順天堂医学
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32 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 城所・駿河両教授定年退職記念講演
  • 城所 仂
    1986 年 32 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    私が今日, 外科医として振り返って過去の研究を考えてみると, 二つの流れがあった. 一つは, 東大分院外科における福田保先生以来のショックの研究であり, 他の一つは, 東大分院外科で開発された胃カメラの研究に, 深く関係することになったことである. ショックの研究には, 微細循環の立場から深く関係することになり, これは外科臨床の場では, 術後管理の重要性を強く認識することになった. また胃カメラは, 胃癌の外科の推進に大きく役立った. 殊に外科の立場から, 内視鏡を重視する必要性を強く認識させられた. 結局, 私が若い時代に関係した研究テーマは, 全く異なった二つの方向であったが, この両者は, 私の胃癌の外科の考え方, 術式の工夫, 術後管理のすべての面に, 極めて重要な役割を占めていたことを痛感している.
  • 駿河 敬次郎
    1986 年 32 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    わが国における小児外科の歴史, 特に賛育会病院外科と順天堂大学小児外科の歩みについて述べた. 我国では, 昭和28年頃より小児外科, 特に新生児外科が行われるようになったが, 初期の頃は早期診断が遅れ, 術前の患児の状態も不良で手術による死亡率も高率であった. しかし, 昭和41年, 順天堂大学に小児外科が開設された頃より治療成績は急速に向上し, かつては手術成功率の極めて低い先天性食道閉鎖や腸閉鎖でも, 今日では90%以上の手術成功例が得られるようになっている. 一方, わが国の小児外科の研究業績については, 1965年頃より国際学会で発表されるようになり, 既に今日まで国際的にも注目される多くの研究業績が報告されている. 順天堂大学小児外科における今日までの主要な研究業績は, 新生児外科・肝胆道外科, 特に胆道閉鎖と胆管拡張症, 輸液, 小児泌尿器外科, マイクロサージャリー, 移植等であり, いずれも国際的にレベルの高い業績である. このように過去約30年の間に急速に発展したわが国の小児外科は, 今日解決しなければならない多くの問題が残されており, 今後の小児外科の発展の為には, わが国の小児外科医の一段の努力が必要であると考えている.
原著
  • 内田 博
    1986 年 32 巻 2 号 p. 140-154
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    1975年9月より1982年12月までに選択的冠状動脈造影を施行し, 主要冠状動脈に75% (左主幹部は50%) 以上の狭窄を認めた, 連続する602例の冠状動脈硬化症の内科治療と, 外科治療 (A-Cバイパス術) の長期予後, ならびに61例の術後グラフト造影所見について検討した.内科治療群387例の5年生存率は, 1, 2, 3枝, 左主幹部病変, 全症例の順にそれぞれ91.4, 80.8, 88.7, 77.9, 87.3%であった. 一方外科治療群215例は, それぞれ100, 98, 95.7, 82.1, 95%であり, 手術死亡率は1.9%であった. 内科治療群全体の長期予後は, 本邦のこれまでの報告, ならびに近年の欧米の成績に近く, 日本人の冠状動脈硬化症の予後は, 現在欧米と近い水準にあるものと思われた. 外科治療群の退院後の死亡は4例のみで, 手術が成功すれば良好な予後が期待できることが示された.術後グラフト造影は有症状28例を含む61例に対して行い, グラフト開存率は75.3%であった. 静脈グラフトの器質的狭窄は吻合部を除く7枝に認められ, うち術後9年経過した1例には, グラフト全長に渡って硬化性変化を思わせる所見が認められた.バイパスを受けた冠状動脈は, 47.9%に術前より病変の進行が見られたが, 大部分は吻合部またはその近位部であり, 遠位部の進行は7%のみで, 非バイパス血管病変の進行9.4%と比較して有意差は認められなかった.
