Papers in Meteorology and Geophysics
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13 巻, 2 号
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  • 村上 多喜雄
    1962 年13 巻2 号 p. 103-130
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    四つの大規模擾乱のスケール・アナリシスを行なう。東西の代表的長さをL1,南北の代表的長さをL2と書くと,ここでとり上げた四つの擾乱は,(1)L1=106 m, L2=106 m,(2)L1=106 m, L2=107 m,(3)L1=107m,L2=107m,(4)L1=107m,L2=106m,である。ダブルフーリエで展開した場合のいろいろな成分のうちから適当な東西,南北の波数の組合せだけをとり上げたことに相当する.(1)の擾乱についてはCHARNEYがスケール・アナリシスを行ない,有名な準地衝風渦度方程式を導いた、(3)の擾乱は超長波といわれているものでBURGERが簡略なスケール・アナリシスを行なつた。(2)の擾乱を南北に延びた擾乱,(4)を東西に延びた擾乱と呼ぼう。天気図上でしばしば南北に延びたトラフを観測する。また上層低気圧が東西に長く延びていることがある。そこで(2)や(4)の擾乱についてスケール・アナリシスを行ない,導かれた運動方程式を用いてエネルギー変換につき検討することは興味深い。
    (2)の擾乱についての第一近似の渦度方程式は(4.21)である。CHARNEYが導いた渦度方程式よりも更に簡単で渦度の南北輸送を表わす項がない。しかし熱力学の式(4.23)では安定度がpばかりでなく,yの函数としてとり扱うべきことがしめされている。擾乱の運動,有効ポテンシヤル・エネルギーをそれぞれKE,AE,帯状平均に関するものをKZ,AZと書くことにすると,(2)の擾乱のニネルギー収支は次のようになる。AZKZ,KZKEの間のエネルギー変換はAZAE,AEKEの間の変換に比べて2桁小さい。
    (3)の擾乱については第一近似の渦度方程式は予報式でなく,単にβ-効果による上昇速度を求める式となり(5.4),熱の式だけが予報式で安定度はx,y,p,tの函数とみなさなければならない。第二近似の渦度方程式(5.20)では渦度の垂直輸送,立上り等の項が含まれていることと,いわゆるβ-項が地衝風ではなく非地衝風に関係していることが特徴である。エネルギーについてはAZKZ,KZKE,KEAE,の間の変換はAZAEの間の変換より2桁小さい。
    (4)の擾乱については第一近似の渦度方程式,発散方程式,熱の式は(1)の擾乱の場合の各式に殆んど等しい。しかしエネルギー変換の大いさは(1)の擾乱の場合より1桁小さいことが予想される。
  • 栗原 宜夫
    1962 年13 巻2 号 p. 131-144
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    数値解析の方法は,運動量,エネルギー,水蒸気等の収支に対して役割の大きい要素を見出し,いろいろな気象現象の維持あるいは発達の機構を研究するのに使われる。また,大気中のまさつ力とか熱供給等の未知の要素の研究にも利用できる。
    ここでは,運動量,運動エネルギー,熱エネルギー収支の数値解析の方式を一貫的に検討した。また,渦動ストレス,運動エネルギーの渦動散逸,顕熱の渦輪送などの渦動のはたらきの見積り方を論じた。これに関連して,資料の時間々隔の問題も考察した。通常の場合は,大体300kmの観測網について6時間間隔で整理された資料を用いて解析を行なうのが最も望ましい。
  • 戸松 喜一, 荒井 康, 村上 多喜雄
    1962 年13 巻2 号 p. 145-162
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    運動量, 顕熱, 水蒸気の南北輸送を実測風と地衡風を用いて求め比較検討した。期間は1958年9月14日から10月13日の一ケ月間である。運動量については地衡風で求めたものがあらゆる高度, 緯度で実測風で求めたものよりも大きい。差は上層ほど大きく,緯度50度で最大である。顕熱輸送における大きな差は高度分布の違いである。実測風では850mb,55°Nで最大であるが,地衡風では地表の55°N附近が極大となる.これは地衡風が地表で大きすぎるためと思われる。顕熱の輸送はよく知られているようにトラフの軸の垂直方向の傾きに関係し,傾きは一般に850mb附近で大きいので実測風によるものの方が良いと考えられる。水蒸気の輸送は主として平均子午面循環によつてなされる。一方平均子午面循環は地衡風では推定できない。したがつて水蒸気輸送の計算は実測風によらねばならない。エネルギー交換についても実測風によるものと地衝風によるものとを比較した。有効ポテンシヤルエネルギー関係の交換は問題ないが,運動エネルギーの帯状流と擾乱のやりとりは地衡風では実測風よりもはるかに大きな値となる。
