Papers in Meteorology and Geophysics
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8 巻, 3 号
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  • 藤原 美幸
    1957 年8 巻3 号 p. 171-214
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1956年4月1日,東京附近に降つた降雪は巨大な雪片を交えており非常に興味のある例で,雪片の粒度分布の解析を,気象の資料とレーダー観測結果を利用して試みた.利用できる細かい気象観測資料が少いために解析は不十分なものであるが,しかし暗示的な又重要な問題を含む結果が得られた.先づ4月1日の綜観気象的な解析を行い,関東平野に降つた雪の主な原因は地表面の寒冷な北東流であることがわかた.融解雪片による空気層の冷却効果はこの場合二次的な原因でしかなかつたようで,関東地方におつける雨と雪の境界線と降水量線との間にはあまり相関はみとめられず,みぞれの領域は0℃~3℃ であった.
    RHIレーダー写真より降水発生セルの構造を調べると,この対流性セルは丁度温暖前面上に発生し,ちようど風の強い日に目視で観察される所謂動乱積雲のように回転していることがわかつた.セルのエコーの部分をトレースしてみると上昇気流の最大上昇速度は約5 .5m/sと推定された.
    RHIに影ったエコーの強さとエコーの上昇速度を考慮すると氷晶及び雪片の生成速度はかなり速いものであると推測され,簡単な概算で当つてみるとHOUGHYONの理論によるよりももつと早く,むしろ磯野等の実験結果を裏支持するように思われる.次に雪片の観測の方法とおこり得る誤差について述べると,一般に大粒においては空間密度が小さいために採取上の誤差が大きいがスペクトラムの巾は非常に広く大粒の融解直径の最大は7.3mmまであった.
    スペクトラムの大粒側の切断直径の変化と地上気温の変化をしらべると,大粒は0~1.3℃ の狭い範囲内で生じており,これは通常の大気で約250mの高度差に相当し,普通のBright Bandの300mに近いことほ注目される.
    スペクトラムを平均してみるとMARSHALL&PALMERの与えた式よりもかなり長い尾をもっているがこれは融解層内で作られたものと推定される. 雪片の型と綜観的な気象状態との関係について他の研究報告と,今回の結果と比較すると雪粒のつかない雪片は温暖前面のElevated cellによつて生ずると云える.
    雪片のスペクトラムの時間的変化については,今回の場合でも他の観測結果をみても雨滴の場合と異る点が明かになつた.雨滴の場合は弧立したElevated cellからの降水尾流中では“ 大粒→小粒へ” の分離現象が大なり小なり観察されるが雪片の場合にはそれが全くみとめられない.この原因は雪片の落下中における相互の衝突が非常に頻繁であることに帰せられるようである.これらの雪片の相互の衝突という特有の性質を説明するために適当な仮定を設けて雪片相互間の衝突頻度を概算してみると,同じ降水強度の雨滴に比して単位落下距離の問に乾燥雪片-423倍,雲粒付樹枝状雪片-126倍となつた.これらの大きな衝突頻度からして,若しこの何分の一かが雪片の併合や分裂をおこしたとしても,スペクトラムの変化は大きな値となりうることが想像される.
    最後に,レーダー反射係数Z(=ΣND6)について計算した.融解層における巨大雪片が表面の半融解状態が形成されることを考慮すればもはやRayleigh散乱でない,と推定される.従つてKERKER,LANGLEBEN&GUNNの結果を考慮してこのような巨大雪片を含む降雪からのレーグー反射を概算した結果Bright bandには巨大雪片の存在よりも中~小粒が主に寄与していると推定される.
  • 伊東 彊自
    1957 年8 巻3 号 p. 215-221
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    ダイアモンド・ダストは通常六方柱双晶の形をもつているが,1944年1月23日に海拉爾でたまたま将棋の駒状のものを観察し,顕微鏡写真に撮つた.結晶形は比較的はつきりしており,形の上から基本形の六方柱を形成するいくつかの面とひとつのぜラミツド面とで構成されているのがわかる.なお結晶面は骸晶としての図形を見せている.
