AUDIOLOGY JAPAN
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42 巻, 2 号
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  • 大久保 英樹, 佐藤 重規, 立原 成久, 原 晃, 草刈 潤
    1999 年 42 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    DPOAEが内リンパ嚢閉塞術後2週目に低下したモルモット5匹に術後4週目までイソソルビドを1日1回連日経口投与し, 投与後のDPOAEを測定して非投与群5匹におけるDPOAEの変化と比較検討した。
    イソソルビド投与群のDPOAEレベルは投与2週後上昇し回復傾向を示したが, 非投与群では時間経過とともにさらに低下した。 この結果はイソソルビド連日投与により進行しつつあった内リンパ水腫が改善あるいはその進行が抑制された可能性を示すと思われ, 内リンパ水腫が病態とされるメニエール病においてもDPOAEの測定とイソソルビドの投与により発作を予測しかつ予防しうると思われた。
  • 泰地 秀信, 小川 茂雄, 岡本 健
    1999 年 42 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    一側性の無難聴性耳鳴の5症例においてGSI60 DPOAEシステムを用いて歪成分耳音響放射 (以下DP) の測定を行い, 耳鳴側と健側の比較を行った。 対側音刺激によるDPの抑圧については明らかな差はみられず, 耳鳴側で遠心性機能が異なっているとはいえなかった。 症例数は少ないが, 耳鳴側ではDPレベルがやや小さく, また安定性が高い傾向があった。 これから, 耳鳴側では純音聴力検査でとらえられないような微細な障害が蝸牛にあるか, または遠心性機能が亢進している可能性が考えられた。
  • 川尻 逸平, 神田 幸彦, 佐藤 利徳, 田代 哲也, 小林 俊光
    1999 年 42 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    発症後2週以内に歪成分耳音響放射 (distortion product otoacoustic emissions: DPOAE) を測定し, 経過を追うことのできた突発性難聴21症例について聴力予後とDPOAE検出との相関を検討した。 標準純音聴力検査の5周波数 (500Hz-8kHz) のいずれかにおいて閾値が60dB以上のものは18例あった。 このうち当該周波数領域においてDPOAEが検出された群は9例, DPOAEが検出されなかった群は9例であり, 前者は全て当該周波数を中心に改善した。 後者の中にも改善例があるためDPOAEにより突発性難聴の予後を明確に判定し得ることにはならないが, 当該周波数領域においてDPOAEが検出された場合には突発性難聴の聴力予後は良好な傾向にあるといえる。
  • 原田 竜彦, 井上 泰宏, 小川 郁, 神崎 仁
    1999 年 42 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    歪成分耳音響放射 (DPOAE) 位相の情報の活用法の現況について概説し, あらたな活用法として刺激音圧変化に対するDPOAE位相の変化から基底板振動の位相の非線形性を捉える手法を提案する。 基底板振動の位相には振幅が最大となる刺激周波数を境にこれより低い周波数の刺激音では刺激音圧の増大とともに位相遅れ, これより高い周波数では位相進みが観測される位相の非線形性が存在することが知られているが, われわれはDPOAEの位相においても低い周波数の刺激音の音圧L1を増大させたとき, DPOAE振幅が最大となる刺激周波数比f2/f1=1.22を境に, これより大きなf2/f1ではL1増大とともにDPOAE位相は遅れ, これより小さなf2/f1では位相が進みとなることを確認した。 この結果はDPOAEにて基底板振動の位相の非線形性を捉えたものと言え, あらたな非侵襲的蝸牛機能評価法として期待できると考える。
  • 石田 孝, 岩井 浩治, 桑島 秀, 平田 祥子, 細谷 有美子, 横山 哲也, 村井 和夫
    1999 年 42 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1989年から1996年までに当科を受診し, 心因性難聴と診断された例または学校健診で閾値上昇を指摘されるも器質的異常の認められなかった67例を対象に検討を行った。 発症年齢は8から10歳にピークを認め, 男女比は1:4で女性に多く認めた。 純音聴力検査で聴力型では水平型が多く, 平均聴力は30-49dBにピークを認めた。 受診のきっかけとしては学校健診で指摘された例が30例と多かった。 これらのうち何らかの聴力障害を時に自覚していたものは14例, 自覚しないもののうち何らかの誘因が考えられたものが8例と, 健診で指摘された例の多くが心因性難聴に含まれるものと考えられた。 検査では自記オージオメトリーでJerger分類V型を示す例が多く, 他覚的検査としてのABRとともに依然として有用であった。 さらに近年臨床応用されてきた誘発耳音響放射も簡便で有用な検査法の一つと評価された。