  • -高トリグリセリド血症と冠状動脈硬化との関係について-
    李 英俊
    1986 年 32 巻 2 号 p. 155-166
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    選択的冠状動脈造影を施行した男性74症例について, 高トリグリセリド血症の成因を検討する目的で血清リポ蛋白の種々のパラメーターと, リポ蛋白リパーゼ (LPL) ・肝性リパーゼ (H-TGL), およびLPLに対する超低比重リポ蛋白 (VLDL) の反応性を測定し, それらと冠状動脈硬化度との関連性をみることにより, 冠状動脈硬化における高トリグリセリド血症の臨床的意義について検討した. 血清トリグリセリドの増加は, VLDL粒子の増量以外にVLDLの各成分の組成比の変化による質的変化をもたらすことが考えられた. 高トリグリセリド血症が高度になると, LPL活性の低下およびVLDLの反応性の低下の両面より, 血清トリグリセリドの異化障害を伴うことが確認された. 血清中トリグリセリドと血清中, およびVLDL中のアポC-IIとアポC-IIIとは正の相関を示し, 更にVLDLの反応性とVLDL中アポC-IIIとは負の相関を示した. 高度のトリグリセリド血症におけるVLDLの反応性の低下は, VLDL中アポC-IIIの増加がその一因と考えられる. VLDLの異化機能の検討に際して, 酵素活性の側面と共に基質としてのVLDLの反応性 (組成の変化も含めて) の側面からも検討する必要性が確認された. 冠状動脈硬化度の強い群では, 血清トリグリセリド・血清コレステロールは高値を示す傾向にあったが, 症例差が大きかった. その中, 高トリグセリド血症を伴うものはVLDLの異化の障害を伴っており, その結果冠状動脈硬化が促進されることが考えられた.
  • 多和田 哲雄
    1986 年 32 巻 2 号 p. 167-179
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    経胎盤鉄輸送機構の一端を解明するため, 鉄輸送蛋白であるtransferrin (Tr) に注目し, そのヒト胎盤絨毛組織における, 局在・動態について検討し, 以下の結果を得た. 酵素抗体法によりsyncytiotrophoblast (S細胞) 細胞膜表面全体にTrの局在が認められた. また, in vitroにおいて, S細胞表面からthiocyanateによりTrを遊離させた後, 母体血清添加によるTrの細胞表面への再結合を認め, S細胞へのTrの結合が可逆的かつ特異的であることが認められた. in vitroにおける絨毛組織の放射性鉄取込みのautoradiographyによる観察において, 組織は [59Fe] diferric Trから, 効率よく放射性鉄を取込み, 取込まれた鉄は絨毛上皮細胞基底膜付近にhemosiderinの形で集積することが認められた. 単層培養S細胞によるTr取込みの, 金colloidを用いた観察において, S細胞表面に結合したTrは, Tr receptorを介したendocytosis, すなわちreceptor mediated endocytosisによりS細胞質内へ取込まれ, coated vesicle, endosomeを経て, 最終的にIysosomeに入り処理されることが認められた.
  • iopanoicacidについて
    飯島 敏彦, 大阪 朋久, 山中 修, 加納 達二, 南部 勝司
    1986 年 32 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    経口胆嚢造影を行った, 合併症を伴わない軽症糖尿病患者36例を対象とし, これらを, iopanoic acid (テレパーク) 単独投与群 (A;単独群), マーガリン同時投与群 (B;マーガリン群), テレパーク投与前の3日間UDCA投与群 (C;ウルソ群), UDCAに代えてCDCA投与群 (D;ケノ群) の4群に分けて, 腸におけるテレパークの溶解と, 吸収の状態を検討した. テレパークの溶解・吸収の状態を, 血中総ヨウ素量 (ヨウ素値) の変動で表わすと, 単独群に比べて, マーガリン群・ウルソ群・ケノ群では, ヨウ素値が速やかに増加し, 最高濃度 (ピーク値), およびピーク値形成時期は, マーガリン・ウルソ・ケノの各群で早く, また, ピーク値形成後の血中消失は, ウルソ群で有意に速やかであった. これらの結果から, テレパークの腸における溶解・吸収は, 脂肪や胆汁酸の存在で促進され, さらに, 肝から胆汁中への排泄は, UDCAによって促進されることが推測された.
症例報告
  • 戸叶 嘉明, 平野 多加博, 佐藤 圭子, 上原 直樹, 飯田 昇, 清水 一夫, 内藤 聖二, 廣瀬 俊一
    1986 年 32 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    われわれは特発性びまん性間質性肺炎に顆粒球減少症を合併し, 興味ある経過をたどった1例を経験したので報告する. 症例は71才の男性で, 発熱・咳を主訴として来院, 胸部X線に粒状陰影を認め入院となる. 入院時, 諸検査で特発性びまん性間質性肺炎と診断したが, 顆粒球減少症も併発していたため, 抗生物質とプレドニゾロン30mg/日投与した. その後, 胸部X線上の粒状陰影減少すると同時に, 顆粒球も正常に回復した. 特発性びまん性間質性肺炎では, 一般に顆粒球は正常, ないし上昇するといわれているが, 本症例のように減少する例は少ない. 顆粒球減少の原因は, 肺胞への顆粒球の浸潤, 自己免疫性, 薬剤などが考えられる. 特発性びまん性間質性肺炎との関連ははっきりしないが, プレドニゾロンで両者とも軽快しているのは興味深いと思われた.
抄録
てがみ
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編集後記
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