Papers in Meteorology and Geophysics
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26 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 斎藤 直輔
    1975 年26 巻4 号 p. 121-147
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    冬期中華大陸及びその近海では風向の垂直変化が著しい。すなわち,下層では地表気圧分布から期待される北西ないしは北寄の風が卓越し,700mb以上では安定な西風が支配的である。この様な一般状況下における逆転層についてAMTEX'74の資料を用いて解析した。AMTEX領域の逆転層は一般に850mbと700mb間に形成され,黄海より太平洋西部にまで及んでいる。逆転層の形成は寒気溢出と共に始まる。大陸内での温度成層が安定であること,海洋上でおこる自由対流,寒気移流に伴う断熱的下降昇温の三つが逆転層形成,維持の主因である。この結果,海面からの熱エネルギーの垂直輸送は逆転層で阻止されてしまう。
    寒気温出が終った後は一般に移動性の高気圧がAMTEX領域から本邦を通過するが,これに伴い下層の風系は西及至南西流に変わる。この段階においても下層の風系と700mb以上の安定な偏西風帯との間に逆転層を認めることが出来る。然しこの時期は一般に逆転層下の成層状態はより安定であり,逆転層の下限の高さもより高い。寒冷な高気圧に伴う気流と逆転層からバーシー海峡附近に中心を持つ700mbの高気圧に伴う逆転層と下層風への交替が逆転層の下限の高さの変化,より安定な成層への変化と関係がある。
    総観スケールのじよう乱が接近すると,スケールのより小さい湿舌と乾燥域が逆転層下にあらわれる。最も強い水平の水蒸気傾度は900mb附近にみられた。これらの湿舌や乾燥域の形成は水平移流によるのではなく積雲対流の集合に伴う鉛直循環系に関係することが解析上から考えられる。鉛直循環に伴い,広域の逆転層下に更に低い局地的な逆転層が湿舌の両側に形成された二重構造が解析された。総観スケールのじよう乱の接近に伴いしばしば逆転層の一部が破壌され,積雲対流の集合が発達した。逆転層より上空の雲は大陸からの気流の水蒸気量に依存し,特に南中国およびその近海の気流の水蒸気量に関係する。逆転層の動向を示す量的な指数として,700および850mbの温位から決めた鉛直安定度とその時間変動の数値解析を行った。その結果,(1)ここで定義した安定度は逆転層の時間傾向をよく代表する。(2)断熱条件が許される期間では,温位の水平移流の高度による差(differential advection)と安定度の正味の鉛直輸送の二つの項がいつれも安定度の時間変化を記述するのに大切であること。(3)寒気溢出の強い時期では,下層の非断熱効果が前記の二つの項を補償するのに大切であることが示された。
  • 二宮 洸三
    1975 年26 巻4 号 p. 149-165
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1965年1月16日北陸上空を優勢な上層寒冷渦が通過し,いくつかの中規模擾乱の発達がみられた。これらについてすでに松本・二宮・秋山(1967a)が詳細な“主観解析” を行っているが, “ 主観メソ解析” についてよせられている疑問は必ずしも少なくない。
    この日の擾乱のうち,最も顕著であったものを取り上げ,二宮(1974a, b)の解析方法によって,“ 客観メソ解析” を行って,前報との比較を試みるのが本報告の目的である。
    得られた気圧場・風速場については両解析の結果の間には本質的な差異はない。得られた発散場のパタンは相互によく一致しているが,客観解析によるものの数値は,やや少ない。主観解析による渦度場のやや細かなパターンは,客観解析では除かれている。これらの差異はsmoothingによるものである。
    最も基本的な擾乱の特徴-pV,p~divの位相関係およびdivergence方程式の主要なbalanceが∂D/∂t(V+V)▽D+1/ρ▽2ρ=0のかたちでなり立っていることは,この客観解析でも確められた。
    一方,解析された風の場は,渦度方程式のbalanceを充分に満していないが,各頂の大きさの推定から,∂ ζ/∂t+(V+V)▽ ζ+(f+ζ+ζ)D+(ωx(vz+vz)-ωy(uz+uz))=0が主要なbalanceであることが推定された。これは,平均場とメソ擾乱とのintefaction term(ζDxvz)が渦度場の移動に関係していることも意味していよう。
