Papers in Meteorology and Geophysics
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19 巻, 4 号
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  • 宮沢 清治
    1968 年 19 巻 4 号 p. 487-550
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1957年から1966年までの北陸地方の大雪例をしゅう集し,実際的解析法を研究し,豪雪時にみられる中規模じょう乱の中気候学的諸問題を北半球規模から局地的規模に至る各尺度のもとで明らかにした。その要旨は次のとおりである。
    1.地形効果に起因しない平野部に降る里雪と山間部に降る山雪,平野・山間部に降る混合型大雪を定義し,統計的に検討した。1953-1961年の9冬の大雪の出現度数をみると,山雪は大雪の全例数のうち半分以上をしめるが,純里雪は約1割,混合型を含めても約2割で,純里雪は1冬に2.5日程度起るにすぎない。里雪は主として上層寒冷渦が日本海に位置したとき現われる地上等圧線型式の袋型のときに降る。袋型気圧配置は年間を通じてみられ,豪雨雪,雷雨,突風などの中規模じょう乱の発生しやすい場として重要な意味をもつ。
    2.里雪時の中規模じょう乱の発生,発達に適合する広域場の特徴を研究した。このような広域場の特徴として北半球500mbでは,アラスカからカムチャッカにのびる切離高気圧,極東の寒冷低気圧に対応して90°Eに沿ってのびる尾根がみられる。日本付近の対流圏の寒冷低気圧は中部成層圏(30mb)での温暖な亜熱帯高気圧に対応している。極東500mb天気図では,里雪は谷が140°E以西に位置して,高緯度地方からの寒冷渦が日本海に南下し,東西指数が約10m/s以下のときに降りやすく(低指数循環),反対に山雪は谷が140°E以東に位置して,寒冷渦が日本の東海上や高緯度地方にあって東西指数が14m/s以上のときに降りやすい(高指数循環)。
    3.中規模じょう乱による里雪現象を11例抽出し,4種類に分類し,個々のじょう乱の実態を明らかにした。
    (1)日本海低気圧に伴なう不安定線,寒冷前線による降雪。寒冷前線に先行する不安定線(Prefrontalsquall line)の通過によって強雪が降ることがある。解析例では気圧急変(0.7-1.Omb),突風(23m/s),最大降雪強度(3.0-7.6mm/hr),最大収束量(-6×10-4sec-1)が観測され,これらのじょう乱系には移動性の線状エコーが対応する。
    (2)局地的な収束線(北陸不連続線)による降雪。上層寒冷渦が日本海に位置し,気層が不安定になると,内陸から海上に向う南風,沿岸海上からの北西風,山陰地方から沿岸沿いに吹く西風が観測され,これらの3風系は北陸沿岸沿いに収束線を形成し,強雪をもたらす。なお上層寒冷渦を伴なわない移動性高気圧後面での南風北風による小範囲の安定性の里雪現象がみられる。
    (3)小低気圧による降雪。上層寒冷渦が日本海に位置するとき,寒冷渦の中心や周辺で垂直不安定に基因して沿岸海域に強い収束線が形成され,これに沿って小低気圧が発生,発達することがある。さらに寒冷渦や谷が高緯度から朝鮮方面に移動してくるとき,傾庄不安定効果によって日本海西部で小低気圧が発生,発達することもある。これらの小低気圧の通過による風雪は激しく雷電を伴ない,降雪強度22mm/3hrに達することがある。小低気圧の水平規模,寿命は100-300km,5-20時間で移動速度は20-50km/hr程度である。
    (4)中規模のうず状じょう乱による降雪。レーダー観測によって豪雪時に顕著なスパイラルバンドをもったうず状じょう乱がしばしば現われることをみいだした。これらのじょう乱は,通常沿岸海上で発生,発達し平野部を経て山間部で消滅するが,じょう乱の経路に沿ってしばしば集中強雪(例えば4mm/hr)が降り,気圧上昇,突風などを伴なう。丹後半島沖や能登半島付近のような地形収束のある地域で,強い下層収束の大気成層の効果が加わったときに数多く観測され,じょう乱の水平規模,寿命は50-100km,数時間以内で10-4sec-1の収束値によって特徴づけられる。
    4.降雪現象のレーダー解析を行ない,豪雪時の線状エコー(降雪帯)の特性について研究した。線状エコーは,間隔30-50km,幅10-20kmで山雪時はNW-SE,里雪時はW-Eの方向に配列する。線状エコーの出現位置は地理的に限定され,その走向は統計的に1000-500mbの風のシヤーの方向に配列するが,シヤーが小さくなるとセル状のランダムなエコーが卓越する。また線状エコーの間隔は,大気成層の逆転層の高さが増すにつれて拡大する。さらにレーダー工コー域は,実際の降雪域とは必ずしも一致しないでかなり一致する場合とずれの大きい場合がある。これらのずれは雪片が生成層から地上に落下する場合風によつて流される効果によるものと考えられる。
  • 松本 誠一, 二宮 洸三, 秋山 孝子
