Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
49 巻, 3+4 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 廣田 道夫, 堤 之智, 牧野 行雄, 佐々木 徹, 財前 祐二, 池上 三和子
    1999 年 49 巻 3+4 号 p. 43-58
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     1986年以来、日本上空で航空機により高度7kmまでの対流圏空気試料の採集を行い、GC-FID法によりCH4の鉛直分布、水平分布の観測を行った。
     鉛直分布においても、水平飛行における南北分布においてもCH4の混合比は大きい変動を示した。CH4の発生領域であるアジア大陸中高緯度からの空気を採取したときは、CH4の混合比は高かった。シベリア方面から来た気塊のCH4の混合比は特に高かった。中国方面から来た気塊の混合比はこれより低かった。アジア大陸からの空気に成層圏からの空気-このことは高いO3混合比から明瞭に分かるが-が混合しても、CH4の混合比に明瞭な変化は現れなかった (1986年2月12日、1990年8月8日、1991年4月27日)。これはCH4が光化学的に比較的安定で、上部対流圏から下部成層圏にかけて余り減少しないからである。しかし1993年12月17日に観測されたように、航空機が圏界面の折り重なりを直接横切ると、高いO3の混合比と低いCH4の混合比が観測された。成層圏空気の侵入場所から空気採取点までの空気の輸送距離がO3及びCH4混合比を左右する重要な因子と考えられる。洋上の空気は大陸の発生源の影響を受けていないので、海洋性気団の中で空気が採取された場合は、低いCH4混合比が観測された。
     1986年2月から1992年2月まで、月ごとに平均したCH4混合比は着実に増加していた。11月から2月にかけてのデータを使用すると、最小二乗法により、12.0±7.0ppbv/年の平均増加率が得られた。1992年2月から1993年12月にかけて混合比は若干減少した。1986年2月から1996年2月までの平均増加率は、同じく11月から2月のデータを使用して、9.6±4.9ppbv/年であった。これらの結果は、日本上空において1980年代半ば頃の増加率が、1990年代のそれに比べて大きかったこと。従って増加率が減少したことを示している。
  • 坂井 孝行, 山里 平, 宇平 幸一
    1999 年 49 巻 3+4 号 p. 59-74
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     長周期の地震波が卓越することの多い桜島火山の爆発地震とB型地震のマグニチュードを求めることを目的として、鹿児島地方気象台の桜島の観測点E点に長周期地震計を設置した。福岡管区気象台で震源要素が決定された一般地震のデータから、この長周期地震計の上下動成分によるマグニチュードMELVの計算式を求めたところ、MELV=logAV+1.37 logΔ+0.69 が得られた。この式は福岡管区気象台で決定されたマグニチュードとの系統的な差がなく、また M4.0 までの火山性地震に対して信頼性があると考えられる。この式を適用することにより、1996年に発生した171個の爆発地震のMELVは1.3∼3.1 に決定された。また、1996年1月に発生した120個のB型地震のMELVは0.7∼1.8に決定された。同じくE点に設置している短周期地震計の上下動成分についても同様にマグニチュード計算式を求め、爆発地震とB型地震のマグニチュードを算出し、MELVと比較したところ、MELVの方が平均してそれぞれ約0.21、約0.14大きくなった。これは、長周期成分が卓趣する爆発地震やB型地震の場合、短周期地震計では本来の振幅が得られないためである。
  • 尾瀬 智昭
    1999 年 49 巻 3+4 号 p. 75-101
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     大気上端における放射収支と大気のエネルギー収支を解析することにより、エネルギー収支から見た夏のアジアモンスーンの特徴を調べた。(1) 北半球夏期における大陸海洋間および陸上大気の上層下層間の加熱のコントラストと、(2) これらを緩和する、モンスーン循環による熱の移流の過程が、次のようにまとめられる。


     (1) 北半球夏期の大気上端の下向き正味放射は、中高緯度の陸上において、海洋上の値を上回る。この海陸の放射のコントラストは、陸上で積雪被覆が概ね消滅した後、高緯度の海上の層雲によって作られる。
     鉛直積分した大気中のエネルギー収支で見ると、大気上端での下向き正味放射に似た季節変化 (6月に最大値) が高緯度の陸上の顕熱加熱に見られる。中緯度の陸上では、顕熱加熱が春から初夏にかけて支配的であるが、かわって夏期後半には蒸発が盛んになる。一方、高緯度の海洋には、7月から8月を中心に、大気上端での下向き正味放射以外にそれを上回る熱が大気から流入していると評価される。
     夏期モンスーン循環の開始前 (4月) においては、地面近くの顕熱加熱が、ユーラシア大陸上の下層大気、特にハドレー循環および中高緯度の定常波による下降流が見られる乾燥域 (イラン高原や中国北部) の下層大気を暖めている。


     (2)夏期モンスーン循環の開始後 (6月) においては、東南アジア域における降水による熱源は、その大きさにおいてユーラシア大陸上における顕熱加熱を圧倒する。この凝結熱にバランスして、上昇流が生じる。
     強められた下降流が、中央アジアの上層大気を暖める一方、地面近くの顕熱加熱は北からの冷気移流で相殺される。チベット高原上および中緯度北西太平洋の対流圏の昇温に、強められた南からの暖気移流が寄与している。両地域での凝結熱は、下層の南風の強化に寄与していると想像される。
feedback
Top