  • 吉住 禎夫
    1975 年26 巻4 号 p. 167-180
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1970年7月7目,朝鮮半島上の切離低気圧の南東象限にあたる九州付近に,不安定線が現われた。7月7日の情況についての既に報告されている研究では取扱われなかった,7月6日における不安定線の発達の情況を調べた。
    不安定線は7月6日朝,切離低気圧の南西の東支那海北部で形成された。切離低気圧が完全にcut-offされた後,寒気核の風上側での暖気移流,既ち上昇流の強まりと,寒気核下での安定度の減少により,積雲対流が発達しやすい大規模な状態が東支那海北部で6日朝に出現した。上層の切離低気圧と,台風が衰弱した下層の低気圧と作用で生じた,対流圏下層の温度傾度集中帯に沿って対流雲発達以前から存在した下層ジェットにより,積雲対流が帯状に組織されたと考えられる。
  • 籾山 政子, 片山 功仁慧
    1975 年26 巻4 号 p. 181-197
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    筆者らは,先の脳血管疾患の原因疾患別の季飾変動形態の研究において,脳出血に比べて高齢者に多い疾患である脳硬塞に,夏季が約24℃を越す地域に死亡の夏山があることを見出した。本報ではその死亡の夏山が,脳硬塞に特有の現象か,他の疾患死亡にもありうる現象かを,心疾患,結核,肺炎・気管支炎および胃の悪性新生物につき検討し,得られた結果の地域性につき若干の考察を加えた。
    1.気温の上昇に伴って低下した死亡率が夏季に再び増加する現象は,胃の悪性新生物を除き,いずれの疾患にも見られた。悪性新生物の死亡形態は他の疾病死亡と異なるものと思われた。
    2.脳硬塞死亡の季節変動形態は,およそ地域の気候的特性と関連づけて地域区分できたが,慢性リウマチ性疾患が脳硬塞死亡では夏山のない地域においても夏季に死亡増加を呈する。また結核死亡の夏山は脳硬塞死亡の夏山より顕著である。これらのことから,夏に死亡が再び増加する現象は,単に高齢者の死亡の1つの特徴であるのみならず,或る地域の社会経済的背景の1つのあらわれであるとも解釈した。
    3.肺炎・気管支炎の死亡の夏山は,乳児において他の年齢層より明瞭である。また該疾患では乳児と高齢者の方が,その中間の年齢層におけるより死亡の冬山がやや低い。肺炎・気管支炎の乳児の死亡の冬山は以前は著しく高かったものであり,その山の低下後の最近の低い夏山の出現は,冬季の暖房様式の改善の効果とそれによる死亡の年間変動の脱季節化とを示唆するものであろう。
  • 宇治 豪
    1975 年26 巻4 号 p. 199-217
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    数値波浪予報モデルを用いて台風域内の波浪の性質を調べ,台風域内の波高分布,波浪の二次元スペクトルが台風の進行速度によってどのように変化するかを明らかにした。また,台風が上陸する場合に海岸に沿っておこる波浪の特徴,および台風が放物線の進路を取る揚合の波高分布を調べた。
    得られた波高分布はうねりが卓越する領域で井島ら(1967)の得た結果と多少異っている。台風域内の波高の最大値,およびそれの台風の進行速度にともなう変化は宇野木(1957)の結果と良い一致を見た。
  • 村松 久史
    1975 年26 巻4 号 p. 219-264
    発行日: 1975年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    成層圏・中間圏の光化学で最も基本となる酸素分子の解離率を計算するときの不確実な因子として,酸素分子のシューマン・ルンゲ吸収帯の前期解離,太陽紫外線の強度分布,シューマン・ルンゲ吸収帯での透過率(または吸収率)の計算法の3点をとりあげ,それらに起因する誤差の範囲の検討を行なった。シューマン・ルンゲ吸収帯の透過率の計算にはランダムモデルを適用すれば計算が簡単でかなりの精度が得られることが分った。また上記の3点のうち最も不確実な因子は太陽紫外線の強度分布であることが分った。成層圏以上のオゾンの高度分布について観測値と純粋酸素大気モデルでの光化学平衡分布と比べると,60km以上で光化学平衡による理論値が観測値より大きい。このずれの大きさは上述の3点の不確実さから生ずる誤差より大きく他の因子を考慮しなければ観測値と理論値の一致は得られない。
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