    1968 年 19 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    日本海々域における船舶の観測に基ずいて,雲量とbulk methodで評価した熱と水蒸気補給との間の関係を統計的に調べた。資料は1963年から1967年に至る5ヶ年間の1月11日-30日の期間のものを選んだ。有意な正の相関が,とくに日本海中央部で認められる。ここは積雲が発生し始め発達している場所である。相関場の物理的意味は,北ないし北西流が卓越している場合に明瞭にあらわれる。
  • 山岬 正紀
    1968 年 19 巻 4 号 p. 559-585
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    台風の発達過程及び構造を調べるための数値実験を,13層モデルを用いて行った。気柱で放出される熱量は,大山(1964)によって提案されたように,摩擦層での収斂によって規定した。放出される熱の鉛直分布は,積雲と一般場の温度差に比例すると仮定した。簡単のために,積雲の相栢当温位は一定の場合を論じた。
    初期条件やパラメーターを適当に選ぶとき,数値実験で得られた台風は実際の台風の特徴をかなりよく表現している。数値実験で得た台風について,発達過程から衰弱過程までを詳細に調べた。
  • 佐粧 純男
    1968 年 19 巻 4 号 p. 587-598
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    雲水量は雲の物理的,力学的性質を示す量として重要であり,測定の目的に応じていろいろな方法が考えられている。吾々は,以下に示す条件,即ち,
    (1)地上,航空機,ゾンデ用として使用可能なこと。
    (2)雲水量そのものを直接に測定出来ること。
    (3)過冷却雲及び氷晶雲に対しても使えること。
    (4)粒子の捕捉率がはっきりしていること。
    (5)responseが速く,雲の微細構造が論じられること。
    (6)0,01g/m3以上の雲水量が測定出来ること。
    等を満すような雲水量計を試作し,若干の測定を行なった。
    雲水量計の構造は,第1図に示す通り100μ-250μの合成繊維のフィラメツトを,AからBに一定速度で移動させる。このフィラメントはCEで雲に曝され,雲粒を捕捉する。この雲粒は,金属ロッドFで濾紙Gの上にしごき集められる。この濾紙はあらかじめ色素で処理され,その量に比例した痕跡を残す。濾紙は一定時間毎(1-30sec)に金属ロッドから一瞬離れて,一定量巻きとられた後,直ぐにロッドに接し,次の雲水量を測定する。
    測定結果は第6図-12図に示した。
    第6図は天竜川に発生する川霧の測定結果で,粒度分布から求めた雲水量及びTransmissorneterの変化傾向とも良く一致している。
    第8図は,1948年1月22日,日本海上に発生した小積雲の雲底における雲水量の観測結果である。この時の雲頂,雲底温度は,各々-20°C,-10°Cで,霜状の着氷がわずかに起った事から氷晶雲と思われる。又,第9図は同日,美川上空にあった層積雲に対する雲水量の垂直分布を示したものである。この日のFlight pathは第7図に示した。
    第11図は翌23日,同じく日本海上の積雲群又は層積雲(雲頂温度-8°C,雲底温度-4°C,過冷却雲或いは氷晶との混合雲と思われる。)内の雲水量分布を示したもので,対応するFlight pathは第10図に示した。これによると,海上20-30哩,高度6300feetのところに雲水量が多く,変動の大きな部分があり,その厚さは700-800feetと推定される。この雲は内陸に向うにつれて薄れ,topは若干高くなっている。又,雲底はfragmental structureを示している。雲水量の多い部分は活動期の雲を意味し,変動の大きいことは雲頂付近のdryairとの混合が盛んなことを示していると思われる。この雲水量分布は,海上で発達した雲が陸に近づくにつれ減衰してゆく一つの過程を示しているものとして,興味がある。
  • 籾山 政子, 片山 功仁慧
    1968 年 19 巻 4 号 p. 599-614
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    世界の死亡の季節変動の諸形態から,エジプトのように夏季集中型,イギリスや日本に代表される冬季集中型,冬季集中を経過して変動の緩慢化の時期に来ているアメリカ,北欧などの型の存在することが判った。ここでは新たに登場した死亡の緩慢化の問題を,本現象の著明なニューヨーク市の乳児死亡に例をとって歴史的形成過程を説明する。また,1900年代より1960年代に至る日本の総死亡の変動形態を,モデル化しつつ考察する。
  • 内藤 恵吉, 田端 功, 横田 良夫
    1968 年 19 巻 4 号 p. 615-625