  • 当舎 万寿夫
    1962 年13 巻2 号 p. 163-170
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    超短波及びmicrowaveの対流圏伝播を取扱うに必要な電波屈折率が高層気象観測のデーターより1km大気層に対して計算されている。
    電波屈折率の垂直傾度の地域分布性としては,大体,北に向つて小さくなつている。最大値をもつのは30度緯度帯にみとめられ,これは太平洋上の南北断面がとられるようになればその範囲がはつきりとしてくるだろう。北海道は割に小さく,特に根室の夏における異常はオホーツク海,千島列島附近の調査が行なわれるようになれば説明がつけられるであろう。
    海洋上や半島突出部は割に垂直傾度が大きい。内陸では沿岸観測所のものより冬に大きく夏に小さくなつている。
    我が国の電波気象的要素は北海道が標準大気のものに近いが,その他は一般に標準大気で計算した垂直傾度よりも大きくなつている。
  • 第4報理論的取扱に対する補遺
    根本 茂
    1962 年13 巻2 号 p. 171-195
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    まづはじめに,相似の問題を取扱う際に考えなければならない事柄について述べ,一例として,大きなスケールの現象を取扱つたD.FULTZのModelingについてその相似の条件を検討した。しかし,このModelingの条件では,通常使用されている風洞での模型実験は不可能である。
    つぎに,比較的小さなスケールの現象(局地風)に対する相似の問題を取扱つた。これに関しては既に第1報において述べたが,自然風と模型風のMean flow patternのみの相似と乱れの構造の相似まで考慮した場合の相似との間の相違についての考察が充分でなかつたので,この点について更に検討した。その結果,
    (i)重力の影響ならびに渦動粘性を考慮した場合。
    自然風と模型風の対応する場所における
    乱れの強さ,
    Eddy Reynolds number,更にまた,
    Froude number
    がそれぞれ同時に一致することが相似の条件となり,更に乱れの構造について考えるとき,波数ki(一次元)に対する乱れのエネルギースペクトルF1(ki)(一次元)が見掛け上のInertial subrangeにおいてki-3/5に比例する限り,
    εM/εN=[F1(koi)/F1′(k′oi)]4(LM/LN)1/2(LM/LN: 模型の縮率)が場所に関係なく近似的に満足される場合U∞M/∞N=(LM/LN)1/2
    を満足するような風速U∞M,U∞Nに対して両者のMeanHowpatternの近似的相似が期待されるが,乱れの構造は相似にならない。
    (ii)重力の影響を考えなくてよい場合。
    両者(自然風と模型風)の対応する場所における
    乱れの強さ,
    EddyReynoldsnumber
    がそれぞれ同時に一致することが相似の条件になり,見掛け上のInertialsubrangeにおいて,F1(ki)〓ki-3/5なる限り,
    が場所に関係なく近似的に一定の値をとるとき
    なる関係を満足する風速U∞M,U∞N, に対して両者のMean flowpatternの近似的相似が期待されるが1乱れの構造は相似にならない。
    なる関係を満足するような風速びU∞M,U∞Nに対してのみ両者のMean flowpatternならびに乱れの構造の近似酌相似が期待出来る。
    (iii)乱れの強さの一致の条件がない場合。
    中立状態における地面附近の流れは一般にこの場合に対応する。この場合,
    EddyReynoldsnumberの一致
    が相似の条件になる。而して,
    が場所に関係なく近似的に一定の値をとるとき
    なる関係を満足するような風速U-M,U-Nに対して両者のMeannowpatternのみの近似的相似が期待出来,
    なる関係を満足する風速U∞M,U∞Nに対しては,更に乱れの構造の近似的相似も期待出来る。
  • 水温の平均値と年変化
    南日 俊夫
    1962 年13 巻2 号 p. 196-205
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    日本附近の太平洋の表層水温の月平均値とその年変化を求めた。この年変化の輻は北に行く程大きくなる。この水温と黒潮流軸の位置との間には相関はみられなかつた。ただ暑い季節(7月)にはどの点の表面水温もお互いに高い相関をもつようになる。黒潮の流れに沿つて下流の方へ,水温は年を通じて300~500Km程度まで相関がみられる。又各観測点での水温の平均持続日数は90日程度である。室戸岬の気温.と黒潮表面水温には相関がみられる。
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