Papers in Meteorology and Geophysics
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33 巻, 2 号
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原著論文
  • 松尾 敬世, 佐粧 純男
    1982 年33 巻2 号 p. 55-64
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     ルーチンの観測データの解析と理論計算によって、雪あられが大気中において融け始める高度と融け終わる高度を求めた。 理論計算に用いた雪あられの融解モデルでは、表面で生成した水は内部へしみ込むものとした。
     その結果、雪あられの融解が開始する高度は大気の相対湿度が低くなるほど下がり、また完了する高度は相対湿度が低く、雪あられの粒径、密度が大きくなるほど低くなることが明らかになった。これは、雪あられの融解過程が本質的には雪片の融解過程(松尾・佐粧, 1981a, b, c; 松尾他 1981d) と同じであることを示している。
  • 高島 勉, 高山 陽三, 松浦 和夫, 内藤 恵吉
    1982 年33 巻2 号 p. 65-78
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     2つの静止衛星 (GMS-1およびGMS-2) による雲頂高度立体観測の可能性について検討した。GMS-1は赤道上東経140°に位置し、GMS-2はGMS-1と交換する間赤道上東経160°に位置している。雲頂高度観測は可視赤外2チャンネルで1981年9月17日に行われ、GMS-1では23:32 GMT、GMS-2では23:36 GMTで観測開始時刻はGMS-2の方が4分遅いが、衛星の姿勢とスピンレートが異なるため、観測対象とした雲の観測域での時間のずれは1分以内となった。
     なおこれらの観測は気象庁気象衛星センターの努力によって完逐された。
     二色刷の雲立体写真の質を高めるため、すべての画素を緯度―経度座標系に移し変え、画像のゆがみを除去した。計算による雲頂高度推定には、地球を回転楕円体と仮定して求めた。解析から、相対誤差200mの精度で雲頂高度を求められる事がわかったが、絶対高度測定精度向上のためには、雲の近傍に位置決定のための指標 (地形) が数多くあり、又正確な衛星の軌道要素も必要とする。精度の高い雲頂高度は赤外窓領域を用いる方法では求められなかった。これは雲のemissivityや垂直温度分布が不明であるためである。
  • 高山 陽三, 高島 勉
    1982 年33 巻2 号 p. 79-83
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     気象研究所設置プールにおいて、熱電対で水面上10cmの高さから水面下6cmの深さに至る水温を測定し、同時に放射計 (7.5~11.5μm) で表皮水温を測定し、それらの相関を求めた。また色々な気象状況で、天頂角を30度から80度まで放射計でスキャンして表皮水温を測定した。実測表皮水温を風によって生じる水面の射出率の方向特性を基に求めた表皮水温と比べると、天頂角が大きい所ではそのずれが大きく、このずれは環境条件、特に雲の分布に依存している事がわかった。また表皮水温は水面下の水の温度と異なるため、衛星で測定する海水の放射温度の評価には、船による海水の放射温度との比較が必要である。
  • 葛城 幸雄, 広瀬 勝己, 杉村 行勇
    1982 年33 巻2 号 p. 85-93
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     1974年から1980年までの、東京および筑波における239+240Pu降下量の研究結果をまとめた。核実験開始以来1980年末までのプルトニウム全降下量は約1.2mCi/km2となる。239+240Pu/90Sr比は、全蓄積量比で1.6%であることがわかった。太平洋側と日本海側との降下量の差をくらべるため、1963年と1964年の東京と秋田のプルトニウム降下量の比較を行ない、秋田が東京にくらべ約2倍の降下量を示すことがわかった。1980年4月より、新しいStationに移ったため、データの継続性を明らかにするために、東京と筑波の降下量を比較し、よい一致を示すことがわかった。したがって、新らしいStationのデータはそのまま現在までの測定値につづけられることを明らかにできた。日本における地表大気中のプルトニウム平均濃度および、プルトニウム同位体の全降下量の推定値についても報告する。
  • 赤松 英雄
    1982 年33 巻2 号 p. 95-115
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     長崎港におけるセイシュ (あびき) について統計的に処理し、つぎのような結果を得た。3月が最多発生月であり、年間の発生数は年によりかなり変動がある。また、振幅別発生回数は40∼60cmのものがきわめて多い。「あびき」の継続時間は最大振幅が発生したのち3~4時間後には振幅は1/2~1/3に減少する傾向がある。「あびき」の週期は35分前後のものが多く、長崎港の固有振動の基本モードの周期に一致する。
     つぎに1979年3月31日に発生した巨大「あびき」について、その実況を検潮記録から求め、最大振幅が278cmであった事を示した。グリーンの法則から湾口に到達した第一波の波高は約20cmと推算した。また、過去の増幅係数から湾奥の最大振幅は467cmと推算した。
     「あびき」による被害について、もっとも典型的なものを2例述べた。
     さらに、「あびき」の振動分析から、35~36分、63~67分、17~19分の周期のパワーが大きく、そして今回の「あびき」発生の引き金になった気圧急昇について、各地の気圧記録、高層気象観測資料、ひまわりの可視画像、及び気象レーダー資料から分析した結果、局地的な寒気の流入によるものであった事を示した。
     長崎港の振動特性を知るためには数値実験を行い、湾内15点の潮位変動には、35分、20分及び10分の周期の振動が存在し、それぞれの周期は湾の基本振動 (単節)、2節、及び3節振動であることを示した。
     これらは、日比谷、梶浦 (1981) の数値実験から得られた結果とほぼ合致し、巨大「あびき」は長崎港内で効果的に増幅された結果によるものであることを述べた。
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