な関係にあり,夏の日平均値は都心部の方が郊外より大きい。都心部でオゾンが多いことは大気汚染強度が季節により違うことを考慮して説明した。都心部の大気中ではオゾソがつくられているものと思われる。都心部の亜硝酸濃度は郊外より約2.5倍高く,両地点共に冬が最大であつた。さらに,オゾンを測定する際の妨害物として亜硫酸ガス,亜硝酸および硝酸塩の影響がしらべられた。その結果東京では亜硫酸ガスが最も大きい妨害物であることがわかつた。
  • 三宅 泰雄, 猿橋 勝子, 葛城 幸雄, 金沢 照子
    1961 年12 巻1 号 p. 85-88
    発行日: 1961/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    北太平洋西部における表面海水中のCs-137およびSr-90の濃度を測定した。Cs-137は0.8~4.8μμC/l,Sr-goは 0.6~3.1μμC/lであつた。これらの値を北大西洋および北太平洋東部で得られた値と比較すると,北太平洋西部ではCr-137およびSr-90の濃度が非常に高いことが分つた。汚染の高い原因については,北太平洋の熱帯海域にある核爆発実験場からの核分裂生成物の直接流入によると考えられる。海水中の37/Sr-90の比が低いことについても考察を行った。
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