  • 三宅 泰雄, 杉浦 吉雄, 猿橋 勝子, 金沢 照子
    1957 年8 巻3 号 p. 222-231
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    核実験で生じた人工放射性物質によるSr-90の地表面への蓄積量及び無限γ線量の計算を行つた.Sr-90の量の推定は,1954年5月以来,毎日行つている雨とfalloutの全放射能の観測値に基き,その値をそれぞれ核分裂1年後の値にi換算して,Hunter-Ballouの表に基いてSr-90の含量を計算した.成層圏からゆつくりと落ちている古い核分裂生成物の影響は,成層圏および対流圏における塵埃粒子の滞留期間をそれぞれ5年および2ケ月と仮定して計算を行つた.著者らの計算は,アメリカ原子力委員会の計算値および化学分析(伊沢氏)によるSr-90の毎月の蓄積量と,非常によい一致をみた.地上1mの点における無限γ線量の計算は,上記の場合と同様に,成層圏からのfalloutを考慮に入れて計算を行つた.結果を第4表及び第4,5図に示す.
  • 佐貫 亦男, 木村 茂, 加藤 博
    1957 年8 巻3 号 p. 232-235
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    腕長を2種,風板重量及び釣合錘を4種変えた合計8種類の単葉風向計を,気象研究所1.5m風洞で実験し時定数を求めた.この振動系の慣性能率は約1:20の範囲にわたるので通常使用される風向計を広範囲系統的に実験したものといつてよいであろう.実験風速は5~20m/sでこれも常用範囲をカバーする.
    結果として
    1)時定数は風速に逆比例する.
    2)風速一定ならば,時定数は振動系の慣性能率に比例する.
    3)短かい腕長は長い腕長よりも,簡単な理論から推定される時定数の傾向にくらべて小さい時定数を与える.これは短かい腕長に有利な結果であつて,その理由は非定常的な空気流の特性その他によるものと思われる.しかし短かい腕長は静的特牲が悪いから,動的特性と合せて考えるとき適当な腕長が存在するであろう.
  • 南日 俊夫
    1957 年8 巻3 号 p. 236-240
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    友田の方法を用いて気温及び水温の自己相関ならびにそれらの間の相関を求めた.その結果T0≦30hrで4/3乗則が成立つ事が示された.即ち通過時間が30hfを越える乱子は存在しなかった.Tそしてこの大きな乱子は偏西風のトラフやリツヂの通過によるものであろう.測定の平均化時間が長くなる,即ち時間・日・月のオーダーになると4/3→1となる.このばあひ温度変化は乱流によるのではなく,温度の持続性とか長週期に関係した因子によるものと考えられる.又解析すべき資料の時間を乱子の通過時間や測定平均化時間に比べあまり長くとると,長週期変化の影響が入つて来て相関係数は時間の自乗に比例して来る,即ち計りうべき乱子が存在しない時は,日変化を解析していることになろう.例えば1-R(t/T0)=[t/(τ/4)]2の形で表わされる相関函数などは週期Tの温度変化によるものであろう.即ち,m=2と云う相蘭係数は温度の日変化により起るものであって,その形はt=0の近傍では抛物線で表わされる.北方定点では夏季に大きな乱子が見られ他の季節ではm=1或はm=2になりがちである.そして水温と気温の相関はm=4/3の時R=0.3, m=1 或は2の時R=0.7となる.一般に
    R(τ)~1-(τ/τ0)m
    ≒e-τ/τ0, m=1 0≦(τ/τ0)<1
    これは気温について既に得られている経験則である.
  • 三宅 泰雄, 猿橋 勝子
    1957 年8 巻3 号 p. 241-244
    発行日: 1957年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1957年3月に開催された国連の第3回科学委員会に,各国から提出されたSr-90の資料に基いて,1951年のはじめから1955年の秋までの5年間に,地表面に蓄積したSr-90含量の世界的分布を求めた.主なる汚染源としては,第1図から明らかなように,太平洋のビキニ環礁,ソ連のカザツク地方(黒海とバルハシ湖の間)およびアメリカ合衆国のネバダの三点がある.前二者では,水爆実験も行われているので,原爆実験のみを行っているネバダにくらべれば,汚染度は高い.第1図によると,ソ連の実験とネバダの実験では,汚染地域は偏西風にのって西から東にのび,ビキニでは逆に偏東風で西にひろがっている.これは地球上の風系と全く一致しているところである.
    1955年秋までに地表面に蓄積したSr-90の総量は地球全体で0.7メガキユリーとなる.北半球には地球全体の80%,その中,東半には,地球全体の約57%が集まっている.緯度による分布をみると,第2図(A)に示すように,北緯20°と50°附近の2ヵ所にピークがみられる.前者はビキニ実験によるものであり,後者はソ連の実験によるものである.第2図(B)には北半球を東半,西半にわけての分布を示した.東半の分布は第2図(A)と同じような形であるが,西半は40°附近に一つのピークがみられる.これはネバダの実験によるものであり,前者に比べれば,その汚染度は低い.
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