  • 飯塚 尚久, 佐藤 恒正, 千葉 洋丈, 山根 雅昭, 清水 顕
    1999 年 42 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    機能性難聴21症例32耳について語音聴力検査, 自記オージオメトリー, Stenger法, ABR, CNV, SVR, 耳小骨筋反射, さらに両耳聴検査法として, 我々の開発した両耳間時間差音像移動弁別域値検査, 音像移動誘発電位測定, 正中音像形成域値測定法を施行し検査結果を比較検討した。 その結果, 両耳間時間差音像移動弁別域値の測定は, 機能性難聴において自記オージオメトリーと同等の鋭敏性を有しており, 検査の簡便性を考えると1次検査法として有用であった。 音像移動誘発電位は低音域聴力を他覚的, かつ, 定性的にとらえることのできる検査法であるため, 高音域を反映するABRと同時に施行することがより確実な診断のために重要であった。 正中音像形成域値は, 本来の聴力を周波数別, 定量的にとらえうる検査法であるが, 初診時聴力と比較すると, 有意に低値を示した。 また, 改善時聴力と比較すると, 8例中6例が同等の聴力域値を示した。
  • 田代 哲也, 神田 幸彦, 川尻 逸平, 谷川 仁美, 風間 恭輔, 小林 俊光
    1999 年 42 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科において最近10年間に機能性難聴と診断された103例について検討した。 他覚的聴覚検査としては聴性脳幹反応や蝸電図に加え, 最近では耳音響放射検査が多く用いられる傾向にあった。 心因的背景では学校生活にかかわる要因が減少したのに対し家庭生活の要因が増加傾向を示し, 近年の複雑化する社会環境の影響が示唆された。
  • 沖津 卓二, 高橋 由紀子, 鈴木 雅明, 狩野 茂之, 堀 富美子, 佐藤 直子
    1999 年 42 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小児機能性難聴の35症例について, 学校健診で難聴を指摘され精査のために受診し機能性難聴と診断した症例: 健診群と, 自ら難聴など耳症状を訴えて受診した症例: 受診群に分けて検討した。 健診群が全症例の63%と半数以上を占めた。 健診群は全例が両側難聴を示したが, 受診群は片側性が75%と多かった。 健診群では全例に難聴の自覚と訴えが無かったが, 受診群では全例が難聴をはじめとする何らかの耳症状を自覚していた。 健診群の64%, 受診群の75%に心因が判明したが, 前者では耳と直接関係のない学校生活, 家庭・家族, 友人関係などの問題が, 後者では直接耳に作用した外傷や音響などが原因となっているものが多かった。 健診群では83%が, 受診群では63%が耳鼻科的対応のみで6ヵ月以内に聴力が正常に回復した。 両群の症例の対応について述べ, 特に健診群で難聴の自覚がなく心因が不明な症例への考察を行い, 著者らの対応を述べた。
  • 浅野 恭子, 小川 郁, 井上 泰宏, 田副 真美, 神崎 仁
    1999 年 42 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小児心因性難聴の発症には心理的要因が関与しており, その治療には心理的要因の把握が不可欠である。 児童生徒の心理的要因の背景因子としての心理社会的要因に, 社会環境の変化がどのような影響を与えているかを明らかにする目的で, 1986年から87年に小児心因性難聴と診断された12例 (前期群) と1996年から97年に診断された12例 (後期群) における心理社会的要因, および心理検査結果について比較検討した。
    両群の心理社会的要因としては学校関係が最も大きな割合を占めていたが, 前期群に比べ後期群で 「いじめ」 の頻度が減少し, 社会文化関係の要因, 特に環境変化による 「カルチャーショック」 が増加した。 このことは約10年間の社会環境の変化が児童生徒に心理的影響を与えていることを示している。 心理検査ではY-G性格検査結果に大きな差異は見られなかったが, P-Fスタディにおいて前期群に比べて後期群で, 社会適応性における不適応が減少し, 適応および過適応が増加した。 小児心因性難聴症例の性格傾向も表面的には安定状態を示しているが, 潜在面では微妙に変化していることが示唆された。
  • 小川 郁, 浅野 恭子, 井上 泰宏, 保谷 則之, 武井 聡, 志津木 健, 佐倉 伸洋, 田副 真美, 神崎 仁
    1999 年 42 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1986年より1997年の12年間に当科にて小児心因性難聴と診断され, 心理治療を含めたチーム医療を受けた15歳以下の症例73例, 139耳を対象として, その臨床像および治療結果, 特にそれぞれの年代的変化について検討した。 年齢, 性別や聴力検査所見などの臨床像には年代的変化は認めなかったが, 発症に関係したと考えられる心理社会的要因としての 「いじめ」 の減少と転居や海外からの帰国による環境変化が原因となる 「カルチャーショック」 の増加が最近の症例の特徴と考えられた。 また, 心因性難聴の予後にも有意の変化は認められなかったが, 予後不良例がやや増加する傾向にあったことには, 心理社会的要因の変化などが関与している可能性もあり, 今後の治療の参考にすべきであると考えられた。
