本論文に於ては,綜観的な立場から取扱うことが出来る低気圧発達の理論が述べられている。併せて,亦数値予報の傾圧大気モデルにおける力学的な性質を綜観的な観点から理解することが目的とされている。
そのために,大気モデルとして,数値予報の傾圧モデル大気が採用され,次のように仮定されている。
(1)準地衡風近似が成立しているものとする.
(2)垂直気流分布が,次のような分離形でかくことが出来るものとする。
ω=
B'(p)ωk(x, y, t)(3)数値予報における層モデルに於て,使われている組分された層の中では,物理的諸量が高さと共に一次的に変化しているものとする。
(4)非断熱項として,海表面からの顕熱の輸送項の影響を考慮する。
この大気モデルは,凝結の潜熱の影響(安定成層の場合の)を除いては,大凡現用の準地衡風近似の層モデルと同様である。
これらの傾圧大気を取扱って,本論文に於ては,
(1)渦度方程式に於て,準地衡風近似を採用るこすとは,風の近似として,傾度風成分及び,Brunt-Do-uglas風成分を採用して,且つその発散をとったことに相当していることを示した。
(2)垂直気流方程式(ω-方程式)から,Fjφrtoftの数値積分法によって,非断熱摩擦,地形の影響を考慮した層モデルにおける垂直気流及び発散の計算式を導いた。
(3)上述の発散の式を用いて,Sutcliffeの地表面発散式の近似度を吟味した。
(4)地表面附近の摩擦層における,準地衡風近似や熱の仮定の不正確さを補い,且つ,地表面発達に対する偏西風帯の上層の役割を明らかにするために,地表面発散を対流圏上層及び摩擦層の上の下層の発散を用いて表現する方法(加重相対発散と名付けられている)を提案した。
(5)(2),(4)の結果を用いて,地表面低気圧の発達と低気圧軸の垂直方向における傾斜との関係を明らかにし,軸が高さと共に西に傾いた低気圧は発達し,束に傾いた低気圧は衰弱することを示すことができる。これらの関係は,よく知られている綜観的事実を説明するものである。
(6)以上の計算式を用いて,偏西風帯の地表面低気圧の発生,発達,閉塞,衰弱に関する綜観的諸事実を説明した。また,指向の原理が近似的に成立していることを示した。
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