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    ライダ(レーザレーダ)はエーロゾル粒子を十分検出するから,ライダの出現以来エーロゾル濃度の垂直分布の観測が多く行われて来た。この垂直分布と大気の熱的構造との間には,当然関係がある筈である。そこで,ライダとラジオゾンデのデータの間の関係を求めようと,多くの努力がなされて来たが,温度逆転層との関係すらも十分実証されていない。本論文では,晴れた風の弱い日に限定して,ライダ観測から下層大気(2-3km位まで)におけるこの種の問題を考察した。結論は次の通りである。(1)エーロゾルをトレーサーとして対流を観察すると,午前中および正午前後のように対流の盛んなときは,プリューム(plume)またはフレア(nare)の形で,対流上昇・輸送が行なわれることが認められる。これは,エーロゾルの分布この期間には高度とともにゆるく減ずる事実をよく説明しうる。対流における熱気泡理論では,この分が,布を説明するのに容易ではない。(2)対流は日出とともに始まり,地上気温最大時が対流輸送最大と考えられる。従って,地上気温最大値を通る乾燥断熱線と,ラジオゾンデによる温度垂直分布との交点,すなわち,最大混合高度が,地上付近から対流によって上方に輸送されたエーロゾルの境界を,近似的に与えることになる。事実,午後遅くなったときのライダ観測によると,エーロゾル分布の上限は最大混合高度で与えられている。さらに,大気下層におけるエーロゾル分布の一模型が提案されている。(3)ライダエコーの不連続部は,非常に広範囲(5km以上)のほぼ水平層をなすものから,数100m以下の不連続層のものまで,傾斜するもの,水平のものを含め,つねにかなり存在する。このような不連続性の存在は,極超短波伝搬における「層反射」の有用性を暗示するものと思われる。午前中すなわち対流の盛んなときは,あまり大きな層はなく,数多いものは小さいものである。また,午後遅く対流のほぼ止んだときは,大きな水平層が多く,午前中と明らかな差異がある。(4)温度逆転層がエーロゾル分布に及ぼす影響について,模型的に考察した。その結果,温度逆転層は必ずエコーの急激な増大また減少を生ずるが,エコーの急激な増大,減少また一般に不連続は,必ずしも温度逆転に対応しないことが明らかにされた。
  • 田中 康裕
    1968 年 19 巻 4 号 p. 627-650
    発行日: 1968年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    伊豆大島の三原山は,古来,ひんばんに Stromboli 式噴火をくり返してきた。そして,火口では,火山性微動が常に発生し続けている。
    1965年以降,大島々内で,高挫能な電磁地震計による多点観測が始められ,多くの新しい事柄が発見された。すなわち,火山性地震や火山性微動の型の分類が容易にできるようになり,火山性微動の型が火山活動の進行につれて変ることや,噴火に前駆して特殊な火山性地震が起こることなどがわかった。これらの現象は,旧来の器械式地震計では発見できなかったものである。
    火山性微動を火山活動に対応させながら分類すると,次の3つの型に大別できる。
    第1の型は,火山活動が静かな時期に同じ程度の振幅で発生し続けている微動で「常時微動」と呼ぶことにする。
    第2の型は,噴火の前後に現われる微動で,「前駆微動」と呼ぶことにする。この微動の振幅は,常時微動の約半分しかなく,かつ,この型の微動が始まるころに火口付近で火山性地震が発生する。この火山性地震を「前駆地震」と呼ぶことにする。1965-1966年の噴火の例によれば,前駆地震発生時と噴火発生時との時間差は,3-10時間もあり,この事実は,噴火予知にも活用でき得る重要な現象である。
    第3の型は,噴火時に現われる微動で,「噴火微動」と呼ぶことにする。この微動の振幅は,他のいずれの型の微動よりも大きい。
    三原山の火山性微動の周期は0.2-1.4秒の幅を持っている。波動の性質の大勢は Rayleigh 波であると考えられる。微動の振幅は距離によって減衰するが,その減衰の仕方は,火口からの方向によって若干異なる。たとえば,火口の北々東方向と北々西方向の減衰係数をくらべると,前者は後者より小さい。これは,地層構造の違いによる影響であると考えられる。また,常時微動,前駆微動,噴火微動の減衰係数は,それぞれ0.9×10-6/cm,1.9×10-6/cm,3.0×10-6/cmで,各微動の性質の違いをよく表わしている。なお,前駆地震の減衰係数は,噴火微動のそれにほぼ等しい。このことから考えると,前駆地震は,噴火微動の発生源付近で起こったある種の爆発であるとも考えられる。
    ある一地点で観測した噴火微動の振幅の変動,水平2成分の振幅比の変動,周期の変動などと噴火の強度とは関係が深い。一般に,噴火活動が盛んな時ほど,より大きな振幅を記録し,火口に向けておいた成分の地震計の振幅が,直角においた成分より発達し,また,短周期の微動がより卓越する。
    近年の三原火口底には赤熱溶岩の露頭があり,噴火の際は火山毛を飛ばす。火口の深さは,火口縁から260mより深く,火山性微動は,火口縁から260-数百mの深さで起こっているものと考えられる。伊豆大島の北-西側では,ときどき火山性地震が起こるが,この地震と火山の噴火との関係はよくわからない。しかし,この火山性地震と,火口付近で起こる前駆地震とは,性質が大変異っている。
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