  • 両側性と一側性の臨床的検討
    工藤 典代, 佃 朋子, 神田 敬
    1999 年 42 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    過去9年間に経験した小児の心因性難聴67例 (女児53例, 男児14例) のうち, 61例は両側性であり, 6例は一側性難聴を呈していた。 両側性難聴を示す群と一側性を示す群の臨床上の特徴を検討した。 一側性の症例はすべて女児で, しかも発症した学年はすべて小学2年生であった。 発見の契機としては, 両側群は学校健診で発見されることが多いのに対し, 一側性は耳症状を自覚し難聴の訴えも明確であり, 耳鼻科を受診し心因性難聴と診断されることが多かった。 耳への打撲や音響刺激など耳に対する直接的な外因が明らかな例が半数あり, しかも診断がつけば回復する傾向があった。 ただ, 一側性には突発性難聴と診断され薬物療法を受けている例も半数にみられ回復しやすいことを考慮すると, 一側性の心因性難聴の実数はより多いことが予測され, 一側性難聴の診断には十分留意する必要があると考える。
  • 別府 玲子, 村橋 けい子
    1999 年 42 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    心因性難聴に健忘を伴った2症例を経験した。 健忘は精神医学的には意識の障害を呈する解離性障害の一症状である。 症例1は年齢16歳, 症例2は15歳と, 思春期の女性であり, 難聴, 健忘以外にも多彩な症状を示した。 症例1は精神科において全生活史健忘との合併と診断された。 症例2は, 幼少時より両側高度感音難聴のため経過観察をしており, 既存の難聴が高度で, 他覚的聴力検査で閾値が確認できないので, 精神医学的状況から心因性難聴と推定した。 心因性難聴の場合は, 十分な心理的ケアが必要であり, 特に他の重篤な精神症状を合併している場合は精神科のカウンセリングを要すると考えられた。
  • 第18報 誇大難聴症例について
    杉尾 雄一郎, 生天目 孝子, 松本 学, 飯田 祐起子, 渡辺 尚彦, 調所 廣之
    1999 年 42 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当院は労災病院という特殊性から騒音性難聴の補償に関連した症例の診療が日常業務となっている。 これらの症例のなかには機能性難聴, 特に難聴を誇大に訴える, いわゆる誇大難聴の症例が時にみられる。 今回われわれは, 最近5年5ヵ月間に騒音性難聴の労災認定のために当科を受診した341症例のなかから誇大難聴と考えられた症例を抽出し, 検討した。 その結果, これらの症例の診断には, 診察中の態度や会話聴取の状態, 聴力検査士からの情報, 聴検の反復, 自記オージオメトリー, ABRなどの検査結果を有効に活用し, 総合的に診断する姿勢が重要であると考えられた。 補償における誇大難聴症例には, 難聴を誇張するに至った背景に心理的, 社会的な要因が存在する。 したがってこれらの症例に対しては, 詐聴者ではなく, 心因性難聴と同様にあくまでも難聴を訴える患者として対応するべきであると考えられた。
  • 語音聴取能・発語明瞭度と母親によるアンケート結果を中心に
    佐藤 紀代子, 岡本 途也, 大氣 誠道, 杉内 智子, 吉野 公喜, 洲崎 春海
    1999 年 42 巻 2 号 p. 152-159
    発行日: 1999/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 重度聴覚障害児25名に対する電話コミュニケーション指導の指導効果を検討した。 指導効果の判定には, 母親に対するアンケート調査をもとに行った。 また, 対象25名のうち6名は指導前と指導後に語音聴力検査と発語明瞭度検査を施行した。 これらの結果から以下のことが明らかになった。 指導前後で語音聴力検査と発語明瞭度検査は統計学的に有意差がみられなかった。 しかし, アンケート結果から, 指導後に日常でのコミュニケーション状態の改善が認められた。 ストラテジースキルの獲得率が, 指導後で電話場面と日常生活場面共に獲得率が伸びることから, 本指導はストラテジースキルの獲得に有用と思われた。 また, 電話および音声でのコミュニケーションに関係が深いストラテジースキルは, ききとるスキルと伝えるスキルの 「自主言い替え」 「受身言い替え」 「修正」 であった。 電話コミュニケーション指導によるコミュニケーションの改善は, ストラテジースキルの獲得に大きく関与すると考えられた。
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